この記事では「金烏玉兎」について解説する。

端的に言えば「金烏玉兎」の意味は「年月や歳月のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「金烏玉兎」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「金烏玉兎」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「金烏玉兎(きんうぎょくと)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「金烏玉兎」の意味は?

「金烏玉兎」には、次のような意味があります。

《「金烏」は太陽の異称、「玉兎」は月の異称》日と月。転じて、歳月のこと。烏兎(うと)。→金烏 →玉兎

出典:デジタル大辞泉(小学館)「金烏玉兎」

「金烏」は「太陽」の別の呼び方、「玉兎」は「月」の別の呼び方のことで、合わせて「太陽と月」のこと。またそれ(日と月)が転じて「年月や歳月」を意味するようにもなりました。

「金烏」の「烏」は「からす」のこと。一見して「鳥(とり)」という漢字と見間違えないように注意が必要です。「烏」は他には「烏合(うごう)の衆」といった言葉でも使われます。あわせて押さえておきましょう。

「兎」は「うさぎ」のこと。月の模様がウサギに見えるためで、この想像は日本でもおなじみですね。「と」という読み方では「脱兎(だっと)のごとく」「兎に角(とにかく)」などでも使われます。

余談ですが、月にウサギというイメージは中国や日本だけではなく、インドやミャンマー、アメリカにも存在しているそう。調べてみると、文化を超えた人間意識のようなものが垣間見えて、とても面白いところです。興味があればぜひ自分でも調べてみて下さいね。

「金烏玉兎」の語源は?

次に「金烏玉兎」の語源を確認しておきましょう。「金烏」も「玉兎」もそれぞれ、「太陽にカラスが住む」「月にウサギが住む」という古代からの想像によるもので、中国では戦国時代の詩集『楚辞(そじ)』などにも見ることが出来ます。

こうした考えは広く定着していたようで、「金烏」は他にも「陽烏(ようう)」「黒烏(こくう)」「赤烏(せきう)」。「玉兎」は「月兎(げっと)」など、異名もたくさんあるそうです。「烏」や「兎」といった単語を見かけた場合は、太陽や月に関係しているものではと推測するのもいいでしょう。

このモチーフは昔の美術品にも多く見られます。写真があって「関連する四字熟語を選びなさい」という少し変わった問題が出ることも。自分なりに調べておくのも役に立ちますよ。

補足ですが、「金烏」についてカラスは黒いのになぜ?と思うかもしれませんが、「日の出と日の入りに移動すること」や「太陽の黒点」を表しているという発想からだそう。想像力の豊かさがうかがえます。

また月にいるのはウサギではなくヒキガエルとする説もありますが、それについては同義語の項でご紹介しますので、確認してみてください。

\次のページで「「金烏玉兎」の使い方・例文」を解説!/

「金烏玉兎」の使い方・例文

「金烏玉兎」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・仕事中心で生きてきたが、最近、子供が日々変化していくのを眺めていると、この金烏玉兎を大切にして過ごさなければならないと思う。

・クリエイター系の出版社にいたときは、週間も月間もわからないほどに忙しく、金烏玉兎など意識することもできなかった。

・世界的に見ても太陽や月に関する伝説は多く、民族という範囲を超えて、人々は金烏玉兎というものに思いを寄せる傾向があるのだろう。

太陽や月」もしくは「年月や歳月」というニュアンスが伝わりますでしょうか。

意味すること自体は単純な四字熟語のため、口語であえて使うことは少ないでしょう。文語表現として使う場合は、美しい情景としての太陽や月や、大切な時間といったものに思いを寄せて使うと、言葉のイメージが伝わるかもしれません。

読解問題などで見かけた場合は、その使用意図まで想像して読み解きたいものですね。

「金烏玉兎」の類義語は?違いは?

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「金烏玉兎」の類義語には、「白兎赤烏」があります。

「白兎赤烏」

「白兎赤烏(はくとせきう)」は、「月と太陽」転じて「時間や歳月」のこと。「金烏玉兎」と言い方を変えた、同じ意味の四字熟語となります。言葉のバリエーションがこんなところにも表れているのが見てとれるでしょう。

また参考ですが「月中蟾蜍(げっちゅうせんじょ)」という言葉もあります。「蟾蜍」とはヒキガエルの事で、そのまま「月に棲むヒキガエル」という、現代ではあまり耳にしないモチーフがみられる四字熟語です。

これは中国の伝説をそのまま表したもののため、「時間や歳月」などの別の意味はありません。「金烏玉兎」とは意味的な同義語ではありませんが、参考までにご紹介しました。

\次のページで「「金烏玉兎」の対義語は?」を解説!/

過ぎ去った白兎赤烏に想いを馳せて読まれた詩には、何とも言えない趣がある。

「金烏玉兎」の対義語は?

