この記事では「固唾を呑む」について解説する。

端的に言えば固唾を呑むの意味は「物事の成り行きが気になって緊張している」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「固唾を呑む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「固唾を呑む」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 53909287

それでは早速「固唾を呑む(かたずをのむ)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「固唾を呑む」の意味は?

「固唾を呑む」には、次のような意味があります。

事の成り行きが気がかりで、緊張している。
「―・んで見守る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「固唾を呑む」

「固唾を呑む」とは、物事の成り行きや動向を緊張しながら見守ることです。

ただぼんやりと傍観するのではなく、心から心配したり、手に汗を握るような緊張感をもって注目することをいいます。たとえばスポーツの試合などで、次の1点を先取すれば勝敗が決まるような場面を思い浮かべてみましょう。とても大切な状況なので、その場の空気は緊張感に包まれ、チームも応援席も全員が次の一挙一動を集中して見守っているはずです。上手くいってほしいと願う気持ち・期待感、あるいは祈るような心情があるかもしれませんね。

その他にも、たとえばホラー映画の鑑賞中に、次の展開がどうなるかを緊張しながら観ている場合に「固唾を呑む」「固唾を飲んで見守る」ということができます。怖いけれど、その先が気になって目が離せない、そんな状態ですね。このように目が離せない重要な場面や緊迫した状況において、その動向や結果を見守ることを「固唾を呑む」というのです。

※「固唾(かたず)」は(かたづ)と表記されることもあります。

「固唾を呑む」の語源は?

次に「固唾を呑む」の語源を確認しておきましょう。

「固唾」
・飲み込む際に音がするような固い唾
・緊張している際に口内にたまる唾液

「呑む」
・普段は飲み込まないものを丸ごと飲み込むこと
・抽象的なものを飲み込む場合の比喩として使われる

簡単にそれぞれの言葉の意味を確認しましょう。

「固唾」とは、緊張状態において飲み込む唾のことをいいます。しかし一体なぜ「固い」のでしょうか?それは、極限まで緊張している時には呼吸の間隔が通常より長くなったり、抑えられたものになるためです。普段私たちは無意識に呼吸をし、唾を飲み込んでいますよね。しかし緊張すると視覚や聴覚などに意識が集中し、知らず知らずのうちに呼吸がおざなりとなり、唾を飲み込むことが後回しになってしまいます。結果として口内にたまった唾は、「ごくり」と音が立つような量(固さ)となることから「固唾」と呼ばれるのです。

「呑む」は「飲む」とほとんど類似の動詞ですが、ここではたまった固唾を丸ごと呑み込むというイメージを表していますよ。本来は飲食しないものに対しても比喩的に使われ、たとえば「要求を呑む」「条件を呑む」「雰囲気に呑まれる」などが挙げられます。

「固唾を呑む」の意味はシンプルですが、言葉のもつイメージも一緒に覚えておきましょう。

「固唾を呑む」の使い方・例文

「固唾を呑む」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.誰もが固唾を呑んで決勝戦を見守った。

2.映画の中で、突然武器をもった人物が現れて緊迫した瞬間に、思わず多くの観客が固唾を呑んだ。

3.警察が強盗犯の説得にあたる中、現場の空気は張り詰め、誰もが固唾を呑んだ。

「固唾を呑む」はスポーツの試合を見守る時や、映画などの展開を注視する状況など、さまざまな場面で使うことができます。ポイントは、息をとめるほどに緊張・集中・注目していること、そして次の動向を見守っていることです。漫画や映画作品においてもよく見られる行動といえます。ぜひ身の回りにある「固唾を呑む」瞬間を探してみてください。

「固唾を呑む」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 5974186

それではここで「固唾を呑む」の類義語を確認しましょう。

「息を呑む」

「息を呑む」とは、恐怖や驚きによって一瞬息を止めることです。たとえば、あまりにも美しい絵画や景色を見た時などに「息を呑む」といいます。

\次のページで「「息を凝らす」」を解説!/

「息を凝らす」

「息を凝(こ)らす」とは、呼吸をとめて・抑えてじっとしていることです。「固唾を呑む」と同様の意味をもっています。

「息を詰める」

「息を詰める」とは、先にご紹介した「息を凝らす」の同義語です。試合の成り行きや物事の結果などに対し、息をとめるほどに集中することをいいます。

「息を殺す」

「息を殺す」とは、呼吸の音をさせずにじっとしていること・気配を消すことをいいます。もしも敵に気付かれれば殺されてしまうかもしれない、絶対に見つかってはいけない、そんな高い緊張感を伴う慣用句です。

「固唾を呑む」の対義語は?

続いて「固唾を呑む」の対義語を確認しましょう。

「息を吐く」

「息を吐(つ)く」とは、長くためていた息を吐き出すこと・大きく呼吸することをいいます。

たとえばずっと我慢していた苦しみや緊張状態から解放された時に、安心して大きく息を吐き出すことが「息を吐く」です。「固唾を呑む」が緊張状態における行動であるのに対し、「息を吐く」は緊張から解放された安堵感によるもの。この点において意味が対であるといえるでしょう。

※読み方に注意しましょう。

「固唾を呑む」の英訳は?

image by PIXTA / 38227702

最後に「固唾を呑む」の英語表現についてです。日本語では緊張状態において呼吸や唾を呑むことにフォーカスしていましたが、英語ではどのように表現するのでしょうか。

\次のページで「「hold(catch) one's breath」」を解説!/

「hold(catch) one's breath」

hold(catch) one's breath は「固唾を呑む・息を殺す」ことです。「唾を呑む」というよりも「息を止める」といったニュアンスですが、「固唾を呑む」時のような緊迫感のある状況で使われます。hold は catch に置き換えることも可能です。

