模擬試験の結果が返却されて、あまり結果の良くなかった生徒がこう言ったんです。「今日は朝に電車で財布を盗まれたし、"踏んだり蹴ったり"ですよ…」と。正しい使い方ができていると感心しました。起きたことはとてもかわいそうなんですけど。

この記事を読んでいるあなたは、この「踏んだり蹴ったり」の使い方は大丈夫ですか?今回はこの「踏んだり蹴ったり」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「踏んだり蹴ったり」の意味や使い方は?

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「踏んだり蹴ったり」という言葉、見聞きしたり実際に使ったりしたことがある人が多いのではないでしょうか。今回は、その「踏んだり蹴ったり」について詳しく焦点を当てていきます。まずは、「踏んだり蹴ったり」の意味と使い方について確認しましょう。

「踏んだり蹴ったり」の意味は「続けざまにひどい目に遭うこと」

最初に、「踏んだり蹴ったり」の辞書での意味を確認していきましょう。「踏んだり蹴ったり」は、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

続けざまにひどい目にあうこと。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「ふんだり-けったり【踏んだり蹴ったり】」

「踏んだり蹴ったり」は「続けざまにひどい目に遭うこと」という意味の慣用句です。良くないことや不都合なことが立て続けに発生し、その状況を嘆く際に使用される表現ですね。大本の意味は文字通り、「踏まれたうえに蹴られる」です。他人に踏まれたうえに蹴られたら、それはそれは嫌なことの連続ですよね…。

「踏んだり蹴ったり」の使い方を例文とともに確認!

次に、「踏んだり蹴ったり」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「踏んだり蹴ったり」が文中に含まれている例文を3つ用意しました。どのような場面や文脈で使用されているのか、見ていきましょう。

\次のページで「「踏んだり蹴ったり」の類義語は?」を解説!/

1.今日は朝に母さんに叱られるわ、部活では先輩から怒鳴られるわで踏んだり蹴ったりだよ。
2.上司にミスを叱られてガックリしながら帰路についたら、今度は人身事故で1時間の遅延だとよ。踏んだり蹴ったりだ。
3.A氏はその後80歳で自己破産し、奥さんとも離婚することになり踏んだり蹴ったりの余生を歩んだ。

例文1では、ある生徒の1日の様子が語られていますね。母親に怒られたり部活で先輩に怒鳴られたりすることが1日のうちに重なっては、その生徒にとってまさに「踏んだり蹴ったり」の状況と言えるでしょう。

例文2は、ある会社員の1日を語った文です。上司にミスを叱られるという嫌な事態の後に、人身事故で電車が1時間遅延という別の嫌な事態が発生…こちらもまさに「踏んだり蹴ったり」の状況ですね。

「踏んだり蹴ったり」は、例文3のように、ある人物の人生や状況について第三者が外からの視点で語る際にも使用できます。80歳を過ぎて自己破産、そして離婚とは、まさに「踏んだり蹴ったり」でしょう。

「踏んだり蹴ったり」の類義語は?

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次に、「踏んだり蹴ったり」の類義語について見ていきましょう。「踏んだり蹴ったり」の類義語は「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」「一難去ってまた一難」「前門の虎 後門の狼」です。意味やニュアンスを確認し、「踏んだり蹴ったり」と比較してみてください。

「泣きっ面に蜂」:不運・不幸が重なること

「泣きっ面に蜂」は「不運・不幸が重なること」という意味のことわざです。辞書では「泣き面に蜂」の形で掲載されている場合が多いですが、実際に声に出して使用する際は「っ」を入れた「泣きっ面に蜂」という場合が多いですね。

何か嫌なことがあって泣いている時に、さらにその顔を蜂が刺して来たらさらに嫌ですよね…。意味やニュアンスは、「踏んだり蹴ったり」と変わりません。

「弱り目に祟り目」:不運が重なること

「弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ)」は「不運が重なること」「困っている時にさらに重ねて災難に遭うこと」という意味のことわざです。「落ち目に祟り目」という場合もありますが、意味は同じですね。「踏んだり蹴ったり」と、意味やニュアンスはほぼ同じです。

