この記事では「明眸皓歯」について解説する。

端的に言えば「明眸皓歯」の意味は「美しい人の事」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「明眸皓歯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「明眸皓歯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「明眸皓歯(めいぼうこうし)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「明眸皓歯」の意味は?

「明眸皓歯」には、次のような意味があります。

《杜甫「哀江頭」から》美しく澄んだひとみと白く整った歯。美人のたとえにいう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「明眸皓歯」

漢字を分解すると「明眸」は「明るい瞳」、「皓歯」は「白い歯」のこと。合わせて「済んだ瞳と白い歯を持つ人=美人・美女」を表す言葉になります。辞典によって限定されている・いないものがありますが、基本的には女性に対して使われる褒め言葉です。語源の項でその理由がわかりますので、確認してください。

記述するにはやや難解な漢字のため、まずは読めるようにするといいでしょう。理解を深めるため、同様の漢字を使用した熟語をご紹介します。

「眸」は「双眸(そうぼう)」という言葉で「両目」を表する熟語です。「双眸を見開いた」など、すこし厳めしい表現に使うことができるでしょう。

「皓」は「皓皓(こうこう)」という言葉で「白いさま。転じて潔白なこと」や「月光が明るい様子」「空しいほど広いこと」を意味します。「きらきら光る」という「煌煌」とは異なる言葉ですので混同しないようにも注意が必要です。

「明眸皓歯」の語源は?

次に「明眸皓歯」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、中国盛唐の詩人である杜甫(とほ)による「哀江頭(江頭に哀しむ)」に見ることが出来ます。

安禄山の乱ののち、長安に幽閉されていた杜甫が、華やかだった時代を想って読んだ詩。「明眸皓歯 今何在(あの美しい方は、今どこにいらっしゃるのか=もうどこにもいない)」と、乱の最中に殺されてしまった楊貴妃をしのんでいます。「明眸皓歯」とは世界三大美女のひとり、楊貴妃を指す言葉だったのですね。こうした背景を知ることで、言葉の持つ意味が想像しやすくなるでしょう。

余談ですが、杜甫のこの詩は「七言古詩(しちげんこし)」という、一句が七言からなる詩体を取っています。そちらも興味があれば調べてみましょう。

\次のページで「「明眸皓歯」の使い方・例文」を解説!/

「明眸皓歯」の使い方・例文

「明眸皓歯」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・みんな彼女のことを美人だというけれど、あの明眸皓歯さを本当の意味で理解しているのは、世界で僕だけだと思う。

・ふるさと特別美人検定というものを受験すると、いかにこの地の女性が明眸皓歯なのかわかるのでおすすめですよ、と市のサービス担当者は自信満々に語った。

・学校の文化祭で行われる美人コンテストには、男子が参加して明眸皓歯さを競う限定枠があり、毎年異様な盛り上がりを見せている。

人の容姿の美しいさま」を表現するニュアンスが伝わりますでしょうか。

語源のとおり、もともとは楊貴妃の美しさを表現するのに使われた言葉です。難しい漢字も使われている為、場面によっては「どうしてわざわざそんな言い方を?」となってしまうことも。日常的には使いづらい言葉かもしれません。「それくらい本気なんだ」とか、あえて堅い表現を使う「面白さ」が伝わる表現にするといいでしょう。

例文三番目は男子に対して使っていますが、現代ではそのような使い方もおかしくはないでしょう。言葉の使われ方は時代と共に変化するものですから、みなさんも自分なりに使い方を考えてみてくださいね。

「明眸皓歯」の類義語は?違いは?

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「明眸皓歯」の類義語には、「仙姿玉質」「氷肌玉骨」などがいいでしょう。漢字を逆にした「皓歯明眸(こうしめいぼう)」もありますがこれはそのままなので、以下ではそれ以外をご紹介します。

「仙姿玉質」「氷肌玉骨」

「仙姿玉質(せんしぎょくしつ)」「氷肌玉骨(ひょうきぎょっこつ)」は、どちらも「美しい女性」を形容した四字熟語です。

「仙姿」は「仙女のような美しい姿」、「玉質」は「宝玉のように滑らかな肌」。「氷肌」は「氷のごとく澄んだ白い肌」、「玉骨」は「高潔な姿」。「明眸皓歯」が瞳と歯だったのに対して、姿の素晴らしさや肌の美しさやで美人の形容としています。

白い歯を褒める「皓歯」を使用した四字熟語なら「蛾眉皓歯(がびこうし)」「朱唇皓歯(しゅしんこうし)」なども。調べると、他にも同様の四字熟語がたくさん出てきて驚きます。興味があればぜひ調べてみましょう。女性の美しさを表すのに、多くの言葉が用いられたことがわかりますよ。

\次のページで「「明眸皓歯」の対義語は?」を解説!/

・アニメに出てくるヒロインは、きれいで可愛い子ばかりで、現代の仙姿玉質の体現といっても過言ではないはずだ。

・男は外見ばっかり気にしてさ、と文句を言う姉だったが、氷肌玉骨という言葉に惹かれたらしく、肌が白くする方法を検索しては色々試している。

「明眸皓歯」の対義語は?