When many zombies came out in the movie, I held my breath.
映画の中でたくさんのゾンビが現れた時、私は固唾を飲んだ。

She was awaiting the results, holding her breath.
彼女は固唾を呑んで結果を待っていた。

「strain one’s attention」

strain one’s attention とは、「極限まで注意を払う」ことを意味します。動詞 strain は「体力や神経などを限界まで酷使する」「ぴんと引っ張る」ことであり、ここでは最大限に attention(注意・関心)を向けている状態です。

「breathlessly」

breathlessly は「息を切らして・緊迫して」という意味の形容詞です。呼吸にまつわる動作が関係しており、「固唾を呑む」と近い意味合いをもっています。

「with bated breath」

with bated breath は「固唾を呑んで、はらはらしながら」という状態を表します。文章に付け加えると、緊張している様子を伝えることができますよ。

「固唾を呑む」を使いこなそう

この記事では「固唾を呑む」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「固唾を呑む」に関して
物事の動向や結果を緊張しながら見守ることを表す
「固唾」とは緊張のあまり口内にたまった唾のこと
同義語には「息を凝らす」がある
ことが確認できましたね。

また、英語表現についてもご紹介しました。実際に会話や文章の中で触れる機会のある表現ですので、復習して正しい使い方をマスターしましょう。

" /> 【慣用句】「固唾を呑む」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「固唾を呑む」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「固唾を呑む」について解説する。

端的に言えば固唾を呑むの意味は「物事の成り行きが気になって緊張している」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「固唾を呑む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「固唾を呑む」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 53909287

それでは早速「固唾を呑む(かたずをのむ)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「固唾を呑む」の意味は?

「固唾を呑む」には、次のような意味があります。

事の成り行きが気がかりで、緊張している。
「―・んで見守る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「固唾を呑む」

「固唾を呑む」とは、物事の成り行きや動向を緊張しながら見守ることです。

ただぼんやりと傍観するのではなく、心から心配したり、手に汗を握るような緊張感をもって注目することをいいます。たとえばスポーツの試合などで、次の1点を先取すれば勝敗が決まるような場面を思い浮かべてみましょう。とても大切な状況なので、その場の空気は緊張感に包まれ、チームも応援席も全員が次の一挙一動を集中して見守っているはずです。上手くいってほしいと願う気持ち・期待感、あるいは祈るような心情があるかもしれませんね。

その他にも、たとえばホラー映画の鑑賞中に、次の展開がどうなるかを緊張しながら観ている場合に「固唾を呑む」「固唾を飲んで見守る」ということができます。怖いけれど、その先が気になって目が離せない、そんな状態ですね。このように目が離せない重要な場面や緊迫した状況において、その動向や結果を見守ることを「固唾を呑む」というのです。

※「固唾(かたず)」は(かたづ)と表記されることもあります。

「固唾を呑む」の語源は?

次に「固唾を呑む」の語源を確認しておきましょう。

「固唾」
・飲み込む際に音がするような固い唾
・緊張している際に口内にたまる唾液

「呑む」
・普段は飲み込まないものを丸ごと飲み込むこと
・抽象的なものを飲み込む場合の比喩として使われる

簡単にそれぞれの言葉の意味を確認しましょう。

「固唾」とは、緊張状態において飲み込む唾のことをいいます。しかし一体なぜ「固い」のでしょうか?それは、極限まで緊張している時には呼吸の間隔が通常より長くなったり、抑えられたものになるためです。普段私たちは無意識に呼吸をし、唾を飲み込んでいますよね。しかし緊張すると視覚や聴覚などに意識が集中し、知らず知らずのうちに呼吸がおざなりとなり、唾を飲み込むことが後回しになってしまいます。結果として口内にたまった唾は、「ごくり」と音が立つような量(固さ)となることから「固唾」と呼ばれるのです。

「呑む」は「飲む」とほとんど類似の動詞ですが、ここではたまった固唾を丸ごと呑み込むというイメージを表していますよ。本来は飲食しないものに対しても比喩的に使われ、たとえば「要求を呑む」「条件を呑む」「雰囲気に呑まれる」などが挙げられます。

「固唾を呑む」の意味はシンプルですが、言葉のもつイメージも一緒に覚えておきましょう。

「固唾を呑む」の使い方・例文

「固唾を呑む」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.誰もが固唾を呑んで決勝戦を見守った。

2.映画の中で、突然武器をもった人物が現れて緊迫した瞬間に、思わず多くの観客が固唾を呑んだ。

3.警察が強盗犯の説得にあたる中、現場の空気は張り詰め、誰もが固唾を呑んだ。

「固唾を呑む」はスポーツの試合を見守る時や、映画などの展開を注視する状況など、さまざまな場面で使うことができます。ポイントは、息をとめるほどに緊張・集中・注目していること、そして次の動向を見守っていることです。漫画や映画作品においてもよく見られる行動といえます。ぜひ身の回りにある「固唾を呑む」瞬間を探してみてください。

「固唾を呑む」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 5974186

それではここで「固唾を呑む」の類義語を確認しましょう。

「息を呑む」

「息を呑む」とは、恐怖や驚きによって一瞬息を止めることです。たとえば、あまりにも美しい絵画や景色を見た時などに「息を呑む」といいます。

\次のページで「「息を凝らす」」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: