この記事では「故郷に錦を飾る」について解説する。

端的に言えば故郷に錦を飾るの意味は「出世して故郷へ帰ること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「故郷に錦を飾る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「故郷に錦を飾る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「故郷に錦を飾る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「故郷に錦を飾る」の意味は?

「故郷に錦を飾る(こきょうににしきをかざる)」には、次のような意味があります。

故郷を離れていた者が、立身出世して晴れがましく故郷へ帰る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「故郷へ錦を飾る」

「錦(にしき)」とは、金や銀の種々の色糸で模様を織った華やかな絹織物のこと。そのような豪華なもののため、衣装として身につけることができるのは、まさに成功や出世した人の証とも言えるでしょう。

成功して豪華な衣服を着て故郷に帰ってこれるほどの人物になった、という意味から「故郷に錦を飾る」という慣用句が生まれました。

なお辞典などによって「故郷“へ”錦を飾る」とも記されることもありますが、どちらを用いても問題ありません。まったく同様の意味の言葉です。

「故郷に錦を飾る」の語源は?

次に「故郷に錦を飾る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の歴史書のひとつ、『梁書(りょうしょ)』劉之遴伝(りゅうしりんでん)が出典と言われています。

ここに記されているのが「高祖謂いて曰(いわ)く、卿の母は、年徳並らびに高し。故に卿をして錦を衣(き)て郷に還り、栄養の理を尽くさしめんと。」という文です。優れた才能を持つ、劉之遴(りゅうしんりん)という青年に対し、武帝が「貴方の母親は年も徳も高い。そのため、貴方に錦の着物を着せて故郷に帰らせ、母親にも美しい服とおいしい食事をすすめて大事にしてほしい」と言い、錦を与えました。

これが「故郷に錦を飾る」の由来と言われています。

\次のページで「「故郷に錦を飾る」の使い方・例文」を解説!/

「故郷に錦を飾る」の使い方・例文

「故郷に錦を飾る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.あのバンドグループは故郷に錦を飾ることを目標に努力を重ね、ついに記録的な売上げで地元の凱旋ツアーを成功させた。
2.いつか化学のノーベル賞をとって故郷に錦を飾りたい。そのためにも今はラボで実験を重ね情報を集め、過程を大事にしよう。
3.チームリーダーとしてプロジェクトを成功させれば昇進が確実となる。故郷に錦を飾るためにも気は抜けないと、彼は全体の進捗を念入りに確認していた。
4.悪性腫瘍細胞に関する彼の研究論文は多くの患者を救った。この功績は国からも表彰され、彼は故郷に錦を飾ったと言えるだろう。

進学や就職で地元を離れても、いつか立派な姿で故郷に戻りたい、と思う人も少なくないでしょう。そのため通常、1~3の例文のように目標として掲げる場面や、4の例文のように第三者を対象に名誉をたたえて誇りに思うような状況で用いることが多い用語です。

また、「故郷に錦を飾る」は“地元に帰る”意味も含んでいます。そのため、故郷を離れていることが前提です。ふるさとを離れずに名誉なことがあっても、その場合はこの言葉を用いることはできないので注意しましょう。

「故郷に錦を飾る」の類義語は?違いは?

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ここでは「故郷に錦を飾る」の類義語について解説します。

「衣錦之栄」

「衣錦之栄」とは「いきんのえい」と読む四字熟語。「錦(にしき)を衣(き)るの栄(えい)」と読み下し、華やかな衣装を着て故郷に戻ることが転じて、出世して故郷へ帰ることを指します。つまり「故郷に錦を飾る」と同義の言葉と言えるでしょう。

その他、ほぼ同じ意味の四字熟語に「衣錦還郷(いきんかんきょう)」があります。こちらは「錦(にしき)を衣(き)て郷(きょう)に還(かえ)る」と読み下しますが、違う言葉を使っていても示す内容はまったく同じです。関連語句として覚えておくといいでしょう。

\次のページで「「故郷に錦を飾る」の対義語は?」を解説!/

「故郷に錦を飾る」の対義語は?

