化学を学ぶ時に必ず出てくるモル濃度ですが、得意な人は意外と少ないよな。

実はモル濃度は理解しやすく、順番に一つ一つ考えていけば、必ず自信をもって解くことができるようになるはずなんです。

今回は「濃度」と「モル」、そしてモル濃度を求める「計算」について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.濃度ってなんだろう?

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「濃度」って日常生活でも使われる言葉だと思います。コーヒーが薄かったり、お味噌汁が濃かったり、濃度の濃い薄いを感じる場面は意外と多いですよね。

そんな身近な濃度でも、計算問題を解かなければならなくなると、途端に訳が分からなくなり、化学って苦手と拒否反応を示す方が実は少なくありません。

それはとてももったいない事だと思います。濃度は順序だてて考えていけば、必ず簡単な計算で答えを導くことができるからです。

ではまず、濃度とは何なのか?から紐解いていきましょう。

1-1.濃度を理解する

では、濃度とは何かを言葉で説明してみましょう。

例えば、ここに食塩を水に溶かした食塩水があるとします。大雑把にいうと、この食塩水には食塩がどのくらい溶けているのか?を示すものが濃度です。

これを化学の言葉で表現すると、この溶液には溶質がどのくらい溶けているのか?というふうに言い換えることができます。

ここで「溶質」「溶媒」「溶液」という言葉を覚えておきましょう。溶かされている物質が溶質溶かしている物質が溶媒溶質と溶媒全体のことを溶液といいます。食塩水で例えると、溶質とは食塩、溶媒とは水、溶液とは食塩水のことです。

濃度を表す単位にはいくつか種類があり、それぞれ何を何で割るのかが違います。では、小中学校で一番最初に学習する濃度である、質量パーセント濃度から解説していきましょう。

1-2.質量パーセント濃度

1-2.質量パーセント濃度

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理科の授業で「食塩何グラムを水何グラムに溶かしました。濃度を計算して求めましょう。」という問題を解いたことがあると思います。この時の濃度というのが質量パーセント濃度です。

質量パーセント濃度(%)= 溶質の質量(g)÷ 溶液(溶質+溶媒)の質量(g)× 100

という計算式で導かれ、溶液中に溶質が何パーセント含まれているかを表しています。食塩水を例にとると、食塩水中に食塩が何パーセント含まれているかを示す基本的な濃度です。

1-3.モル濃度(体積モル濃度)

1-3.モル濃度(体積モル濃度)

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化学で一番よく使われるのがモル濃度です。モル濃度は溶液1リットル中に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度で、計算式は

モル濃度(mol/L)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶液の体積(L)

で表します。また溶液の体積は次のように変換することもできるのです。

溶液の体積(L)= 溶液の体積(mL)÷ 1000

モル濃度を求めれば、水溶液の体積を量るだけでその中に溶けている溶質の物質量(mol)を簡単に求めることができるので、大変便利な濃度と言えます。

1-4.質量モル濃度

1-4.質量モル濃度

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モル濃度と名前はよく似ていますが、全然違う濃度なので注意が必要です。

実は使う機会の少ない質量モル濃度ですが、沸点上昇や凝固点降下の分野を勉強する際には重要ですし、テストなどで問われることも多いので覚えておきましょう。

質量モル濃度は溶媒1キログラム中(分母は溶媒なので注意が必要です)に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度になります。計算式は

質量モル濃度(mol/kg)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の体積(kg)

です。

\次のページで「2.モルって何?モルを計算で出すには?」を解説!/

2.モルって何?モルを計算で出すには?

ここまでで、モル濃度が溶液 1 L 中に溶質が何モル入っているかを示す濃度だということは分かりました。

しかし、モルって何?モルを導き出さなければ、モル濃度も計算で出すことができないではないか。という疑問を持たれたかもしれません。

モルについてすでに理解されている方も、おさらいをかねて、今度はモルについてお話をしていきましょう。

2-1.モルとは何か?

化学では、原子や分子やイオンなど、目には見えないとても小さい粒子同士をくっつけたり離したりすることを考えます。ですから、粒子の「個数」がとても重要です。

しかし粒子はとても小さいので、おはじきみたいに目で見て数えたり、天秤で測ったりできません。そこで 12C 「12g」の中に含まれる 12C  原子の個数を基準とした単位を作ることにしました。

原子量の基準である12C 12 g の中には 12C 原子が「6.02×1023」個含まれています。この「6.02×1023」をアボガドロ数といい、6.02×1023 個の粒子の集まりを 1 モル(mol)と呼ぶことに決めたのです。

つまりモルとは粒子の量を表しているということになります。

そして、このモル(mol)を単位として表した粒子の量のことを物質量というのです。物質量はいくらでしょう?と聞かれたときは何モルでしょう?と同じことだという事を覚えておきましょう。

2-2.モルを計算で導く

モルが粒子の個数を表していることは分かりました。次にモルを計算で導くことを考えます。

物質は質量(g)で扱うことが多いので、モルとグラムがどのような関係にあるかを次にお話しましょう。

物質 1 モル当たりの質量(g)をモル質量と言います。モル質量は、原子量や分子量に g / mol をつけて表すのです。

例えば、炭素(C)の原子量は 12 と決まっています。このままの数値が 1 モルあたりの質量なので、炭素 1 モルは 12 g です。この事をモル質量で表すと、炭素原子のモル質量は 12 g / mol となります。

水(H2O)の分子量は 18 です。このことから水分子 1 モルは 18 g とわかります。これより、水分子のモル質量は 18 g / mol です。

以上のことを計算式で表すと、物質量(mol)=質量(g)÷ モル質量( g / mol )となります。

2-3.グラムとモルの変換の練習問題

モルを計算で算出できるようになるために、練習問題を解いてみましょう。

問題 1. 酢酸(CH3COOH )36 g の物質量は何モルでしょう? ただし、原子量 H = 1.0  O = 16  C = 12 とします。

まず酢酸の分子量を計算しましょう。

CH3COOH  の分子量は 12 × 2 + 1.0 × 4 + 16 × 2 = 60

なので、酢酸分子 1 mol は 60 g だとわかります。

このことをモル質量で表すと、CH3COOH のモル質量は 60 g / mol です。

では  CH3COOH 36 g は何モルでしょう?

物質量( mol )= 36( g )÷ 60( g / mol )

答えは 0.6 mol になります。

問題 2.  塩化ナトリウム( NaCl )0.8 mol は何グラムでしょう? ただし、原子量 Na = 23  Cl = 35.5  とします。

まず塩化ナトリウムの分子量を計算しましょう。

NaCl の分子量は 23 + 35.5 = 58.5

なので塩化ナトリウムのモル質量は 58.5 g / mol です。

では NaCl  0.8mol は何グラムでしょう?

NaCl は 1 mol で 58.5 g なので 0.8 mol では何グラムかを算出しましょう。

58.5 ( g / mol ) × 0.8 ( mol ) 

答えは  46.8 g になります。

3.モル濃度について理解を深める練習問題

モルを計算で求められるようになったので、次にモル濃度を計算で求めてみましょう。

モル濃度は 1-3. で学んだ通り、モル濃度( mol / L )= 溶質の物質量( mol )÷ 溶液の体積( L )で導きます。

また溶液の体積は、次のように変換することもできることも使って計算しましょう。

溶液の体積( L )= 溶液の体積( mL )÷ 1000

3-1.溶質の質量と水溶液の体積からモル濃度を算出する

まず、一般的なモル濃度を算出する問題から練習しましょう。

問題 水酸化カリウム( KOH )14 g を水に溶かして 400 mL の水溶液を作りました。この水溶液のモル濃度は何 mol / L でしょう? ただし、原子量 H = 1.0  O = 16  K = 39 とします。

まず、KOH 14 g が何モルなのかを求めます。水酸化カリウムの分子量は 39 + 16 + 1.0 = 56

これより、KOH は 1mol で 56 g なので、 14 g では何モルかを算出しましょう。

14 ÷ 56 = 0.25 mol

次に水溶液は何リットルなのかを求めます

1 L = 1000 mL なので、400 mL = 0.4 Lです。

最後にモル濃度を求めましょう

モル濃度(mol / L)= 溶質の物質量( mol )÷ 溶液の体積( L )なので

0.25( mol )÷ 0.4( L )

答えは 0.625 mol / L となります。

3-2.モル濃度から水溶液中の溶質の質量を算出する

次にモル濃度が問題に与えられていて、そこから溶質の質量を算出する問題を解いてみましょう。

\次のページで「「モル濃度」とは溶液の体積を知るだけで、その中に含まれる溶質のモルがわかる便利な濃度」を解説!/

問題 0.60 mol / L の水酸化ナトリウム( NaOH )水溶液 200 mL 中に含まれる水酸化ナトリウムの質量は何 g でしょう? ただし、原子量 H = 1.0  O = 16  Na = 23 とします。

まず、問題文にある水溶液 200 mL 中に溶けている水酸化ナトリウムの物質量( mol )を求めましょう

200 mL = 0.2 L より

0.60 mol / L 水酸化ナトリウム水溶液 0.2 L 中に溶けている、水酸化ナトリウムの物質量は

0.60( mol / L ) × 0.2( L )= 0.12 mol

次に NaOH の分子量は 23 + 16 + 1.0 = 40 なので、NaOH は 40 g / mol です。

最後に、水酸化ナトリウム 0.12 mol は何グラムかというと

0.12( mol )× 40( g / mol )

答えは 4.8 g になります。

「モル濃度」とは溶液の体積を知るだけで、その中に含まれる溶質のモルがわかる便利な濃度

濃度とは溶液(または溶媒)中にどのくらい溶質が含まれているかを示す指標で、主に質量パーセント濃度やモル濃度、質量モル濃度があります。

モル濃度は溶液(溶質 + 溶媒)1 L 中に含まれる溶質の物質量( mol )を示す濃度であり、モル濃度( mol / L )= 溶質の物質量( mol )÷ 溶液の体積( L )です。

モル濃度を求めるにはモルを計算で求める必要があります。モルとは粒子の数のことで、物質を構成する分子や原子の原子量をもとに、1 モルが何グラムであるかを計算できるのです。

モル濃度についての計算問題を解くには、まずモル濃度が溶液 1 L 中の溶質の物質量( mol )であることを覚えましょう。

そしてすぐに答えを出す計算をするのではなく、必要な計算を順番に書いていき、だんだん答えに近づいていくことで、複雑な問題も間違えずに解くことができるようになります。

" /> 3分で簡単「モル濃度」!溶液1L中に溶質が何モル溶けている?元研究員がわかりやすく解説 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単「モル濃度」!溶液1L中に溶質が何モル溶けている?元研究員がわかりやすく解説

化学を学ぶ時に必ず出てくるモル濃度ですが、得意な人は意外と少ないよな。

実はモル濃度は理解しやすく、順番に一つ一つ考えていけば、必ず自信をもって解くことができるようになるはずなんです。

今回は「濃度」と「モル」、そしてモル濃度を求める「計算」について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.濃度ってなんだろう?

image by iStockphoto

「濃度」って日常生活でも使われる言葉だと思います。コーヒーが薄かったり、お味噌汁が濃かったり、濃度の濃い薄いを感じる場面は意外と多いですよね。

そんな身近な濃度でも、計算問題を解かなければならなくなると、途端に訳が分からなくなり、化学って苦手と拒否反応を示す方が実は少なくありません。

それはとてももったいない事だと思います。濃度は順序だてて考えていけば、必ず簡単な計算で答えを導くことができるからです。

ではまず、濃度とは何なのか?から紐解いていきましょう。

1-1.濃度を理解する

では、濃度とは何かを言葉で説明してみましょう。

例えば、ここに食塩を水に溶かした食塩水があるとします。大雑把にいうと、この食塩水には食塩がどのくらい溶けているのか?を示すものが濃度です。

これを化学の言葉で表現すると、この溶液には溶質がどのくらい溶けているのか?というふうに言い換えることができます。

ここで「溶質」「溶媒」「溶液」という言葉を覚えておきましょう。溶かされている物質が溶質溶かしている物質が溶媒溶質と溶媒全体のことを溶液といいます。食塩水で例えると、溶質とは食塩、溶媒とは水、溶液とは食塩水のことです。

濃度を表す単位にはいくつか種類があり、それぞれ何を何で割るのかが違います。では、小中学校で一番最初に学習する濃度である、質量パーセント濃度から解説していきましょう。

1-2.質量パーセント濃度

1-2.質量パーセント濃度

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理科の授業で「食塩何グラムを水何グラムに溶かしました。濃度を計算して求めましょう。」という問題を解いたことがあると思います。この時の濃度というのが質量パーセント濃度です。

質量パーセント濃度(%)= 溶質の質量(g)÷ 溶液(溶質+溶媒)の質量(g)× 100

という計算式で導かれ、溶液中に溶質が何パーセント含まれているかを表しています。食塩水を例にとると、食塩水中に食塩が何パーセント含まれているかを示す基本的な濃度です。

1-3.モル濃度(体積モル濃度)

1-3.モル濃度(体積モル濃度)

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化学で一番よく使われるのがモル濃度です。モル濃度は溶液1リットル中に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度で、計算式は

モル濃度(mol/L)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶液の体積(L)

で表します。また溶液の体積は次のように変換することもできるのです。

溶液の体積(L)= 溶液の体積(mL)÷ 1000

モル濃度を求めれば、水溶液の体積を量るだけでその中に溶けている溶質の物質量(mol)を簡単に求めることができるので、大変便利な濃度と言えます。

1-4.質量モル濃度

1-4.質量モル濃度

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モル濃度と名前はよく似ていますが、全然違う濃度なので注意が必要です。

実は使う機会の少ない質量モル濃度ですが、沸点上昇や凝固点降下の分野を勉強する際には重要ですし、テストなどで問われることも多いので覚えておきましょう。

質量モル濃度は溶媒1キログラム中(分母は溶媒なので注意が必要です)に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度になります。計算式は

質量モル濃度(mol/kg)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の体積(kg)

です。

\次のページで「2.モルって何?モルを計算で出すには?」を解説!/

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