この記事では「神色自若」について解説する。

端的に言えば「神色自若」の意味は「平然と落ち着いていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「神色自若」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「神色自若」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「神色自若(しんしょくじじゃく)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「神色自若」の意味は?

「神色自若」には、次のような意味があります。

[ト・タル][文][形動タリ]重大事に直面しても少しも顔色を変えず、落ち着いているさま。
「モニカは―としてその前に進み、跪き」〈長与・青銅の基督〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「神色自若」

漢字を分解すると、「神色」は「精神と顔色」のこと。顔色のみを意味する場合もあります。「自若」は「大ごとに際しても落ち着いていて、平常であるさま」。合わせて「重大な場面でも顔色ひとつかえず、落ち着いている様子」を表します。

「神色」は、字だけ見て「神様」などを想像してしまうと、勘違いする可能性があるため注意しましょう。ここでは「心神(しんしん=精神)」という熟語のように、精神を指す言葉になっています。スピリチュアルな意味はありませんので、意味を選ばせる選択問題などで間違えないようにしてくださいね。

「自若」の「若」は、「わかい」ではなく「~のごとし(~のようである)」という意味があります。「自然のまま、自分のあるがままのごとし」で、「いつも通り、平常のとおり」ということになるのですね。少し難しいですが、試験では出題されやすい単語のため、合わせて押さえておきましょう。

「神色自若」の語源は?

次に「神色自若」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、中国晋王朝の歴史書『晋書』のなか、王戎(おうじゅう)という人物についての記述に見ることが出来ます。

王戎は優れた政治家・軍人で、幼いころからその才能の一片を発揮していました。檻の中にいる獰猛な獣を見物しにいった際も、その恐ろしげな様子に他の人は逃げ出したのに、王戎だけは逃げず、その様子が神色自若である、と表現されているのです。

獣は檻の中にいるため、恐れる必要はないと観察する力があったのでしょうか。何者にも恐れないというよりも、冷静な判断ができるというニュアンスが感じられます。背景を知ると、言葉に込められた意味がより理解できるのではないでしょうか。

\次のページで「「神色自若」の使い方・例文」を解説!/

「神色自若」の使い方・例文

「神色自若」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・普段から冷静さで上級生にも一目置かれている彼だが、文化祭のゲストに来たアイドルにも全く緊張せず、その神色自若っぷりには驚くばかりだ。

・授業中に大きな地震があったが、生徒会長は神色自若として動じず、みんなを適切に避難させていた。

・拳銃を突き付けられた若い警察官は、神色自若として犯人の話をよく聞くことで、誰も怪我することなくその場を収めることが出来た。

落ち着いている様子、動じないさま」というイメージが伝わりますでしょうか。「顔色も変えず、全く動じない」のですから、よほど落ち着いているということを表現したい時に使う言葉です。

冷静な判断を行えるというニュアンスも感じられるため、誰かに対して使う場合は基本的に誉め言葉になるでしょう。「彼が神色自若なせいで、悪い状況になってしまった」とは言いません。

語源の項でもご紹介したように、この言葉の裏側にあるのは胆力の強さというよりも、咄嗟の時でも慌てない冷静さや観察眼かもしれません。みなさんも「神色自若」な心が欲しいな、と思ったら、まず必要なのは落ち着いて状況を観察することかもしれませんよ。

「神色自若」の類義語は?違いは?

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「神色自若」の類義語には、「意気自如」「余裕綽々」などが考えられます。

「意気自如」「余裕綽々」

「意気自如(いきじじょ)」は「驚いたり恐れたりすることなく、平静でいるさま」。「如」も「ごとし」と読み、「自若」と同じ意味になります。「意気=気持ち」があるがまま、で「平常心である」ということですね。「ごとし」という言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、このように熟語などで用いられることがよくあります。押さえておきましょう。

「余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)」は「落ち着き払っていて、悠然としている様子」。言葉は聞いたことがある人も多いでしょうが、漢字はこのように書きます。記述させることはあまりないでしょうが、読めるようにはしましょう。

\次のページで「「神色自若」の対義語は?」を解説!/

「神色自若」の対義語は?

