電気を流すためには必ず電源が必要。○が×か?正解は×です。

確かに、発電機では電気以外の何かしらの力を使って電気を得ている。また、身近な物でも例えばガスコンロやライターはひねったり押したりする力を電気に変換することで発火させている。

このように、力から電気を生み出す方法がいくつかあってそのうちこの記事では「圧電効果」について紹介しよう。理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.現代生活に欠かせない電力

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エジソンが電気を発見してから1世紀半。現代生活で電気が必要不可欠なのは言うまでもありません。手書きの書類から電子データに、物を動かすのも機械的制御から電気的制御にして自動化を推進。最新の設備ではますます電気を使う機会が増えている状況。そんな現代生活に欠かせない「電気」を得るには、主に電池やコンセントから配線してくる方法が取られます。そういった方法では電源装置の使用が必要ですね。

2.電力を得る方法

もちろん、連続的にたくさん電気を得たい場合は電源設備が必須ですね。しかし、そうでもない場合もあります。短い時間だけ、少し電気が流れれば良い。そんな場合はもっと簡単な方法があります。電源設備などは一切不要。

着火

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ライターやガスコンロなどで着火するのに実は電気が使われています。火は一度付いてしまえば後は自然に燃え続けますが、最初に着火するのに大きなエネルギーが必要です。そこで電気の力を借りて火花を発生させ着火させるというもの。これらのケースでは、連続的に電気を得る必要はなく電源設備を使うほどでもないですね

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3.物質の構成と電気の流れ

3.物質の構成と電気の流れ

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圧電効果の話に入る前に、物質に電気が流れる現象について整理しておきましょう。

物質の構成

全ての物質は原子から構成されているもの。その、原子の構成はイラストのように真ん中に「原子核」と呼ばれる+電荷を帯びた素粒子があり、その周りに-電荷を帯びた「電子」が存在します。世の中に存在するあらゆる物質が+電荷と-電荷の組み合わせで出来ているわけです。電子は原子核に比べ軽く簡単に移動できます。電気が流れる時は電子が移動していくのです。

電気の流れ=電子の移動

電気の流れ=電子の移動

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「電気が流れると=電子が移動」なのですが、電子の移動のしやすさは物質によって違うため、電気の流れやすさも物質によって異なります。原子核の+電荷の価数(+~の~の部分)、原子核の周りの電子の数、そして電子の並び方が違うためです。

また電子が存在できるポジションは決まっていて(電子軌道)、通常それ以外の範囲には存在できません。数学で出てくる「存在範囲」という概念です。また、1つの電子軌道に存在できる電子の数も決まっています。電子軌道が電子で「満員」状態ならそれで安定してしまい電子は移動しません。電子軌道の定員に余裕がある場合は電子がそこを渡っていくことが可能で、これにより電流が発生します。

電子の数や存在範囲に制約があるのは、「引力斥力のバランスを取るため」です。ご存じの通り、+電荷同士、ー電荷同士は退け合い(斥力が働く)、+電荷と-電荷は引き付け合う(引力が働く)もの。したがって、+電荷orー電荷のどちらかが多すぎたり分布が偏っていたりすると安定しませんね。そのため上記のような制約が出てくるわけです。

4.圧電(ピエゾ)効果

圧電効果とは、端的に言うと圧電素子と呼ばれる物質に圧力を加えると電気が流れる現象。一体なぜ力電気が発生するのでしょうか?

電荷のズレ(分極)と電圧の定義

電荷のズレ(分極)と電圧の定義

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ピエゾ効果、圧電効果という用語を聞くと難しそうですが、原理は意外と単純。電気が流れるのは元々物質が持っている電荷の配置がズレるからです。何もしなければ物質内の電荷のバランスは保たれているのですが、圧力を加えて物質が変形するとこのバランスが崩れてしまいます。ある箇所は+電荷が多い、あるところはー電荷が多い(電荷に偏りがある)という状態になり得ますね。

+電荷とー電荷は引き合うものですが、このように電荷の偏りがあるとそれを修正しようとして電荷の移動が起きます。これが電気が発生する所以です。因みに「電圧」という概念は「電荷の差」をイメージしましょう。+~とー~の差が大きいと電圧が高いということ。+1と-1では2しか差がありませんが、+10と-10だと20も差がありこちらの方が電圧が高い。

