この記事では「泥をかぶる」について解説する。

端的に言えば泥をかぶるの意味は「不利を承知の上で役目を引き受ける」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「泥をかぶる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「泥をかぶる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「泥(どろ)をかぶる」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「泥をかぶる」の意味は?

「泥をかぶる」には、次のような意味があります。

不利を覚悟の上で役目を引き受ける。「一人が―・って騒ぎを収める」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「泥を被る」

「泥をかぶる」とは、本来他人が負うべき責任をあえて引き受けることをいいます。

他人の失敗、あるいは悪事・不祥事の責任を意図的に肩代わりすることなので、泥をかぶった人物が困難な状況に置かれることは明らかですね。それを承知の上で、あえて自ら損な役目を引き受けることが慣用句「泥をかぶる」なのです。

※泥を「被る(かぶる)」と表記されることもあります。

「泥をかぶる」の使い方・例文

「泥をかぶる」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「泥をかぶる」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.部下が取引先でトラブルを起こしたが、上司が泥をかぶることでその場を収めた。

2.とある会社の秘書が逮捕されたが、社長の泥をかぶったのではないかと噂されている。

3.チームに何かあった時は、泥をかぶってでも助ける覚悟だ。

例文では、「泥をかぶる」が形を変えて使われていることが分かります。本来は他人が負うべき責任をあえて引き受ける(泥をかぶる)わけですから、自己犠牲のもとに成り立つ表現であるといえるでしょう。

「泥をかぶる」の類義語は?違いは?

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それではここで「泥をかぶる」の類義語を確認しましょう。

「汚れ役を引き受ける」「汚れ役を果たす」

そもそも「汚れ役」とは、映画や演劇作品の中で、世間から好ましく思われない人物を演じる役のことをいいます。たとえば犯罪者や、社会的地位・財産を失った弱者などがあげられ、汚れた服装をしていることがほとんどです。

このように芝居作品において活躍する「汚れ役」ですが、現在では慣用句としても使われています。「汚れ役を引き受ける」「汚れ役を果たす」などがその代表で、どちらも「あえて嫌われ者となること」を意味するものです。もちろん現実世界はお芝居ではありませんし、自分が主人公として人生を歩んでいるはずですが、その中であえて「汚れ役」となることで誰かを助けたり、状況を変化させる場合に使われることがあります。あえて・意図的に損な役割を引き受ける点が、「泥をかぶる」との共通点といえるでしょう。

「憎まれ役を買って出る」

「憎まれ役」とは、世間や人々から憎まれるような役割・立場のことをいいます。先ほどご紹介した「汚れ役」と似た意味をもっていますね。こちらも慣用句には「憎まれ役を買って出る」があります。たとえばミスをした友人をかばうために、あえて自分の責任であると嘘をつくとしましょう。人々の怒りの矛先を自らに向けることで、憎まれ役をあえて買って出たわけです。

もう一つ例をあげますね。たとえば横柄な上司に対する不満を、部下のほとんどが抱えていたとしましょう。しかし誰も勇気がなく声をあげることができません。そんな時、部下の一人が上司に直接不満を訴えました。上司から嫌われるかもしれないというリスクがあるにも関わらず、「憎まれ役を買って出た」のです。

\次のページで「「尻拭い」」を解説!/

「尻拭い」

「尻拭い(しりぬぐい)」とは、他人の失敗の後始末などを行うことです。文字通り、尻を拭く・拭うことが由来となっています。たとえば家族の背負った借金の尻拭いをすることは、自分が代わって借金を負うということです。

基本的には、良い行いに対して使われる言葉ではありません。「汚れ役」同様、世間から好まれることのない事柄に対して「尻拭い」は使われますので注意しましょう。

「肩代わり」

「肩代わり」とは、他人の借金などを代わりに引き受けることです。本来は、「駕籠(かご)」をかつぐ人が交代するという意味をもっていました。

駕籠とは江戸時代に普及した乗り物のことです。箱型の台に棒を通し、前後から二人以上で肩にかついで運ぶ様子を、時代劇などで目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。確かに駕籠が債務(借金)や責任であると考えれば、それを運ぶ肩が交代することを「肩代わり」と呼ぶのも納得ですね。引き受ける人が代わるわけですから。

「泥をかぶる」の対義語は?