「神色自若」の対義語は「右往左往」周章狼狽」が挙げられます。

「右往左往」「周章狼狽」

「右往左往(うおうさおう)」は、「混乱している状態」を指す四字熟語。あっちへいったりこっちへ行ったり、困ってしまってウロウロしている様子ですね。「神色自若」とは正反対です。

「周章狼狽(しゅうしょうろうばい)」も「大いに慌てふためいていること」。「周章」も「狼狽」も「慌てたり、うろたえたりすること」を意味する熟語です。日常的には使わない言葉ですが、この四字熟語で覚えてしまいましょう。

「神色自若」の英訳は?

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「神色自若」の英語訳は「calm and collected」などが考えられます。

「calm and collected」

直訳すると「落ち着いていて、冷静である」。「神色自若」を「顔色が変わらず~」と漢字の意味そのままに英訳するよりも、それくらい落ち着いている、動じないと英訳してしまったほうが意味が通じるでしょう。

「冷静な」という意味の単語は他にも、「cool(やや口語的)」「composed(calmよりも堅く、つらい事態など動じない、という意味で使う)」「sober(判断や考え、表現が穏やかである)」などがあります。

英作文をする場合は、その人が「どのように神色自若なのか」を文脈から判断して単語を選ぶと、より意味が適切に表現できるでしょう。

Even when everyone was panicking, he was calm and collected.
皆がパニックになっている時でも、彼は神色自若としていた。

\次のページで「「神色自若」を使いこなそう」を解説!/

「神色自若」を使いこなそう

この記事では「神色自若」の意味・使い方・類語などを説明しました。

語源の項でご紹介したように、檻の虎を見ても冷静だったという姿を評価した言葉でした。恐れなかったというよりは、危険がないと判断ができたということですね。逆に言えば、危険だと判断したらすぐに逃げることができたでしょう。

本当の意味で落ち着いているというのは、そのような判断力なのかもしれません。試験の際も、まずは慌てず、冷静に問題に取り組みましょうね。

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【四字熟語】「神色自若」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「神色自若」について解説する。

端的に言えば「神色自若」の意味は「平然と落ち着いていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「神色自若」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「神色自若」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「神色自若(しんしょくじじゃく)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「神色自若」の意味は?

「神色自若」には、次のような意味があります。

[ト・タル][文][形動タリ]重大事に直面しても少しも顔色を変えず、落ち着いているさま。
「モニカは―としてその前に進み、跪き」〈長与・青銅の基督〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「神色自若」

漢字を分解すると、「神色」は「精神と顔色」のこと。顔色のみを意味する場合もあります。「自若」は「大ごとに際しても落ち着いていて、平常であるさま」。合わせて「重大な場面でも顔色ひとつかえず、落ち着いている様子」を表します。

「神色」は、字だけ見て「神様」などを想像してしまうと、勘違いする可能性があるため注意しましょう。ここでは「心神(しんしん=精神)」という熟語のように、精神を指す言葉になっています。スピリチュアルな意味はありませんので、意味を選ばせる選択問題などで間違えないようにしてくださいね。

「自若」の「若」は、「わかい」ではなく「~のごとし(~のようである)」という意味があります。「自然のまま、自分のあるがままのごとし」で、「いつも通り、平常のとおり」ということになるのですね。少し難しいですが、試験では出題されやすい単語のため、合わせて押さえておきましょう。

「神色自若」の語源は?

次に「神色自若」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、中国晋王朝の歴史書『晋書』のなか、王戎(おうじゅう)という人物についての記述に見ることが出来ます。

王戎は優れた政治家・軍人で、幼いころからその才能の一片を発揮していました。檻の中にいる獰猛な獣を見物しにいった際も、その恐ろしげな様子に他の人は逃げ出したのに、王戎だけは逃げず、その様子が神色自若である、と表現されているのです。

獣は檻の中にいるため、恐れる必要はないと観察する力があったのでしょうか。何者にも恐れないというよりも、冷静な判断ができるというニュアンスが感じられます。背景を知ると、言葉に込められた意味がより理解できるのではないでしょうか。

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