
3分で簡単「理想気体」実在気体との違いは?元研究員がわかりやすく解説
化学では気体について計算で導く問題も出てくるんですが、それは「理想気体」としてであって「実在気体」ではなのです。
今回は理想気体の状態方程式や、理想気体と実在気体の違いについて、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.ボイル・シャルルの法則と気体の状態方程式

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理想気体とは分子自身の大きさ(体積)と分子間力をゼロとした、実在しない理論上の気体の事です。
なぜ自身の大きさと分子間力を無視したいかというと、すべての温度・圧力という条件下でボイル・シャルルの法則を成り立たせたいからといえます。
まず、ボイル・シャルルの法則についておさらいしていきましょう。
1-1.ボイルの法則
ボイル・シャルルの法則は、ボイルの法則とシャルルの法則を合体して作った法則です。ではボイルの法則とはどのような内容だったでしょうか?
ボイルの法則とは温度が一定の時に、圧力と気体の体積は反比例するという法則になります。例えば圧力が 2 倍になったら気体の体積は 1 / 2 になり、圧力が 3 倍になったら気体の体積は 1 / 3 になることは想像できますね。
このことを式で表すと、P(圧力)× V(体積)= K(一定)です。
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1-2.シャルルの法則と絶対温度
次にシャルルの法則とは、圧力が一定の時に、絶対温度と気体の体積は比例するという性質を示した法則です。ではここで、絶対温度という用語について解説しましょう。
絶対温度とは原子や分子の熱運動がなくなる温度(理論上一番低い)温度を 0 とした温度のことで単位は K(ケルビン)で表します。通常私たちが使っている摂氏温度というのは、水が氷になる温度を 0 とした温度で単位は ℃(度)ですね。
原子や分子の熱運動がなくなる理論上一番低い温度は絶対零度と言われ – 273℃ とされています。ということは、0 ℃ = 273 K です。それなので、℃ を Kに変換したい時は t(℃)+ 273 = T(K)で求めましょう。例えば 20 ℃ であれば 20(℃)+ 273 = 293(K)ということになります。
絶対温度についてわかったところで、シャルルの法則に戻りましょう。
圧力が一定の時に温度を上げていくと気体の体積は膨張します。シャルルの法則は、気体の体積は絶対温度(K)に比例するということを示していましたね。
例えば絶対温度が 2 倍になったら気体の体積も 2 倍になり、絶対温度が 3 倍になったら気体の体積も 3 倍になるということです。
このことを式で表すと、V(体積)÷ T(絶対温度)= K(一定)になります。
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1-3.ボイル・シャルルの法則
以上のボイルの法則とシャルルの法則を合わせたものが、ボイル・シャルルの法則と呼ばれ、次のような式で表されます。
P(圧力)× V(体積)/ T(絶対温度)= K(一定)
一定量の気体の体積と圧力の積は絶対温度に比例するという関係を示している公式です。
ここまでわかったところで、気体の状態方程式に移りましょう。気体の状態方程式と省略されて呼ばれることが多いですが、実は理想気体の状態方程式というのが正しい表現になります。ピーブイイコールエヌアールティーという言葉を聞いたことありませんか?
ボイル・シャルルの法則を発展させたものが、理想気体の状態方程式と呼ばれる公式なのです。
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