「故郷に錦を飾る」とは出世して晴れやかに故郷に帰ること。そんな「故郷に錦を飾る」と反対の意味とはどのような言葉になるでしょうか。ここでは対義語を確認していきます。

「衣繡夜行」

「衣繡夜行」は「いきんやこう」と読む四字熟語で、“せっかく出世や成功をしても誰にも知ってもらえないこと”のたとえとして用いられる言葉です。

「繡」とは「錦」のことで、「繡(しゅう)を衣(き)て夜(よる)行く」と訓読みします。中国の『史記』項羽(こうう)伝で項羽が「富貴な身分になっても故郷に帰らないのは、錦の服を着て夜歩くようなものだ」と述べたことが由来で、「暗い夜に華やかな衣装を着ても誰にも気付いてもらえない」ことから転じてこのような意味の言葉になりました。

語源を見ると、そもそもが「故郷に錦を飾る」の反対の言葉として生まれたことがわかるでしょう。まさに対義語のひとつと言えます。

「故郷に錦を飾る」の英訳は?

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それでは「故郷に錦を飾る」を英語で表現するにはどのような訳が良いでしょうか。最後に英訳についても確認していきましょう。

「to return home loaded with honours」

「to return home loaded with honours」は「名誉をともなって故郷に戻る」という意味で、「故郷に錦を飾る」の英語訳として用いられる表現です。

「honour」は“名誉”という意味の単語で、「loaded with~」は“~が詰まっている”などを意味します。そのため「故郷に錦を飾る」の内容を適切に表したい場合はこの表現を用いると良いでしょう。

「故郷に錦を飾る」を使いこなそう

この記事では「故郷に錦を飾る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「故郷に錦を飾る」は語源は古いものの、言い回しも多く今もよく使われる言葉です。時代が変わって技術が進歩しても、自分の故郷に愛着を抱き恩返ししたいという気持ちは、多くの人に共通してみられる感情なのでしょう。

ひとまわり大きくなった姿を故郷に見せられるような、そんな成長ができるよう努めたいものですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「故郷に錦を飾る」の意味や使い方は?例文や類語を元広告会社勤務ライターがわかりやすく解説!

この記事では「故郷に錦を飾る」について解説する。

端的に言えば故郷に錦を飾るの意味は「出世して故郷へ帰ること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「故郷に錦を飾る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「故郷に錦を飾る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「故郷に錦を飾る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「故郷に錦を飾る」の意味は?

「故郷に錦を飾る(こきょうににしきをかざる)」には、次のような意味があります。

故郷を離れていた者が、立身出世して晴れがましく故郷へ帰る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「故郷へ錦を飾る」

「錦(にしき)」とは、金や銀の種々の色糸で模様を織った華やかな絹織物のこと。そのような豪華なもののため、衣装として身につけることができるのは、まさに成功や出世した人の証とも言えるでしょう。

成功して豪華な衣服を着て故郷に帰ってこれるほどの人物になった、という意味から「故郷に錦を飾る」という慣用句が生まれました。

なお辞典などによって「故郷“へ”錦を飾る」とも記されることもありますが、どちらを用いても問題ありません。まったく同様の意味の言葉です。

「故郷に錦を飾る」の語源は?

次に「故郷に錦を飾る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の歴史書のひとつ、『梁書(りょうしょ)』劉之遴伝(りゅうしりんでん)が出典と言われています。

ここに記されているのが「高祖謂いて曰(いわ)く、卿の母は、年徳並らびに高し。故に卿をして錦を衣(き)て郷に還り、栄養の理を尽くさしめんと。」という文です。優れた才能を持つ、劉之遴(りゅうしんりん)という青年に対し、武帝が「貴方の母親は年も徳も高い。そのため、貴方に錦の着物を着せて故郷に帰らせ、母親にも美しい服とおいしい食事をすすめて大事にしてほしい」と言い、錦を与えました。

これが「故郷に錦を飾る」の由来と言われています。

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