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5.圧電素子の条件

基本的には電荷の配置をずらすことが出来ればどんな物質でも電気を流すことは理論上は可能。しかし、向き不向きはあります。どんなに変形させてもうまい具合に電荷の配置がズレてくれなければ圧電素子としての役目を発揮しません。どのような物質で圧電効果が起きるのか見ていきましょう。

圧電素子の結晶構造

ポイントになるのは「結晶構造」。圧電素子に代表される「水晶」は二酸化ケイ素(SiO2)の固体がきれいに結晶して出来た鉱物。何がすごいかというここで強調したいのは「きれいに結晶している」点。

SiO2のはケイ素Siと酸素Oが結合してできていて、Si、Oが規則正しく並んでいます。これらの結合、狭い範囲ではどのような物質でも規則正しく繰り返されますが、なんと水晶はこの規則正しい配列を肉眼で見える大きさまで保っているのです。二酸化ケイ素の分子SiO2の大きさは1nm以下のスケールで、それが肉眼で見える大きさ1mmくらいまで配列を崩すことなくつながっていることを意味します。

結晶構造と圧電効果

結晶構造と圧電効果

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話を戻して、物質に圧力を加えると変形して電荷に偏りが出ますね。仮に、原子の配列が規則正しくなくランダムに配列していたとしましょう。圧力をかけると随所随所で電荷の偏りが発生しますが、その偏り方はランダム。所々電気が流れる道があるけれど方向はぞれぞれバラバラで、1本につながっておらず物質全体で見るとうまく電気が流れる状態ではありません(イラスト参照)。

しかし、規則正しく配列していれば、ミクロに見てもマクロに見ても少しずつ電荷がズレてくれます。電気が流れやすい道が1本につながるイメージです。このような配列を取るのは主にセラミックスと呼ばれる材料で、SiやCなどが結像した無機化合物。

力を即電気に変換

全ての物質はいわば電荷(原子核と電子)の集合体であり、これらの電荷を上手くずらしてやれば理論上は電気を流すことが可能。しかし、原子の配列が乱れていると電荷の配置がランダムにズレるだけであり、電気の通り道が寸断されてしまうためうまく電気が流れません。

水晶のように原子が規則正しく配列している結晶体と呼ばれる物質に圧力を加えて電荷の配置をずらすと、電気の通り道が1本につながり電気が流れてくれます。圧電効果を使うと電源装置がなくても力を加えれば電気を流すことが可能。

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物理

3分で簡単「圧電効果」力から電気を生み出す方法を理系ライターがわかりやすく解説

電気を流すためには必ず電源が必要。○が×か?正解は×です。

確かに、発電機では電気以外の何かしらの力を使って電気を得ている。また、身近な物でも例えばガスコンロやライターはひねったり押したりする力を電気に変換することで発火させている。

このように、力から電気を生み出す方法がいくつかあってそのうちこの記事では「圧電効果」について紹介しよう。理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.現代生活に欠かせない電力

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エジソンが電気を発見してから1世紀半。現代生活で電気が必要不可欠なのは言うまでもありません。手書きの書類から電子データに、物を動かすのも機械的制御から電気的制御にして自動化を推進。最新の設備ではますます電気を使う機会が増えている状況。そんな現代生活に欠かせない「電気」を得るには、主に電池やコンセントから配線してくる方法が取られます。そういった方法では電源装置の使用が必要ですね。

2.電力を得る方法

もちろん、連続的にたくさん電気を得たい場合は電源設備が必須ですね。しかし、そうでもない場合もあります。短い時間だけ、少し電気が流れれば良い。そんな場合はもっと簡単な方法があります。電源設備などは一切不要。

着火

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ライターやガスコンロなどで着火するのに実は電気が使われています。火は一度付いてしまえば後は自然に燃え続けますが、最初に着火するのに大きなエネルギーが必要です。そこで電気の力を借りて火花を発生させ着火させるというもの。これらのケースでは、連続的に電気を得る必要はなく電源設備を使うほどでもないですね

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