「金烏玉兎」の明確な対義語は見つかりませんでした。もともと、想像上の生き物の事で、それが「年月や歳月」を意味することになった言葉ですから、反対の意味の言葉は作られなかったのでしょうね。

「金烏玉兎」の英訳は?

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「金烏玉兎」の英語訳には「sun and moon」や「years and months」などがいいでしょう。

「sun and moon」「years and months」

どちらも直訳で「太陽と月」、「年月」をそれぞれ表しています。英語にするととても簡単ですが、四字熟語のもともと持っていた情景は少々伝えにくいかもしれませんね。

たとえば以下の例文のように、「so far(とても長い)」などを追加してイメージを膨らませると、言葉に込められた想いが表現できるかもしれません。月にウサギのイメージが世界で広く共通しているように、どのような表現なら伝わりやすいか考えてみるのも面白いでしょう。

Considering the years and months so far, I'm very moved.
これまでの年月(金烏玉兎)を思うと、とても感慨深い。

\次のページで「「金烏玉兎」を使いこなそう」を解説!/

「金烏玉兎」を使いこなそう

この記事では「金烏玉兎」の意味・使い方・類語などを説明しました。

昔の人々が、どのような想像をしていたのかがわかる趣のある言葉でしたね。月にウサギのイメージはおなじみですが、太陽にカラス、月にヒキガエルなどは、それと比べると現代では一般的ではないかもしれません。時間を経て、こうした認識も変わってきたのでしょう。

もしかしたら、将来的には月にウサギというイメージも変わっていってしまうかもしれません。太陽や月を眺めながら、年月の変化がもたらすものに、思いを馳せてみるのもまた一興、かもしれませんよ。

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【四字熟語】「金烏玉兎」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「金烏玉兎」について解説する。

端的に言えば「金烏玉兎」の意味は「年月や歳月のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「金烏玉兎」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「金烏玉兎」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「金烏玉兎(きんうぎょくと)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「金烏玉兎」の意味は?

「金烏玉兎」には、次のような意味があります。

《「金烏」は太陽の異称、「玉兎」は月の異称》日と月。転じて、歳月のこと。烏兎(うと)。→金烏 →玉兎

出典:デジタル大辞泉(小学館)「金烏玉兎」

「金烏」は「太陽」の別の呼び方、「玉兎」は「月」の別の呼び方のことで、合わせて「太陽と月」のこと。またそれ(日と月)が転じて「年月や歳月」を意味するようにもなりました。

「金烏」の「烏」は「からす」のこと。一見して「鳥(とり)」という漢字と見間違えないように注意が必要です。「烏」は他には「烏合(うごう)の衆」といった言葉でも使われます。あわせて押さえておきましょう。

「兎」は「うさぎ」のこと。月の模様がウサギに見えるためで、この想像は日本でもおなじみですね。「と」という読み方では「脱兎(だっと)のごとく」「兎に角(とにかく)」などでも使われます。

余談ですが、月にウサギというイメージは中国や日本だけではなく、インドやミャンマー、アメリカにも存在しているそう。調べてみると、文化を超えた人間意識のようなものが垣間見えて、とても面白いところです。興味があればぜひ自分でも調べてみて下さいね。

「金烏玉兎」の語源は?

次に「金烏玉兎」の語源を確認しておきましょう。「金烏」も「玉兎」もそれぞれ、「太陽にカラスが住む」「月にウサギが住む」という古代からの想像によるもので、中国では戦国時代の詩集『楚辞(そじ)』などにも見ることが出来ます。

こうした考えは広く定着していたようで、「金烏」は他にも「陽烏(ようう)」「黒烏(こくう)」「赤烏(せきう)」。「玉兎」は「月兎(げっと)」など、異名もたくさんあるそうです。「烏」や「兎」といった単語を見かけた場合は、太陽や月に関係しているものではと推測するのもいいでしょう。

このモチーフは昔の美術品にも多く見られます。写真があって「関連する四字熟語を選びなさい」という少し変わった問題が出ることも。自分なりに調べておくのも役に立ちますよ。

補足ですが、「金烏」についてカラスは黒いのになぜ?と思うかもしれませんが、「日の出と日の入りに移動すること」や「太陽の黒点」を表しているという発想からだそう。想像力の豊かさがうかがえます。

また月にいるのはウサギではなくヒキガエルとする説もありますが、それについては同義語の項でご紹介しますので、確認してみてください。

\次のページで「「金烏玉兎」の使い方・例文」を解説!/

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