この記事では「顔を潰す」について解説する。

端的に言えば「顔を潰す」の意味は「体面や信用を失うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「顔を潰す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回の慣用句「顔を潰す」は日常的に使われ類語も対義語も比較的多い用語です。言葉の起源を含めて、どんな場面で使えるのかの情報を解説していく。

「顔を潰す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顔を潰す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「顔を潰す」の意味は?

まず、国語辞典に載っている「顔を潰す」の意味を見てみましょう。

面目を失わせる。名誉を傷つける。「親の―・す」 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「顔を潰す」 

「顔を潰す」(かおをつぶす)の「顔」には、「目や鼻や口がついている頭部の前面」と言う意味の他にも「社会に対する面目や名誉」、「特定の社会や地域においての知名度、勢力」という意味がありるのです。「顔を潰す」の場合の「顔」は後者の意味で使われていて、実際に顔面を足で踏みつけるという意味ではなく、「面目や名誉を傷つける」という意味で使われています。

日本は、海外の国々とは異なり、地理的に海に囲まれ外部から攻撃や侵略を受けにくい島国です。人の流動性の多くない村社会の中で人々は摩擦や対立を極力避けて、自らの体面を保ち他人と同調して生活してきた時代が長くありました。ひとつの村は何十もの家族から構成されていますが、家族の中では、親は子どもが村社会と摩擦を起こさないように、集団の和を壊さないように教育してきた時代も長く、日本にも体面を気にする気質は古くからあったと考えられています。

「顔を潰す」の語源は?

次に「顔を潰す」の語源を確認しておきましょう。

人が他人から認められたい、尊敬されたいと願うのは世界共通であり、言い換えれば、人は「名誉を傷つけられることなく誉められたい」という承認欲求を本来持っています。それ故、どこの国であっても人の集まる社会では、オトナ、コドモに関わらず、多いか少ないは別として「顔を潰されたくない」という願望は自然に発生していきました。

しかし、世界の中でも「顔を潰されたくない」という意識が際立って強いのが中国人であると言われています。中国では、「顔を潰す」という場合の「顔」は、「面子(めんつ)」(中国語ではミエンズと発音)と言われ、多くの国で、中国人と付き合っていくには、「中国人の面子をつぶさないように顔を立てる」ことが大切だと考えられているのです。もし、中国人の面子をつぶすようなことをすると本当に一生恨まれるとも言われていますし、中国人を人前で怒ってはいけないとも言われています。人前で怒られることは面子を潰すことになるからです。

\次のページで「「顔を潰す」の使い方・例文」を解説!/

「顔を潰す」の使い方・例文

「顔を潰す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.お見合いの場所を間違えてしまいお相手の彼女を紹介してくれた上司の顔を潰してしまいました。

2.ここ10年、県大会では毎年ベスト4までは勝ち進んできた我が校の野球部でしたが、エラーで1回戦負けになってしまい、先輩などの顔を潰してしまったのです。

3.社長は年初の挨拶で「この案件は受注するぞ」と宣言していたのに私があいまいな回答をしたことで注文先を怒らせてしまい失注してしまいました。会社と社長の顔を潰してしまったのです。

最近は「人生100年時代」と言われています。そんな長い人生の内、「人の顔を潰してしまったり」「人に顔を潰されたり」そんな経験、誰でも何度かはするのかもしれませんね。

「顔を潰す」の類義語は?違いは?

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「顔を潰す」の類義語もたくさんありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

「顔に泥を塗る」

「顔に泥を塗る」(かおにどろをぬる)の「顔」とは、「顔を潰す」の場合と同様に「体面や名誉」のことです。

「泥を塗る」とは、普通の状態から黒い泥によって顔が汚されることを意味しますから、全体では、失敗や行き過ぎた行為によって、もともと「社会的信用のあった人の名誉や尊厳を傷つけてしまう」ことをいいます。ほとんど、「顔を潰す」と同じ意味で使われているのですね。

「面子が潰れる」

「面子が潰れる」(めんつがつぶれる)の「面子」とは「面目」や「体裁」「体面」という意味であり、中国から伝わった言葉です。中国でも同様の意味で使われています。「面子が潰れる」は全体としては、「面目や名誉を傷つけられる」という意味になるのです。

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「顔を潰す」の対義語は?

次に「顔を潰す」の反対語を見ていきましょう。

「顔を立てる」

「顔を立てる」(かおをたてる)も「顔を潰す」の反対語になります。

「顔を立てる」の場合の「顔」は「顔を潰す」の場合と同様に「面目や名誉、体裁」という意味になり、「立てる」「物事を好ましい状態で成り立たせ維持する、損なうことなく保つようにする」という意味で使われているのです。「顔を立てる」の全体的な意味は「面目や名誉を損なうことなく維持する」ということになります。

「面子を保つ」

「面子を保つ」(めんつをたもつ)も「顔を立てる」と同様な意味で「今まで培ってきた面目や名誉を維持する」という意味になります。もちろん、否定的な意味で使われることもあり、実体や実力がないのにも関わらず、「表面だけをつくろい、威厳があるような態度や行動をする」場合にも使われるようになってきてきました。

「顔を潰す」の英訳は?

