1.近視・遠視・乱視などの視力を調整したり、強い光線から目を保護したりするために用いる、凹レンズ・凸レンズ・着色ガラスなどを使った器具。がんきょう。
2.物の善悪・可否を見きわめること。また、その能力。めきき。「人を見る眼鏡が曇る」→御眼鏡(おめがね)
3.遠眼鏡(とおめがね)のこと。望遠鏡や双眼鏡の類。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「眼鏡」
辞書の意味2に注目するとわかるように、「お眼鏡にかなう」の「眼鏡」とは、物事の善悪や優劣を見抜く力を意味しているのです。転じて物事の本質を見極める能力であり、鑑識に優れているといえます。
一方「かなう(適う)」にはどのような意味があるのでしょうか。
「かなう(適う)」
・ぴったり合う
・ちょうど良い
・適する、適合する
・期待や要求を満たす
・条件や基準にあてはまる
「かなう」とは求められる条件や基準、期待を適切に満たすことです。漢字「適う」からも「適する」「適合する」といったニュアンスが読み取れます。
※「叶う」と間違えないように注意しましょう。
つまり「お眼鏡にかなう」とは、物事の価値を見極めようとする力に上手く適合することであり、転じてその厳しい鑑識眼をもつ人物を満足させることとなりました。
ちなみに「お眼鏡にかなう」の誤用として「お目にかなう」が使われることがあります。一見すると意味が通じるような印象を受けますが、正しい使い方ではありません。眼鏡をかけていない人物に対して使えるのでは?といった意見もあるようですが、「眼鏡」の意味を理解したみなさんなら正しく判断できるはずです。
「お眼鏡にかなう」の使い方・例文
「お眼鏡にかなう」の使い方を例文を通して確認していきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.若きシェフが、こだわりの強いグルメな評論家のお眼鏡にかなったようだ。今月書店に並んだレストランガイドには、絶賛のコメントが掲載されている。
2.コーチのお眼鏡にかなった選手だけが、一軍入りを許される。
3.上司のお眼鏡にかなった人物だけが、この会社で出世していくようだ。
「お眼鏡にかなう」とは、目上の人物から気に入られることでしたね。目上の人物とは、例文にもあるようにコーチや会社の上司などが例にあげられます。ただし必ずしも歳上であることが絶対条件とはいえません。たとえ歳下でも、自分より権力をもつ人物であれば対象となるので注意しましょう。
一人ひとりの評価基準は異なるため、場合によっては「お眼鏡にかなう」とは相手の個人的感情や解釈に左右されることもあるでしょう。とある上司のお眼鏡にはかなわなくとも、別の上司のお眼鏡にかなう可能性はあるのです。
「眼鏡」「目」にまつわる慣用句は?
それではここで「眼鏡」や「目」がキーワードとして使われる慣用句をご紹介します。「お眼鏡にかなう」では「眼鏡」が重要な意味を握っていましたが、他にも類似する言葉はあるのでしょうか。
「眼鏡が狂う」
「眼鏡が狂う」とは、物事や人物に対して誤った判断をとることを表す慣用句です。たとえば個人的な感情によって不適切な評価を与えてしまったり、本質を見誤ってしまうことをいいます。
「お眼鏡にかなう」同様、「眼鏡」が相手の本質を見極める能力として使われていますね。
「色眼鏡」
「色眼鏡(いろめがね)」とは、先入観にとらわれた物事の見方のことをいいます。本来はサングラスのような色付きガラスが入った眼鏡のことを表しますが、ここでは比喩として「物事をありのままに見ない」といった意味で使われているのです。
確かに事実や物事に色が付いてしまえば、個人のもつ偏見や先入観が含まれていると解釈できますね。
「目が利く」
「目が利(き)く」とは、物事の善悪を見極める力をもっていることを表す慣用句です。美術品などの値段を決める際に、専門家たちが目利きをすることがありますが、まさに「目が利く」とはこのこと。本来の価値や資質を見極める能力があることをいいます。
ちなみに「利く」とは効果的に機能すること、よく働くことです。犬の嗅覚が優れていることを「鼻が利く」といいますね。能力などが上手く役立つ場合に使うことができますよ。
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