\次のページで「「一難去ってまた一難」:一つ災難がすぎ、すぐに次の災難が発生」を解説!/

「一難去ってまた一難」:一つ災難がすぎ、すぐに次の災難が発生

「一難去ってまた一難」は「一つ災難がすぎ、すぐに次の災難が発生すること」という意味のことわざです。「踏んだり蹴ったり」と似たような意味のことわざですが、「一難去ってまた一難」の場合、1つ目の災難は既に終結しているというニュアンスが含まれています。一方の「踏んだり蹴ったり」の場合、最初の災難が終結したかどうかは、定かではありません。

「前門の虎 後門の狼」:一つ災いを逃れても、またもう一つが…

「前門の虎 後門の狼(ぜんもんのとら こうもんのおおかみ)」は「一つの災いを逃れても、またもう一つの災いが襲って来ること」という意味の言葉です。

意味的には先ほどご紹介した「一難去ってまた一難」に似ていますが、「一難去ってまた一難」とは異なり1つ目の災難が終結していない場合にもこの言葉は使用できます。よって、ニュアンスや使用場面は「踏んだり蹴ったり」と大差ありません

「踏んだり蹴ったり」の英語表現は?

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最後に、「踏んだり蹴ったり」の英語表現について見ていきましょう。「踏んだり蹴ったり」の英語表現は「add insult to injury」です。意味や使い方を見ていきましょう。

「add insult to injury」:既にある傷をさらに侮辱して傷めつける

add insult to injury」は「既にある傷をさらに侮辱して傷めつける」というニュアンスを持った表現で、「踏んだり蹴ったり」と似たような場面で使用される表現です。すでに悪い状況がさらに悪化するようなときに使用される表現ですね。例文を見てみましょう。

1.The day after I divorced my wife, and then to add insult to injury I was fired from my job.
妻と離婚した翌日に仕事もクビになり、踏んだり蹴ったりである。

2.On the same day that I was informed that I had failed my graduation exam, as if to add insult to injury, I dropped my phone and broke it.
試験の不合格が通知されたその日に、スマホを落として壊してしいまい、踏んだり蹴ったりだ

\次のページで「「踏んだり蹴ったり」のときも前を向こう!」を解説!/

「踏んだり蹴ったり」のときも前を向こう!

今回は「踏んだり蹴ったり」について解説しました。「踏んだり蹴ったり」は「続けざまにひどい目に遭うこと」という意味の慣用句で、良くないことや不都合なことが立て続けに発生し、その状況を嘆く際に使用される表現です。

人間、生きていれば「踏んだり蹴ったり」の時期もあります。そして残念ながらその時期が長く続いてしまうこともあるかもしれませんね。ただ、そのような時も腐らずに前を向いて歩きましょう。そうすることで、きっと道が拓かれるはずですから。

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国語言葉の意味

意外と簡単にこんな事態に…「踏んだり蹴ったり」の意味や類義語などを院卒日本語教師が分かりやすく解説

模擬試験の結果が返却されて、あまり結果の良くなかった生徒がこう言ったんです。「今日は朝に電車で財布を盗まれたし、”踏んだり蹴ったり”ですよ…」と。正しい使い方ができていると感心しました。起きたことはとてもかわいそうなんですけど。

この記事を読んでいるあなたは、この「踏んだり蹴ったり」の使い方は大丈夫ですか?今回はこの「踏んだり蹴ったり」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「踏んだり蹴ったり」の意味や使い方は?

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「踏んだり蹴ったり」という言葉、見聞きしたり実際に使ったりしたことがある人が多いのではないでしょうか。今回は、その「踏んだり蹴ったり」について詳しく焦点を当てていきます。まずは、「踏んだり蹴ったり」の意味と使い方について確認しましょう。

「踏んだり蹴ったり」の意味は「続けざまにひどい目に遭うこと」

最初に、「踏んだり蹴ったり」の辞書での意味を確認していきましょう。「踏んだり蹴ったり」は、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

続けざまにひどい目にあうこと。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「ふんだり-けったり【踏んだり蹴ったり】」

「踏んだり蹴ったり」は「続けざまにひどい目に遭うこと」という意味の慣用句です。良くないことや不都合なことが立て続けに発生し、その状況を嘆く際に使用される表現ですね。大本の意味は文字通り、「踏まれたうえに蹴られる」です。他人に踏まれたうえに蹴られたら、それはそれは嫌なことの連続ですよね…。

「踏んだり蹴ったり」の使い方を例文とともに確認!

次に、「踏んだり蹴ったり」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「踏んだり蹴ったり」が文中に含まれている例文を3つ用意しました。どのような場面や文脈で使用されているのか、見ていきましょう。

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