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それでは、英語では「顔を潰す」はどのように表現すればよいのか見ていきましょう。

「Lose Face」

「顔を潰す」は、もともとは中国や日本を中心とするアジア文化圏で使われていた概念だと考えられていますが、アメリカを中心とする英語圏においても、「Lose face」で「顔を潰す」という意味になり、日本語の持つニュアンスも相手に十分に伝わる単語です。

「Lose face」の「Lose」は「失う、失くす」という意味の動詞であり、faceは「顔」という名詞ですね。全体で、「顔を失くす」、「面目を失う」という意味になるのです。英語でも日本語や中国語と同じ感覚で使えるのでね。例文をひとつご紹介しましょう。

Your failure made me lose face in spite of the fact that I recommended you as a suitable leader for this job.
(この仕事のリーダーにふさわしいのは君だと私が推薦したのにお前は失敗して私自身の顔がつぶれてしまった。)

「disgrace」

「disgrace」も覚えておくとよい単語のひとつです。

「disgrace」は、名詞として使う場合は、「不名誉,不面目,恥辱」という意味であり、動詞として使う場合は、「〇〇の恥になる」や「(名を)汚す」という意味で使えます。例文をひとつご紹介しましょう。

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Please do not disgrace our high school's name.
(学校の名を辱めることはしないでください。)

「顔を潰す」の反対語の英訳は?

「顔を潰す」の反対語の英訳も気になりますよね。では、見て行きましょう。

「Save face」

「Lose face」が「顔を潰す」であるのに対して反対語「顔を立てる」は、「Save face」になります。ひとつ例文をご紹介しましょう。

I also don’t like him very much, but I had to save his face in that situation.
(私だって彼のことが好きなわけじゃないが、あの状況ではあいつの顔を立てざるを得なかったのだ。)

「顔を潰す」を使いこなそう

これまで、「顔を潰す」の意味や使い方を見てきましたが、日本語には、しばしば会話でも「顔」を使ったことわざが出てきます。この場合の「顔」は「面目や体面、世間に対する体裁」や「今まで築いてきた信用や名誉」という意味で使われているのです。日本の「顔」と同じように中国で使われる言葉には「面子」があります。「今まで築いてきた信用や名誉」という意味で使われるのです。「面子」は日本語でも使われる場合も少なくありません。「顔」に限らず、人間の身体の一部を使うことわざもたくさんありますので、でてきたら意味を確認して日常でも使ってみると楽しいかもしれませんね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「顔を潰す」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「顔を潰す」について解説する。

端的に言えば「顔を潰す」の意味は「体面や信用を失うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「顔を潰す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回の慣用句「顔を潰す」は日常的に使われ類語も対義語も比較的多い用語です。言葉の起源を含めて、どんな場面で使えるのかの情報を解説していく。

「顔を潰す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顔を潰す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「顔を潰す」の意味は?

まず、国語辞典に載っている「顔を潰す」の意味を見てみましょう。

面目を失わせる。名誉を傷つける。「親の―・す」 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「顔を潰す」 

「顔を潰す」(かおをつぶす)の「顔」には、「目や鼻や口がついている頭部の前面」と言う意味の他にも「社会に対する面目や名誉」、「特定の社会や地域においての知名度、勢力」という意味がありるのです。「顔を潰す」の場合の「顔」は後者の意味で使われていて、実際に顔面を足で踏みつけるという意味ではなく、「面目や名誉を傷つける」という意味で使われています。

日本は、海外の国々とは異なり、地理的に海に囲まれ外部から攻撃や侵略を受けにくい島国です。人の流動性の多くない村社会の中で人々は摩擦や対立を極力避けて、自らの体面を保ち他人と同調して生活してきた時代が長くありました。ひとつの村は何十もの家族から構成されていますが、家族の中では、親は子どもが村社会と摩擦を起こさないように、集団の和を壊さないように教育してきた時代も長く、日本にも体面を気にする気質は古くからあったと考えられています。

「顔を潰す」の語源は?

次に「顔を潰す」の語源を確認しておきましょう。

人が他人から認められたい、尊敬されたいと願うのは世界共通であり、言い換えれば、人は「名誉を傷つけられることなく誉められたい」という承認欲求を本来持っています。それ故、どこの国であっても人の集まる社会では、オトナ、コドモに関わらず、多いか少ないは別として「顔を潰されたくない」という願望は自然に発生していきました。

しかし、世界の中でも「顔を潰されたくない」という意識が際立って強いのが中国人であると言われています。中国では、「顔を潰す」という場合の「顔」は、「面子(めんつ)」(中国語ではミエンズと発音)と言われ、多くの国で、中国人と付き合っていくには、「中国人の面子をつぶさないように顔を立てる」ことが大切だと考えられているのです。もし、中国人の面子をつぶすようなことをすると本当に一生恨まれるとも言われていますし、中国人を人前で怒ってはいけないとも言われています。人前で怒られることは面子を潰すことになるからです。

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