この記事では「胡麻を擂る」について解説する。

端的に言えば胡麻を擂るの意味は「他人に気に入られるように振舞って、自分の利益を図る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「胡麻を擂る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「胡麻を擂る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「胡麻を擂る(ごまをする)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「胡麻を擂る」の意味は?

「胡麻を擂る」には、次のような意味があります。

他人にへつらって自分の利益を図る。「上役に―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「胡麻を擂る」

「胡麻を擂る」とは、他人に気に入られるように振る舞い、自分の利益を確保しようとすることです。たとえば、お世辞を言って相手を良い気分にさせることは「胡麻を擂る」の具体的な行動の一つですね。また辞書には「へつらって」とありますが、「へつらう」とは相手に好かれ・気に入られるよう行動することをいいます。

※「胡麻擂り」「ごますり」と表記されることも一般的です。

「胡麻を擂る」の語源は?

次に「胡麻を擂る」の語源・由来について確認しましょう。

諸説ありますが、江戸時代末期より「胡麻を擂る」が慣用句として広まったと言われています。なぜなら、当時の文化・風俗情報を記した『皇都午睡(こうとごすい/みやこのひるね)』の中で「胡麻を擂ることが流行語になった」との記述があるためです。以下で簡単にその内容をご紹介しますね。

「追従する(※)をおべっかといひしが、近世、胡麻を擂ると流行詞(はやりことば)に変名しけり」
訳:追従することを機嫌取りと言ったが、近頃は胡麻を擂ることが流行り言葉になった。


※「追従」とは相手に付き添うこと、言う通りに行動すること

しかし、一体なぜ「胡麻を擂る」が流行語・慣用句になったのでしょうか。その理由は、まさに胡麻をすり鉢で潰していく過程にあります。

煎った胡麻をすり鉢で潰すと、途中で胡麻があちこちに飛び散って様々な物にくっつく様子から、何にでも付着する胡麻は「誰にでもへつらう存在」であると考えられました。胡麻は擂るとその粒が砕かれ、油が滲み出てなめらかになります。この油分が原因で、色々なところにこびりついたり、すり鉢の溝にべったり入り込むわけです。

ちなみに、商人たちが相手に媚びを売ろうと手を揉む仕草が、すり鉢で胡麻を擂る姿に似ており、語源に関係しているのではという説も存在します。

「胡麻を擂る」の使い方・例文

「胡麻を擂る」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.若手社員がプロジェクトのリーダーを任されたことに周囲は驚き、上司に胡麻を擂ったからではないかと噂している。

2.彼女は胡麻を擂るのが上手い。毎日適切なタイミングで相手を褒めたり、持ち上げたりしている。

3.新学期以降、生徒たちは先生に必死で胡麻を擂ろうとしたものの、そのお世辞が本心から出た言葉ではないと見破られたようだ。

「胡麻を擂る」ことの目的は、自らの利益や安全を確保することにあります。そのために相手の期待にこたえたり、お世辞を言って気に入られようとするのです。

世渡り上手などというように、学校や会社などで上手く評価されるために「胡麻を擂る」人は少なくないでしょう。ただし根底には自分のためという思惑があるので、相手に良いイメージを与える言葉ではありません。

「胡麻を擂る」の類義語は?違いは?

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それではここで「胡麻を擂る」の類義語を確認しましょう。

「太鼓持ちをする」

「太鼓持ちをする」とは、人に媚びを売って気に入られようとすることです。本来「太鼓持ち」とは、宴会で芸を披露して場を盛り上げようとする男性を表す言葉でした。

\次のページで「「顔色をうかがう」「顔色を窺う」」を解説!/

「顔色をうかがう」「顔色を窺う」

「顔色(かおいろ)をうかがう」「顔色(がんしょく)を窺う」はどちらも同じ意味で、相手の表情から心の動き・本音を知ろうとすることをいいます。そもそも「顔色」とは顔の色・艶のことを表しますが、「顔色をうかがう・窺う」の顔色とは、内面の感情が現れた顔・表情のことです。

※「うかがう」「窺う」との組み合わせによって、「顔色」の読み方が厳密には異なりますので注意しましょう。

「色目を使う」

「色目を使う」とは、相手の気を引くような目つき・そぶりをすることです。好意を抱く相手に対して、下心をもって媚びるような行動をいいます。ちなみに「色目」とは、色気のある目つき・流し目のことです。

「おもねる」

「おもねる」とは、相手に気に入られるように振る舞って機嫌をとることです。「へつらう」と非常に近いニュアンスをもっています。

「おべっか」

「おべっか」とは、相手の機嫌をとるためにお世辞を言うこと・お世辞のことです。特に目上の相手に対して使われ、本心ではない嘘の言葉を並べることをいい、「おべっかを使う」などの形で使われますよ。

※「おべんちゃら」ともいいます。

「機嫌をとる」

「機嫌をとる」とは、相手の気分を慰め、和らげようとすることを表す慣用句です。具体的には、相手の好みに合わせた言動をとることをいいます。

「胡麻を擂る」の英訳は?

