日本の総面積の半分以上が豪雪地帯。冬だ雪だ、自動車のタイヤを変えなきゃ。そして春になったらノーマルタイヤに戻す。家庭でタイヤ交換しようと思うと自動車を持ち上げる必要がある(家にピット設備を設けている場合は除くが多くの家庭では備えていないと思う)。車の重量は1t以上、人力で持ち上げられるのはジャッキアップのお陰。

どのような原理を利用しているか理系ライターのR175と見ていこう。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.ジャッキアップとは

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重い物を比較的小さな力で重い物を持ち上げる方法。身近な例だと車のジャッキアップがありますね。タイヤ交換、オイル交換、その他整備などの時にはt単位の重さの物を人力で持ち上げる必要が出てきます。人力で生み出せる「小さな力」を車を持ち上げられるほどの「大きな力」に変換する仕組みがジャッキアップです。

2.必要な変換倍率

成人男性の平均体重が65kg程度、大柄な人でも100kg前後であり、人間が全体重をかけても生み出せる力はせいぜい0.1tあるかないかのレベル。それに対して自動車は小型仕様でも1t程度はあります。普通にシーソーしても絶対に負けますね。人間の生み出す力をがせいぜい0.1t未満であるところを10倍以上に増幅させる必要があります。

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3.力と圧力

力に非常に似た概念である「圧力」。字としては「圧(お)す力。つまり圧力は力の範疇の一つであり、特に「何かを圧す」場合に使う言葉。よって圧力は力の一部であり、起こっている現象は同じ。では何が違うのか?「表し方」です。力の単位はN(ニュートン)で、圧力の単位はN/m2(ニュートン パー 平方メータ)。力がかかる部分の面積で割り算して表しています。

圧力、面積、力の関係

圧力、面積、力の関係

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面積が1m^2のA面と0.5m^2のB面にどちらも100Paの圧力がかかっているとしましょう。この時A面、B面にかかる力FA、FBは?力の定義からFA=100×1=100N、FB=100×0.5=50N。圧力が同じなら面積が2倍のA面にはB面の2倍の力がかかることがわかります。広い受圧面積を設けることで大きな力を生み出せますね。

4.パスカルの原理

4.パスカルの原理

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密閉空間にある流体空間内のどこの部分でも圧力は一定というルールがパスカルの原理。例えば、左端は細く右端は太い筒上の容器があるとしましょう。左端から押してシリンダの内圧を上げます。この時、当然右端側も同じ圧力に。中央付近でも、どこでも、シリンダ内はどの箇所も同じ圧力になるというもの。

形状の違うフラスコでの内圧

形状の違うフラスコでの内圧

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上の方が細く下が太いフラスコA、上下とも太さが変わらないフラスコB、上が太く下が細いフラスコCがあり、底面積はどれも同じとします。A〜Cすべて水位を10wp_にしました。この時、底面にかかる力Fについて正しい記述はどれ?形状の影響はあるのだろうか。

補足

フラスコの蓋をしていないけれど「密閉」という条件は満たすのか?という疑問が出てくるとこねお。確かに蓋はされていないため、フラスコ内の水はどこにでも行けてしまう状態。しかし、特に振動を加えたりしなければどこかに漏れ出していくわけではないですね。よってこのような置き方をしている限り、水はフラスコや空気によって「密封」されていると考えて問題ありませんつまりパスカルの原理が成り立つということ。

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問題:内圧による力について

(ア)水がたくさん入っているほど底面にかかる力は大きいので、FはA<B<Cとなる。

(イ)水圧は水位によるため、A、B、Cどれも同じ。A、B、Cとも底面積は同じなのでFも同じ値となる。

(ウ)水圧は水位によるため、A、B、Cとも同じ。AとBは底面のみで水を支えているが、Cは底面と側面で分担して水を支えている。よってFはC<B=A。
正解は?