「明眸皓歯」の明確な対義語は見つかりませんでした。もともと、ずば抜けての美人を指す言葉だったわけですから、あえてその逆を言う必要はなかったのかもしれませんね。

「明眸皓歯」の英訳は?

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「明眸皓歯」の英語訳は「starry eyes and pearly teeth」などで表すことができるでしょう。

「starry eyes and pearly teeth」

直訳すれば「星のように輝く瞳と真珠のように白い歯」となります。四字熟語をそのまま英語化しただけですので、「美しい女性=beautiful woman」と単語を付けて補うほうが無難でしょう。

形容詞は「bright(輝く)」や「white(白い)」などと入れ替えても構いませんが、「明眸皓歯」を英訳するからには、直接的な少し表現は避けて、情景を想像させる単語を使った方がニュアンスが出せるでしょう。

That beautiful woman with starry eyes and pearly teeth won the contest again this year.
あの明眸皓歯な女性は、今年のコンテストでもまた優勝した。

\次のページで「「明眸皓歯」を使いこなそう」を解説!/

「明眸皓歯」を使いこなそう

この記事では「明眸皓歯」の意味・使い方・類語などを説明しました。

類義語でも紹介しましたが、女性の美しさを表現する四字熟語や、その他慣用表現も実に多く存在しています。語源のように、文人によってもどんどんそうした言葉が作られてきたわけですから、新しい表現をすることは彼らのセンスや教養の高さを示すことにもなっていたのでしょうね。

同義語の多さは、その時代の人々が大切にしていた感性に思いを馳せる面白いポイントでもあります。ぜひ皆さんも、自分なりに調べてみてくださいね。

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【四字熟語】「明眸皓歯」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「明眸皓歯」について解説する。

端的に言えば「明眸皓歯」の意味は「美しい人の事」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「明眸皓歯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「明眸皓歯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「明眸皓歯(めいぼうこうし)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「明眸皓歯」の意味は?

「明眸皓歯」には、次のような意味があります。

《杜甫「哀江頭」から》美しく澄んだひとみと白く整った歯。美人のたとえにいう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「明眸皓歯」

漢字を分解すると「明眸」は「明るい瞳」、「皓歯」は「白い歯」のこと。合わせて「済んだ瞳と白い歯を持つ人=美人・美女」を表す言葉になります。辞典によって限定されている・いないものがありますが、基本的には女性に対して使われる褒め言葉です。語源の項でその理由がわかりますので、確認してください。

記述するにはやや難解な漢字のため、まずは読めるようにするといいでしょう。理解を深めるため、同様の漢字を使用した熟語をご紹介します。

「眸」は「双眸(そうぼう)」という言葉で「両目」を表する熟語です。「双眸を見開いた」など、すこし厳めしい表現に使うことができるでしょう。

「皓」は「皓皓(こうこう)」という言葉で「白いさま。転じて潔白なこと」や「月光が明るい様子」「空しいほど広いこと」を意味します。「きらきら光る」という「煌煌」とは異なる言葉ですので混同しないようにも注意が必要です。

「明眸皓歯」の語源は?

次に「明眸皓歯」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、中国盛唐の詩人である杜甫(とほ)による「哀江頭(江頭に哀しむ)」に見ることが出来ます。

安禄山の乱ののち、長安に幽閉されていた杜甫が、華やかだった時代を想って読んだ詩。「明眸皓歯 今何在(あの美しい方は、今どこにいらっしゃるのか=もうどこにもいない)」と、乱の最中に殺されてしまった楊貴妃をしのんでいます。「明眸皓歯」とは世界三大美女のひとり、楊貴妃を指す言葉だったのですね。こうした背景を知ることで、言葉の持つ意味が想像しやすくなるでしょう。

余談ですが、杜甫のこの詩は「七言古詩(しちげんこし)」という、一句が七言からなる詩体を取っています。そちらも興味があれば調べてみましょう。

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