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最後に「胡麻を擂る」の英語表現を確認しましょう。

「Apple polish」「Apple polisher」

Apple polish とは動詞で「胡麻を擂る」ことを表す英語表現です。Apple polisher は名詞で「胡麻を擂る人」を表します。

一体なぜ apple が使われているのでしょうか。実は、先生に気に入られようと、ある生徒が綺麗に磨いたリンゴを持っていったことが由来なのだそうです。

\次のページで「「suck up to」」を解説!/

「suck up to」

suck up to は「〜に胡麻を擂る」ことを意味します。to 以下で、胡麻を擂る相手を示すことができますよ。

「butter up」

butter up とは「媚びを売る・胡麻を擂る」ことです。butter とはパンに塗るバターのことですが、ここでは「お世辞」を表しています。「胡麻を擂る」同様、自分の利益のために相手をおだてるといったニュアンスがありますよ。

「胡麻を擂る」を使いこなそう

この記事では「胡麻を擂る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「胡麻を擂る」に関して
他人に気に入られるように振る舞い、自分の利益を得ること
・語源は諸説あるが、すり鉢で擂られた胡麻があちこちに貼り付いた様子が、まるでへつらうようであったことが関係している
類義語には「太鼓持ちをする」「顔色をうかがう」「色目を使う」などがある
ことが確認できましたね。

類義語や英語表現もいくつかご紹介しましたが、ぜひ実際に使って記憶に定着させましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「胡麻を擂る」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「胡麻を擂る」について解説する。

端的に言えば胡麻を擂るの意味は「他人に気に入られるように振舞って、自分の利益を図る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「胡麻を擂る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「胡麻を擂る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「胡麻を擂る(ごまをする)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「胡麻を擂る」の意味は?

「胡麻を擂る」には、次のような意味があります。

他人にへつらって自分の利益を図る。「上役に―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「胡麻を擂る」

「胡麻を擂る」とは、他人に気に入られるように振る舞い、自分の利益を確保しようとすることです。たとえば、お世辞を言って相手を良い気分にさせることは「胡麻を擂る」の具体的な行動の一つですね。また辞書には「へつらって」とありますが、「へつらう」とは相手に好かれ・気に入られるよう行動することをいいます。

※「胡麻擂り」「ごますり」と表記されることも一般的です。

「胡麻を擂る」の語源は?

次に「胡麻を擂る」の語源・由来について確認しましょう。

諸説ありますが、江戸時代末期より「胡麻を擂る」が慣用句として広まったと言われています。なぜなら、当時の文化・風俗情報を記した『皇都午睡(こうとごすい/みやこのひるね)』の中で「胡麻を擂ることが流行語になった」との記述があるためです。以下で簡単にその内容をご紹介しますね。

「追従する(※)をおべっかといひしが、近世、胡麻を擂ると流行詞(はやりことば)に変名しけり」
訳:追従することを機嫌取りと言ったが、近頃は胡麻を擂ることが流行り言葉になった。


※「追従」とは相手に付き添うこと、言う通りに行動すること

しかし、一体なぜ「胡麻を擂る」が流行語・慣用句になったのでしょうか。その理由は、まさに胡麻をすり鉢で潰していく過程にあります。

煎った胡麻をすり鉢で潰すと、途中で胡麻があちこちに飛び散って様々な物にくっつく様子から、何にでも付着する胡麻は「誰にでもへつらう存在」であると考えられました。胡麻は擂るとその粒が砕かれ、油が滲み出てなめらかになります。この油分が原因で、色々なところにこびりついたり、すり鉢の溝にべったり入り込むわけです。

ちなみに、商人たちが相手に媚びを売ろうと手を揉む仕草が、すり鉢で胡麻を擂る姿に似ており、語源に関係しているのではという説も存在します。

「胡麻を擂る」の使い方・例文

「胡麻を擂る」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.若手社員がプロジェクトのリーダーを任されたことに周囲は驚き、上司に胡麻を擂ったからではないかと噂している。

2.彼女は胡麻を擂るのが上手い。毎日適切なタイミングで相手を褒めたり、持ち上げたりしている。

3.新学期以降、生徒たちは先生に必死で胡麻を擂ろうとしたものの、そのお世辞が本心から出た言葉ではないと見破られたようだ。

「胡麻を擂る」ことの目的は、自らの利益や安全を確保することにあります。そのために相手の期待にこたえたり、お世辞を言って気に入られようとするのです。

世渡り上手などというように、学校や会社などで上手く評価されるために「胡麻を擂る」人は少なくないでしょう。ただし根底には自分のためという思惑があるので、相手に良いイメージを与える言葉ではありません。

「胡麻を擂る」の類義語は?違いは?

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それではここで「胡麻を擂る」の類義語を確認しましょう。

「太鼓持ちをする」

「太鼓持ちをする」とは、人に媚びを売って気に入られようとすることです。本来「太鼓持ち」とは、宴会で芸を披露して場を盛り上げようとする男性を表す言葉でした。

\次のページで「「顔色をうかがう」「顔色を窺う」」を解説!/

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