まず、補足にあるように水は空気とフラスコによって密封されているためパスカルの原理が成り立ち、水圧は一定。詳しい解説は割愛しますが、ベルヌーイの定理より水圧は水位に比例。つまり水位が等しいA〜Cの水圧は同じ。また、底面の受圧面積はA〜C全て同じ。圧力も受圧面積も等しいので受ける力Fは同じ。(イ)が正解。

誤答の選択肢

誤答の選択肢

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(ア)は気持ちは分かりますが、水位が同じなら水圧等しくなり、水の入っている量は関係ありません。ただし、総重量ならA<B<Cの順総重量に注目するなら側面にかかる力も考える必要が出てきてますAでは側面に働く力が斜め上向き方向で、Bは真横Cは斜め下向きつまり総重量はAでは底面にかかる力から側面にかかる力の上向き成分の分だけ引き算したもので軽くなり、Bは底面の力そのままCは底面の力と側面の力の下向き成分を加えたもので重くなりますね。

(ウ)は考え方が分からなくもないですが、水がたくさん入っているCだけ小さいのは何だが違和感あり。Cで下向きの力を受けるのは底面と側面であり、下向きの力を受ける部分の受圧面積が大きいという考えはあっています。下向き側面の分だけ受圧面積は増えますが、側面は側面で水圧を受けており、底面にかかる水圧を側面でも分担してくれるというのは誤り。

5.重い物でも持ち上げられる

5.重い物でも持ち上げられる

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さて、話を戻し、パスカルの原理を使って、小さな力を大きな力に変換する原理を見ていきましょう。密封空間では圧力が同じ。一方、力は受圧面積に比例します。シリンダの絵をもう一回見てみましょう。左端から10Nの力で押します。左端の断面積を0.01m^2とすると、シリンダ内圧は1000Paですね。一方右端の断面積を0.1m^2とすると、右端にかかる力は圧力x面積で1000×0.1=100N。力は10倍に増加しますね。

ジャッキアップ

ジャッキアップ

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クルマを持ち上げるジャッキアップではこの仕組みが用いられています(イラスト参照)。ジャッキは内圧は下がらないようにしっかりシールされる仕組み。容器内はオイルが満たされています。人が押す側の受圧面積を小さく、自動車を持ち上げる側の受圧面積を広くとっておけば、人力で徐々に油圧を上げることで大きな力を得られますね。

圧力一定パスカルの原理

パスカルの原理の説明は一言で言うと密閉空間の圧力は一定という原理。圧力一定なら受圧面積が大きいほど力は大きくなるもの。自動車を持ち上げるジャッキアップなどにこの仕組みが応用されています。

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物理物理学・力学理科

3分で簡単「パスカルの原理」理系ライターがわかりやすく解説

日本の総面積の半分以上が豪雪地帯。冬だ雪だ、自動車のタイヤを変えなきゃ。そして春になったらノーマルタイヤに戻す。家庭でタイヤ交換しようと思うと自動車を持ち上げる必要がある(家にピット設備を設けている場合は除くが多くの家庭では備えていないと思う)。車の重量は1t以上、人力で持ち上げられるのはジャッキアップのお陰。

どのような原理を利用しているか理系ライターのR175と見ていこう。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.ジャッキアップとは

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重い物を比較的小さな力で重い物を持ち上げる方法。身近な例だと車のジャッキアップがありますね。タイヤ交換、オイル交換、その他整備などの時にはt単位の重さの物を人力で持ち上げる必要が出てきます。人力で生み出せる「小さな力」を車を持ち上げられるほどの「大きな力」に変換する仕組みがジャッキアップです。

2.必要な変換倍率

成人男性の平均体重が65kg程度、大柄な人でも100kg前後であり、人間が全体重をかけても生み出せる力はせいぜい0.1tあるかないかのレベル。それに対して自動車は小型仕様でも1t程度はあります。普通にシーソーしても絶対に負けますね。人間の生み出す力をがせいぜい0.1t未満であるところを10倍以上に増幅させる必要があります。

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