続いて「泥をかぶる」の対義語を確認しましょう。

「濡れ衣を着せる」

「濡れ衣(ぬれぎぬ)を着せる」とは、自らの犯した罪を他人に負わせることです。

「泥をかぶる」とは、他人の責任をあえて自分がかぶることでしたね。納得の上で責任を引き受けるといったニュアンスがありました。反対に、自分の罪や責任を他人に引き受けさせることが「濡れ衣を着せる」です。ただし「濡れ衣を着せる」には、相手の同意や納得が必ずしも含まれているわけではありません。濡れ衣を着せられた相手からすれば「無実の罪」なので、理不尽だ、自分のせいではないのに、と反感を買う可能性が十分にあります。

「濡れ衣」の意味を以下で確認しておきましょう。

1 .濡れた衣服。身に覚えのない罪をいうたとえ。「その疑いは濡れ衣だ」

2.根拠のないうわさ。無実の浮き名。ぬれごろも。「憎からぬ人ゆゑは、―をだに着まほしがる類もあなればにや」〈源・紅葉賀〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「濡れ衣」

「責任転嫁」

「責任転嫁(せきにんてんか)」とは、本来自分が負うべき責任を、他人に負わせることをいいます。「転嫁」とは、自分の責任や失敗を他人のせいにすることです。押し付ける、なすりつけるといったニュアンスをもちます。

「泥をかぶる」では責任の所在が他人→自分でしたが、「責任転嫁」では一方的に自分→他人です。この点で意味が対になっているといえるでしょう。

\次のページで「「泥をかぶる」の英訳は?」を解説!/

「泥をかぶる」の英訳は?

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最後に「泥をかぶる」の英語表現を確認しましょう。

「take the blame」

take the blame for とは、「〜のための責任をとる、罪をかぶることを表します。blame とは責任・非難のことです。

He took the blame for his father's failure.
彼は父の失敗のために泥をかぶった(責任を負った)。

「do the dirty work」

do the dirty work とは「汚い仕事をする」ことです。

ここでの汚い仕事とは、人が進んでやりたがらない内容を指します。その仕事を行ってもメリットがなく、損な役目であると分かっているので誰も引き受けたくありません。それをあえて行うことが do the dirty work です。「泥をかぶる」の類義語である「汚れ役を引き受ける」の意味を上手く表しています。

「泥をかぶる」を使いこなそう

この記事では「泥をかぶる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

慣用句「泥をかぶる」とは
他人の負うべき責任を自らが引き受けること
不利な状況を分かっていながら、あえて責任を負うこと
であると確認できましたね。

他にもいくつかの類義語などがありましたが、どの時代でも責任をかぶる・なすりつけるという人間の思惑は普遍であることが伺えます。泥をかぶらずとも、お互いに助け合う心をもちたいものですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「泥をかぶる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「泥をかぶる」について解説する。

端的に言えば泥をかぶるの意味は「不利を承知の上で役目を引き受ける」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「泥をかぶる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「泥をかぶる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「泥(どろ)をかぶる」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「泥をかぶる」の意味は?

「泥をかぶる」には、次のような意味があります。

不利を覚悟の上で役目を引き受ける。「一人が―・って騒ぎを収める」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「泥を被る」

「泥をかぶる」とは、本来他人が負うべき責任をあえて引き受けることをいいます。

他人の失敗、あるいは悪事・不祥事の責任を意図的に肩代わりすることなので、泥をかぶった人物が困難な状況に置かれることは明らかですね。それを承知の上で、あえて自ら損な役目を引き受けることが慣用句「泥をかぶる」なのです。

※泥を「被る(かぶる)」と表記されることもあります。

「泥をかぶる」の使い方・例文

「泥をかぶる」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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