今回は「潜水艦」について解説していきます。

潜水艦は、海などの水中を自由自在に移動することができる乗りものです。その利用範囲は軍事分野を中心に、深海調査、海洋資源開発などにも至る。この記事では、潜水艦の仕組みについて詳しく解説していく。ぜひこの機会に潜水艦について学んでみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

潜水艦とは?

image by PIXTA / 42056100

潜水艦は、海などの水中を航行することができる乗りものです。主に、軍事深海調査海洋資源開発などの目的で使用されますよ。潜水艦は、水の中にいる時間が非常に長くなります。そのため、様々な工夫や技術が必要なのです。

これらの工夫や技術の多くは、軍事利用を目的とした研究開発によって確立してきました。潜水艦に限らず、工学技術の発端が軍事にあることは珍しくありません。近年になっても、各国は潜水艦技術を競って高めており、特に静謐性、航続距離、航行速度などの向上に力を入れているようです。

潜水艦の移動方法

まずは、潜水艦が水中でどのようにして移動しているのか考えてみましょう

鉛直方向

ここでは、鉛直方向の移動について解説しますね。鉛直方向の移動というのは、簡単に言えば浮いたり、沈んだりといった運動のことですよ。

潜水艦の浮き沈みに使われる力は主に浮力重力の2つ。潜水艦に作用する浮力よりも重力のほうが大きいとき、潜水艦は下向きに運動します。一方、潜水艦に作用する浮力が重力よりも大きくなると、潜水艦は浮上しますよ。そして、潜水艦が鉛直方向に静止するのは、潜水艦に作用する浮力と重力がつりあったときです。厳密には浮力と重力以外に海の水の流れによる粘性応力なども考慮すべきですが、仕組みを理解するだけであれば、ここで説明した理論で問題ありません。

では、浮力と重力の大小はどのようにして制御するのでしょうか?重力の大きさは潜水艦の質量と重力加速度に依存しているので、潜水艦の運用される環境ではほぼ一定になりますよ。したがって、浮力の大きさを調整することで、浮力と重力の大小を調整する必要があります

潜水艦は二重構造になっており、その空間内は空気ボンベの圧力調整により、海水と空気の割合を自在にコントロールできるようになっているのです。この空間内に空気が多く存在するほど、浮力は大きくなります

水平方向

image by PIXTA / 1567874

次に、潜水艦が水平方向に移動する方法を考察してみましょう。潜水艦が水平方向に移動するためには、私たちが泳ぐときにばた足をするように、水を蹴るような力が必要になります。このような力を加えるために、潜水艦にはプロペラの形をしたスクリューがついているのです。スクリューを回転させることで、潜水艦は水に力をあたえて、進むことができるようになりますよ。

効率よく水に力を与え、推進力を得るためには、スクリューの形状などを工夫する必要があります。スクリューの技術は、高い静謐性の確保、高加速度の実現、航行速度の向上などに直結する重要な技術です。とくに、軍事目的で使用される潜水艦にとって、静謐性の確保は重要だとされています。スクリューの音が大きい場合、敵に潜水艦の居場所を知られてしまうからです。

潜水艦の形状

image by PIXTA / 41522247

ここでは、潜水艦の形状について考えてみましょう。潜水艦が海の中に存在するとき、水圧による非常に大きな力を受けます。このことから、できる限り潜水艦にかかる力が分散するような構造でなければなりません。万が一、一点に大きな力がかかり、密閉された艦内に海水が流入するようなことがあれば大惨事になりますよね。

理論上、最も力が分散する形は球体です。ですが、機器などを搭載するので、潜水艦を完全な球体にすることは困難ですよね。このような理由から、潜水艦は丸みを帯びた回転楕円体をベースとした形状をしています。また、この形は流線形でもあり、潜水艦が海水から受ける抵抗力を最小限にするという利点も存在していますよ。

潜水艦の種類

ここでは、潜水艦の種類について説明していきます。潜水艦の分類方法は、複数存在しますが、今回は動力の種類に注目して説明を進めていきますね。動力は、スクリューを回転運動させたり、艦内の機器に電気を供給するなどの役割を果たす潜水艦のエネルギー源とも言える存在です。

\次のページで「1.通常動力潜水艦」を解説!/

1.通常動力潜水艦

1.通常動力潜水艦

image by Study-Z編集部

通常動力潜水艦では、重油や軽油などの石油系の化石燃料を使用して、潜水艦を動かします。まず、重油や軽油を燃焼させてディーゼルエンジンを動かしますよ。次に、ディーゼルエンジンによって生じた動力によって、発電機を回します発電機から得られた電気エネルギーは、蓄電池に蓄えられるのですスクリューや機器を動かすための電力は蓄電池から得ます。この仕組みはハイブリッド自動車(HV)に非常に似ていますよね。

重油や軽油を燃焼させるためには、酸素が必要です。そのため、ディーゼルエンジンを回して発電するときには、潜水艦は海面に浮かんだ状態になります。この間に充電を行い、充電が完了したら、海の中へ再び潜りますよ。ですが、軍用の潜水艦の場合、海面に浮かんでいる時間はできるだけ短くする必要がありますよね。つまり、急速充電を行う必要があります。

従来の通常動力潜水艦の蓄電池には鉛蓄電池が使用されていましたが、鉛蓄電池は急速充電には向いていません。そこで、最新の従来の通常動力潜水艦には、急速充電が可能なリチウムイオン蓄電池が採用されていますよ。

実際、日本国の自衛隊における最新潜水艦である「おうりゅう」と「そうりゅう」には、リチウムイオン電池が搭載されています。さらに、これらの潜水艦は港で電力会社からの電気を使って、急速充電することにも対応していますよ。この機能は、まさにプラグインハイブリッド自動車(PHEV)にそっくりですよね。

\次のページで「2.原子力潜水艦」を解説!/

2.原子力潜水艦

2.原子力潜水艦

image by Study-Z編集部

原子力潜水艦(原潜)では、ウラン235などの核燃料を使用してエネルギーを作り出します。まず、艦内の原子炉でウラン235の核分裂連鎖反応を生じさせ、熱エネルギーを発生させますよこの熱エネルギーで水を沸騰させて、蒸気タービンを回し、動力を発生させるのです。この動力によって、スクリューを回転させたり、機器を動かすための電気エネルギーを生み出したりしますよ。また、核分裂連鎖反応には酸素が必要ない上に、ウラン235などの核燃料のエネルギー密度は非常に高いため、原子力潜水艦は長期間水面下に潜むことができます

2020年時点では、原子力潜水艦の保有国はアメリカイギリスフランスロシア中国インドの六か国に限られていますよ。ちなみに、日本やオーストラリアなどは潜水艦と原子力の技術を持っていますが、製造は行っていません。

潜水艦について理解を深めよう!

この記事では、潜水艦の重要性、移動方法、形状、動力源などを中心に説明を進めてきました。これらの説明には、力学、流体力学、原子力工学、熱力学、物理化学(電池の知識)などの幅広い物理学の分野内容が含まれています。言い換えれば、潜水艦の設計、製造には、非常に高い技術が求められるということです。

それもそのはず、今や潜水艦は軍事技術の中でも、各国が必死になって研究開発を進めている乗り物ですよ。ぜひ、この記事を読んで潜水艦について理解を深めてみてください。

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流体力学熱力学物理物理学・力学理科

3分で簡単にわかる潜水艦の仕組み!種類や形状も理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「潜水艦」について解説していきます。

潜水艦は、海などの水中を自由自在に移動することができる乗りものです。その利用範囲は軍事分野を中心に、深海調査、海洋資源開発などにも至る。この記事では、潜水艦の仕組みについて詳しく解説していく。ぜひこの機会に潜水艦について学んでみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

