3分で簡単「安定同位体」中性子数が異なる同位体って?元研究員がわかりやすく解説
周期表にも記載されている元素の原子量は、安定同位体がどのくらいの比率で存在するかを加味して算出されているんです。
今回は同位体とは何か?から、同位体と原子量の関係について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。
ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.同位体って何だろう
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原子番号が同じでも、原子核に含まれる中性子の数が違う原子の事を同位体といいます。元素の性質を決める陽子と電子の数は同じでも、中性子の数が違うため原子全体の重さも異なるのです。
その同位体には安定なものと不安定なものが存在し、不安定なものは放射線を出しながら壊れて別の元素になります。
まずは原子の構造から、同位体をひも解いていきましょう。
1-1.原子の構造
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身の回りにある物質のすべてが、そして私たちの身体もさまざまな原子の集合体です。原子は持っている陽子の数の違いから元素記号という名前が付けられ、周期表に性質ごとに分類されています。
原子とはもともと、それ以上分割できない最小のものという意味です。ですがその後の研究により、原子がいくつかの異なる性質を持つものの集合体であるということがわかりました。
原子はプラスの電荷を帯びた原子核とマイナスの電荷を帯びた電子からできています。原子核がプラスの電荷を帯びているのは、内部にある陽子がプラスの電荷を帯びているためです。そして、原子核には電荷をもたない中性子も陽子と同じくらいの数含まれています。
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1-2.原子番号と同じ数なのは?
元素は原子番号=陽子の数によって、元素記号という固有の名前が付けられています。そして、陽子の数と原子核の周りをまわっている電子の数は等しいです。つまり、原子番号=陽子の数=電子の数ということになりますね。
しかし、もうひとつの原子を構成する要素である中性子は、陽子と同じ数を持つ場合もありますが違う場合もあります。中性子数が違うだけである同位体は、同じ元素からなる原子なので、仮に周期表でどこに配置するかを聞かれた場合は同じ陽子数の元素の中にまとめて入れられるということを覚えておきましょう。
また、しつこいようですが中性子数が違うだけなので、同位体どうしの化学的性質はほとんど変わりがありません。
次に、水素原子を例にとり同位体をさらに詳しく見ていきましょう。
1-3.水素原子で解説する同位体
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原子番号 1 の水素には、中性子数が 0 の 1H と中性子数が 1 の 2H と中性子数が 2 の 3H という 3 つの同位体があります。水素の同位体に限りそれぞれに名前が付けられていて、1H が軽水素、2H が重水素(デューテリウム)、3H が三重水素(トリチウム)です。
自然界に存在する比率は 1H が 99.9% を占めるので、水素の原子量は 1 となっています。この原子量と同位体の関係については、後で解説しましょう。
このうち 1H と 2H は安定同位体であり、3H は時間がたつと壊れてしまう放射性同位体です。
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