端的に言えば固唾を呑むの意味は「物事の成り行きが気になって緊張している」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「固唾を呑む」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ナガタ ナミキ
外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。
「固唾を呑む」の意味は?
「固唾を呑む」には、次のような意味があります。
事の成り行きが気がかりで、緊張している。
「―・んで見守る」
出典:デジタル大辞泉(小学館)「固唾を呑む」
「固唾を呑む」とは、物事の成り行きや動向を緊張しながら見守ることです。
ただぼんやりと傍観するのではなく、心から心配したり、手に汗を握るような緊張感をもって注目することをいいます。たとえばスポーツの試合などで、次の1点を先取すれば勝敗が決まるような場面を思い浮かべてみましょう。とても大切な状況なので、その場の空気は緊張感に包まれ、チームも応援席も全員が次の一挙一動を集中して見守っているはずです。上手くいってほしいと願う気持ち・期待感、あるいは祈るような心情があるかもしれませんね。
その他にも、たとえばホラー映画の鑑賞中に、次の展開がどうなるかを緊張しながら観ている場合に「固唾を呑む」「固唾を飲んで見守る」ということができます。怖いけれど、その先が気になって目が離せない、そんな状態ですね。このように目が離せない重要な場面や緊迫した状況において、その動向や結果を見守ることを「固唾を呑む」というのです。
※「固唾(かたず)」は(かたづ)と表記されることもあります。
「固唾を呑む」の語源は?
次に「固唾を呑む」の語源を確認しておきましょう。
「固唾」
・飲み込む際に音がするような固い唾
・緊張している際に口内にたまる唾液
「呑む」
・普段は飲み込まないものを丸ごと飲み込むこと
・抽象的なものを飲み込む場合の比喩として使われる
簡単にそれぞれの言葉の意味を確認しましょう。
「固唾」とは、緊張状態において飲み込む唾のことをいいます。しかし一体なぜ「固い」のでしょうか?それは、極限まで緊張している時には呼吸の間隔が通常より長くなったり、抑えられたものになるためです。普段私たちは無意識に呼吸をし、唾を飲み込んでいますよね。しかし緊張すると視覚や聴覚などに意識が集中し、知らず知らずのうちに呼吸がおざなりとなり、唾を飲み込むことが後回しになってしまいます。結果として口内にたまった唾は、「ごくり」と音が立つような量(固さ)となることから「固唾」と呼ばれるのです。
「呑む」は「飲む」とほとんど類似の動詞ですが、ここではたまった固唾を丸ごと呑み込むというイメージを表していますよ。本来は飲食しないものに対しても比喩的に使われ、たとえば「要求を呑む」「条件を呑む」「雰囲気に呑まれる」などが挙げられます。
「固唾を呑む」の意味はシンプルですが、言葉のもつイメージも一緒に覚えておきましょう。
「固唾を呑む」の使い方・例文
「固唾を呑む」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.誰もが固唾を呑んで決勝戦を見守った。
2.映画の中で、突然武器をもった人物が現れて緊迫した瞬間に、思わず多くの観客が固唾を呑んだ。
3.警察が強盗犯の説得にあたる中、現場の空気は張り詰め、誰もが固唾を呑んだ。
「固唾を呑む」はスポーツの試合を見守る時や、映画などの展開を注視する状況など、さまざまな場面で使うことができます。ポイントは、息をとめるほどに緊張・集中・注目していること、そして次の動向を見守っていることです。漫画や映画作品においてもよく見られる行動といえます。ぜひ身の回りにある「固唾を呑む」瞬間を探してみてください。
「息を呑む」
「息を呑む」とは、恐怖や驚きによって一瞬息を止めることです。たとえば、あまりにも美しい絵画や景色を見た時などに「息を呑む」といいます。
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