この記事では「陶犬瓦鶏」について解説する。

端的に言えば陶犬瓦鶏の意味は「外見は立派ですが、何の役にも立たないもののこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「陶犬瓦鶏」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「陶犬瓦鶏」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「陶犬瓦鶏」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「とうけんがけい」であり、漢字の中に動物が含まれる特徴のある四字熟語です。意味から語源や使い方までチェックしていきますよ。

「陶犬瓦鶏」の意味は?

「陶犬瓦鶏」には、次のような意味があります。まずは、現在使われている基本的な意味を正確に確認していきましょう。

1.形ばかり立派で、実際の役に立たないもののたとえ。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「陶犬瓦鶏」

形などの見た目は申し分なくて有用に思えるものが、実際には何の役にも立たないということを表しています。もともと無用なもののイメージではなく、見た目がよいことがポイントです。

「陶犬瓦鶏」の語源は?

次に「陶犬瓦鶏」の語源を確認しておきましょう。

「陶犬瓦鶏」の由来は、中国の南北朝時代の『金楼子(きんろうし)』という書物です。『金楼子』の著者は南朝の梁(りょう)武帝の蕭繹(しょうえき)で、当時の社会生活や蕭繹自身のことについて書かれています。

「陶犬」は陶製の犬、「瓦鶏」は素焼きの鶏、ともに焼き物のことです。そして、『金楼子』には、作りものであるために、犬は夜に番犬となることができず、鶏は朝に夜明けを告げることできないということが書かれています。そういったことから、見た目は立派であっても役に立たないという意味につながっていますよ。

\次のページで「「陶犬瓦鶏」の使い方・例文」を解説!/

「陶犬瓦鶏」の使い方・例文

「陶犬瓦鶏」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。実際の文中での使い方を意味的にも文法的にもチェックしていきますよ。

1.あなたは立派な道具をたくさんお持ちだが、陶犬瓦鶏のように役目を果たせないものばかりだ。
2.電子的なツールは陶犬瓦鶏と思えることもあるが、その能力は計り知れない。

例文1.は、一見すると立派に見えるものを持っていても、実際には役に立たないものをもっているということです。例文2.のほうは、見かけだけに思えるような電子ツールは使い方によっては想定以上の働きをすることもあるということを表しています。

文法的に見てみると、例文1.では「陶犬瓦鶏の…」、例文2.のほうは「陶犬瓦鶏と…」というように、四字熟語を名詞のカタマリとして使っていますよ。一般的にも、このような使い方が中心です。

「陶犬瓦鶏」の類義語は?違いは?

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それでは、「陶犬瓦鶏」の類義語についての説明です。よく似た四字熟語はいくつかあるので、それぞれの四字熟語の特徴をチェックしながら詳しく見ていきましょう。

「夏炉冬扇」

「陶犬瓦鶏」の類義語には、「夏炉冬扇(かろとうせん)」があります。意味は、時期はずれで役に立たないものです。「夏炉」は夏の囲炉裏(いろり)のこと、「冬扇」は冬の団扇(うちわ)のことを表しており、役に立たないものの代表としてあげられています。

作り物だから役に立たない「陶犬瓦鶏」に対して、時期が合わないために役に立たない「夏炉冬扇」ということで、少し違いはありますが役に立たないという意味では同じです。

\次のページで「「薄物細故」」を解説!/

「薄物細故」

もう一つの類義語には、「薄物細故(はくぶつさいこ)」があります。些細な物事、無価値なもの、役に立たないものという意味です。「薄物」は日本では薄手の着物や布製品を表すこともありますがここではたいしたことのないものということ、「細故」は細かで取るに足りないことを表しています。

由来は『史記(しき)』の匈奴(きょうど)伝に遡る古くからある四字熟語です。ちょうど「陶犬瓦鶏」とよく似た意味になっています。

「羊質虎皮」

類義語には、さらに「羊質虎皮(ようしつこひ)」があります。外見が立派なことに対して、それに伴う実質がないという意味です。「羊質にして虎皮す」と訓読し、虎の皮をかぶった羊ということがもとの意味となっています。

こちらも外見に対して実質は伴わないという意味になるので、「陶犬瓦鶏」の類義語として扱うことができますね。由来となっているのは、『揚子法言(ようしほうげん)』という中国の前漢時代の思想書です。

「陶犬瓦鶏」の対義語は?

次に、「陶犬瓦鶏」の対義語についての説明です。対義語ということなので、意外に役に立つものなどの四字熟語を紹介していくので、詳しく見ていきましょう。

「無駄方便」

「陶犬瓦鶏」の対義語には、「無駄方便(むだほうべん)」があります。意味は、とても役に立たないだろうと思えるものでも時には何らかの役に立つことです。「無駄」は価値がない、役に立たないということ、「方便」は目的達成のための状況に応じた手段ということを表しています。

一見無駄に思えるようなものが何らかの役に立つということなので、ちょうど「陶犬瓦鶏」とは反対の意味になっていますね。

「陶犬瓦鶏」の英訳は?

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最後に、「陶犬瓦鶏」の英訳についての説明です。表現のしかたは言語によってさまざまですが、同じような意味の英語表現を紹介するので一緒に見ていきましょう。

「crying wine and selling vinegar」

「陶犬瓦鶏」の英訳には、「crying wine and selling vinegar」があります。直訳すると「ワインと叫んで酢を売ること」です。大きな声で「ワイン」と言っておきながら、実際に売りたいのは「酢」であるということを表しています。

ほかには、「showly without real worth」として「本当の価値がないのに見栄を張る」という表現もありますよ。こちらも、ほぼ同じような意味です。

\次のページで「「陶犬瓦鶏」を使いこなそう」を解説!/

「陶犬瓦鶏」を使いこなそう

今回の記事では「陶犬瓦鶏」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「陶犬瓦鶏」の基本的な意味は、形ばかり立派で実際には役に立たないものです。類義語には、ほかに「羊頭狗肉(ようとうくにく)」や「有名無実(ゆうめいむじつ)」などたくさんあります。意図的なものだと「虎の威を借る狐」という表現もありますね。

類義語がたくさんあるということは、それだけ同様の出来事が多かったということです。古代から見かけ倒しであるものや人というのは、悩みのタネだったのかもしれませんね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「陶犬瓦鶏」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「陶犬瓦鶏」について解説する。

端的に言えば陶犬瓦鶏の意味は「外見は立派ですが、何の役にも立たないもののこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「陶犬瓦鶏」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「陶犬瓦鶏」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「陶犬瓦鶏」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「とうけんがけい」であり、漢字の中に動物が含まれる特徴のある四字熟語です。意味から語源や使い方までチェックしていきますよ。

「陶犬瓦鶏」の意味は?

「陶犬瓦鶏」には、次のような意味があります。まずは、現在使われている基本的な意味を正確に確認していきましょう。

1.形ばかり立派で、実際の役に立たないもののたとえ。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「陶犬瓦鶏」

形などの見た目は申し分なくて有用に思えるものが、実際には何の役にも立たないということを表しています。もともと無用なもののイメージではなく、見た目がよいことがポイントです。

「陶犬瓦鶏」の語源は?

次に「陶犬瓦鶏」の語源を確認しておきましょう。

「陶犬瓦鶏」の由来は、中国の南北朝時代の『金楼子(きんろうし)』という書物です。『金楼子』の著者は南朝の梁(りょう)武帝の蕭繹(しょうえき)で、当時の社会生活や蕭繹自身のことについて書かれています。

「陶犬」は陶製の犬、「瓦鶏」は素焼きの鶏、ともに焼き物のことです。そして、『金楼子』には、作りものであるために、犬は夜に番犬となることができず、鶏は朝に夜明けを告げることできないということが書かれています。そういったことから、見た目は立派であっても役に立たないという意味につながっていますよ。

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