潜水艦とは?

image by PIXTA / 42056100

潜水艦は、海などの水中を航行することができる乗りものです。主に、軍事深海調査海洋資源開発などの目的で使用されますよ。潜水艦は、水の中にいる時間が非常に長くなります。そのため、様々な工夫や技術が必要なのです。

これらの工夫や技術の多くは、軍事利用を目的とした研究開発によって確立してきました。潜水艦に限らず、工学技術の発端が軍事にあることは珍しくありません。近年になっても、各国は潜水艦技術を競って高めており、特に静謐性、航続距離、航行速度などの向上に力を入れているようです。

潜水艦の移動方法

まずは、潜水艦が水中でどのようにして移動しているのか考えてみましょう

鉛直方向

ここでは、鉛直方向の移動について解説しますね。鉛直方向の移動というのは、簡単に言えば浮いたり、沈んだりといった運動のことですよ。

潜水艦の浮き沈みに使われる力は主に浮力重力の2つ。潜水艦に作用する浮力よりも重力のほうが大きいとき、潜水艦は下向きに運動します。一方、潜水艦に作用する浮力が重力よりも大きくなると、潜水艦は浮上しますよ。そして、潜水艦が鉛直方向に静止するのは、潜水艦に作用する浮力と重力がつりあったときです。厳密には浮力と重力以外に海の水の流れによる粘性応力なども考慮すべきですが、仕組みを理解するだけであれば、ここで説明した理論で問題ありません。

では、浮力と重力の大小はどのようにして制御するのでしょうか?重力の大きさは潜水艦の質量と重力加速度に依存しているので、潜水艦の運用される環境ではほぼ一定になりますよ。したがって、浮力の大きさを調整することで、浮力と重力の大小を調整する必要があります

潜水艦は二重構造になっており、その空間内は空気ボンベの圧力調整により、海水と空気の割合を自在にコントロールできるようになっているのです。この空間内に空気が多く存在するほど、浮力は大きくなります

水平方向

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次に、潜水艦が水平方向に移動する方法を考察してみましょう。潜水艦が水平方向に移動するためには、私たちが泳ぐときにばた足をするように、水を蹴るような力が必要になります。このような力を加えるために、潜水艦にはプロペラの形をしたスクリューがついているのです。スクリューを回転させることで、潜水艦は水に力をあたえて、進むことができるようになりますよ。

効率よく水に力を与え、推進力を得るためには、スクリューの形状などを工夫する必要があります。スクリューの技術は、高い静謐性の確保、高加速度の実現、航行速度の向上などに直結する重要な技術です。とくに、軍事目的で使用される潜水艦にとって、静謐性の確保は重要だとされています。スクリューの音が大きい場合、敵に潜水艦の居場所を知られてしまうからです。

潜水艦の形状

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ここでは、潜水艦の形状について考えてみましょう。潜水艦が海の中に存在するとき、水圧による非常に大きな力を受けます。このことから、できる限り潜水艦にかかる力が分散するような構造でなければなりません。万が一、一点に大きな力がかかり、密閉された艦内に海水が流入するようなことがあれば大惨事になりますよね。

理論上、最も力が分散する形は球体です。ですが、機器などを搭載するので、潜水艦を完全な球体にすることは困難ですよね。このような理由から、潜水艦は丸みを帯びた回転楕円体をベースとした形状をしています。また、この形は流線形でもあり、潜水艦が海水から受ける抵抗力を最小限にするという利点も存在していますよ。

潜水艦の種類

ここでは、潜水艦の種類について説明していきます。潜水艦の分類方法は、複数存在しますが、今回は動力の種類に注目して説明を進めていきますね。動力は、スクリューを回転運動させたり、艦内の機器に電気を供給するなどの役割を果たす潜水艦のエネルギー源とも言える存在です。

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