この記事では「斜に構える(はすにかまえる)」という慣用句について解説する。

端的に言えば「斜に構える」の意味は「十分に身構える」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「斜に構える」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「斜に構える」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「斜に構える」の意味や使い方を見ていきましょう。

「斜に構える」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「斜に構える」には、次のような意味があります。

1.剣道で、刀を敵に対して斜(なな)めに構える。
2.物事に正面から接するのでなく、ことさらずれた対応の仕方をする。 
3.物事に対して十分に身構える。改まった態度をとる。 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「斜に構える」

まずは、「斜に構える」の正確な読み方をチェックしておきましょう。この慣用句は「はすにかまえる」と読みます。

もちろん、「しゃにかまえる」と読んでも間違いではありません。しかし、「はす」という読み方があることを知っておいた方が、誰かがこの慣用句を用いたときに困惑しなくて済むのではないでしょうか。

また、上記にあるように表す意味が大きく三つ存在することにも要注意です。元々は、ひとつめにあるように剣道において相手と正対せずに斜めに構えるという意味でした。

そして、そこから派生して二つめや三つめの意味が生まれます。中でも、二つめの「ことさらずれた対応をする」という意味には気をつけましょう。

なぜならば、これには「皮肉っぽい態度」や「不真面目な態度」も含まれるからです。相手の言動に対して、初めからまともに取り合おうとしていないわけですね。

「斜に構える」の使い方・例文

「斜に構える」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「斜に構える」の類義語は?違いは?」を解説!/

明らかに格上の相手に対し何か秘策でもあるのか、健太は竹刀を手に取り斜に構えた

自分にはまったく覚えがないのに、上司から斜に構えてはいけないと注意を受けた。

いくら真剣に訴えかけても、斜に構えたあの女性に話を聞いてもらうのは至難の業だろう。

同じ「斜に構える」でも、それぞれの文脈によって表す意味はさまざまです。まず、最初の例文は「竹刀」との表記があることから、剣道の練習か試合中であることが分かります。

したがって、「斜に構える」の意味は「相手に対して斜めに構える」で決まりでしょう。では、二つめと三つめの例文の意味はどうでしょうか。

ここでポイントになるのが、残り二つのどちらの意味で用いられているのかという点。つまり、不真面目な態度を取っているのか身構えているのかという点です。

二つめの例文でには「注意を受けた」とありますので、こちらは不真面目な態度をとっていたのではないかと推察できます。一方、最後の例文で着目したいのは、話を聞いてもらうのは至難の業だという部分です。

これは、相手が警戒して身構えている様子を示唆しているといえるでしょう。いずれにしても、前後の文脈をよく考え併せた上でどの意味を表しているのか考えていかなければなりません。

#2 「斜に構える」の類義語は?違いは?

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ところで、「斜に構える」の類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、中でも代表的なものを二つご紹介します。

「天の邪鬼」

「天の邪鬼」は、「斜に構える」の類義語の中でももっとも典型的なもののひとつです。この慣用句には、人の言うことにわざと逆らうひねくれ者という意味があります。

つまり、「斜に構える」の持つ「ことさらずれた対応をする」という意味に近いといえるわけです。

「身構える」

「身構える」もまた、「斜に構える」の類義語だといえるものです。ただし、こちらは「改まった態度をとる」という意味と近いものなので、注意しましょう。

この言葉が意味するのは、警戒して心を許さないという意味です。簡単には他人を受け容れない姿勢だと言い換えてもいいでしょう。

\次のページで「「斜に構える」の対義語は?」を解説!/

そのライターには、ものごとをまっすぐにとらえない天の邪鬼な一面があるのも確かだ。

赤の他人と話をする際は、身構えて行うくらいでちょうどよいということを忘れるな。

#3 「斜に構える」の対義語は?

では、「斜に構える」の対義語はいったいどのようにとらえればいいのでしょうか。相手に対して斜めに構えたりずれた対応をしたりすることの反対は、正々堂々と正面から向き合うことでしょう。

ここでは、そのような意味を持つ慣用句を二つほど紹介していきます。

「面と向かう」

「面と向かう」は、「斜に構える」の対義語だといえる存在です。この慣用句には、相手と直接向かい合うという意味があります。

つまり、「斜に構える」とは違ってことさらずれた対応をとることにはなりません。むしろ、正々堂々と直接やりとりをする様子だと考えてください。

「四つに組む」

「四つに組む」もまた、「斜に構える」の対義語だといえる存在です。こちらの慣用句は、強い相手に対して堂々と対峙することを意味します。

これは元々は相撲界の言葉で、お互いにまわしを引きあって組み合うことを意味していました。これが転じて、逃げも隠れもせず取り組む様子を表すようになり、現在に至ります。

では、これらの対義語を用いた例文もここでチェックしておきましょう。

面と向かって文句を言えないものだから、陰でこそこそと悪口を言うくらいしかできないのであろう。

ライバル会社とわざわざがっぷり四つに組んで争う必要はないのではと思いますが、いかがでしょうか。

#4 「斜に構える」の英訳は?

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最後に「斜に構える」の英語訳についても押さえておきましょう。

\次のページで「「be cynical about ~」」を解説!/

「be cynical about ~」

「be cynical about ~」は「斜に構える」の英語訳の中でも、もっとも典型的なものだといえます。この英語表現の直訳は「~についてシニカルな態度をとる」です。

ここでいう「シニカル」というのは冷笑的や皮肉であるさまを表します。これが「斜に構える」の持つ「ことさらずれた対応」と意味が似ているというわけです。

「take a challenging attitude」

「take a challenging attitude」もまた、「斜に構える」の英語訳だといえるものです。こちらの英語表現は、「挑戦的な態度をとる」と直訳できます。

つまり、こちらも「ことさらずれた対応」と意味が近いものだといえるでしょう。

「斜に構える」を使いこなそう

この記事では「斜に構える」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句は、さまざまな意味を持つ多義語です。

元々は剣道のことばで相手と真っすぐに向き合わないことを言い表したものでした。そして、現在ではそこから派生した「ことさらずれた対応をする」や「警戒して身構える」という意味もよく使われます。

みなさんも、この慣用句を使う場面に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「斜に構える」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「斜に構える(はすにかまえる)」という慣用句について解説する。

端的に言えば「斜に構える」の意味は「十分に身構える」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「斜に構える」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「斜に構える」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「斜に構える」の意味や使い方を見ていきましょう。

「斜に構える」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「斜に構える」には、次のような意味があります。

1.剣道で、刀を敵に対して斜(なな)めに構える。
2.物事に正面から接するのでなく、ことさらずれた対応の仕方をする。 
3.物事に対して十分に身構える。改まった態度をとる。 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「斜に構える」

まずは、「斜に構える」の正確な読み方をチェックしておきましょう。この慣用句は「はすにかまえる」と読みます。

もちろん、「しゃにかまえる」と読んでも間違いではありません。しかし、「はす」という読み方があることを知っておいた方が、誰かがこの慣用句を用いたときに困惑しなくて済むのではないでしょうか。

また、上記にあるように表す意味が大きく三つ存在することにも要注意です。元々は、ひとつめにあるように剣道において相手と正対せずに斜めに構えるという意味でした。

そして、そこから派生して二つめや三つめの意味が生まれます。中でも、二つめの「ことさらずれた対応をする」という意味には気をつけましょう。

なぜならば、これには「皮肉っぽい態度」や「不真面目な態度」も含まれるからです。相手の言動に対して、初めからまともに取り合おうとしていないわけですね。

「斜に構える」の使い方・例文

「斜に構える」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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