3分で簡単「死斑」捜査のカギとなるこの現象を元塾講師がわかりやすく解説
刑事ドラマやアニメでもよく耳にするワードについて解説します。
堅苦しい勉強でなくでも生物の知識は身につく。生物化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していこう。
ライター/Ayumi
理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。
1.「死斑」とは
死斑(しはん)とは、動物の死後、皮膚に発現する赤色の痣のようなものです。死後数時間で現れ始め、6~8時間ほどかけて大きくなり、約12時間後がピークとなります。これはあくまでも目安であり、亡くなったときの環境によっても変化することを覚えておきましょう。
1-1.死斑ができる原因
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私たちの身体は常に心臓が動き血液を全身に送ることで生命を維持していますよね。学校の授業でも心臓はポンプのような役割を果たしていると覚えませんでしたか?つまりそれは心臓が停止してしまえば血液の流れも止まってしまうことを意味します。血液中を流れる酸素や栄養分が全身に行き渡らず、余分な水分などの不要物質の運搬もできなくなってしまうからです。
死後は血液の循環が完全に止まることで、重力に従って血液は身体の下側に集まることになります。その結果、体の低い位置にある部分に変色を起こすのです。例えば死亡時の体勢が仰向けなら背中や臀部といった身体の背面に、うつ伏せなら腹部などの前面に、首つりなどで亡くなった場合は下半身に死斑が現れるでしょう。
1-2.間違えやすい皮下出血との違い
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死斑は亡くなった後にできる痣であるのに対し、皮下出血は生存中に現れる生活反応です。皮下出血は強くぶつけたりすることによって皮下組織で出血が起こり、それが凝血した場合に見られます。また、皮下出血の場所は身体のどこにでも起こり、亡くなった際の体勢とは関係がありません。一方で死斑は凝血してできたものではないため、ただ血管内がうっ血(血流が停滞し、血液が溜まっている状態)しているだけの死亡初期段階では、部位を圧迫するとすぐに消えるという特徴があります。また、体位と痣の位置に関係があるのが大きなポイントです。
2.死斑の観察
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それでは死斑の現れ方について詳しく見ていきましょう。死斑を観察することで、殺人が起こったときの状況証拠や捜査を進める上での貴重な資料となります。法医学的な内容になりますが、わかりやすく説明していきますね。
2-1.部位
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死斑の大きな特徴は現れる部位でしょう。重力にともなって毛細血管内に血液が溜まるため、どのような姿勢で亡くなっていたのかが推察しやすくなりますね。表面に見える皮膚だけでなく、死斑は内部臓器にも現れます。
ただし、水中死体のように死後体位が定まらない状況においては、死斑が現れない場合があるでしょう。(早期に発見され、安置された場合は通常通りの死斑が見られます。)また、硬い面に接触している場合やきつい衣服を着用している場合も例外です。血管が圧迫されるために血液が入り込めず、死斑が発現しない場合があるでしょう。
2-2.色と強弱
死斑の色調や強弱の違いによっては死因を特定できる場合があります。暗い紫赤色の痣のように見えるのが通常ですが、ある特定の死因ではその色が大きく異なるのです。
一酸化炭素中毒や青酸ガスによって亡くなった場合、死斑は鮮紅色になります。これは死因となったガスが血中のヘモグロビンと結びついたために起こる色の変化です。また、亜硝酸ナトリウムや塩素酸カリウムの中毒では、褐色の痣になるでしょう。さらに硫化物中毒によるものでは緑色の死斑が現れます。
急性心臓病や窒息などの急死例では死亡から発現までが速く、強い色調で現れるようです。一方で失血死や敗血症の場合には死斑の発現が弱いことが報告されています。
2-3.時間経過による変化
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死斑は死亡時間の特定につながるものです。死後数時間、早い場合は数十分後には現れ始め、6~8時間ほどかけてその範囲を広げていきます。そのピークは死後12時間後と言われていますが、この時点ではまだうっ血の状態です。そのために部位を圧迫することで死斑の消失や移動が見られます。体位を変えた場合、最初に位置の死斑は消失してもまた別の部位に死斑が出現するのです。
その後15時間ほどが経過すると、徐々に毛細血管の外に血液が漏れ出ていきます。それにしたがって皮膚組織に血液の色深く浸透していくため、身体を動かしても圧迫しても痣の移動は起こりません。
先述したように急死例では発現までが速くなる傾向がある他、筋肉質の若者でも経過が速いといわれています。一方で失血死の場合や老人や子供では発現の進行速度は遅くなるでしょう。
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