電気回路が途中で枝分かれをしていて、電流の向きが直感的に捉えづらい時に役立つのが「キルヒホッフの法則」です。

1つは直列回路、並列回路の電流についてまとめたものでオームの法則を習う時についでに習うもの。もう1つは電圧に関するルールで最初に与えた電圧が回路一周する間に0になるというもの。

これらは割と無意識に使っているがきちんと整理しておくことで複雑な回路の問題を解くときに分かりやすくなる。理系ライターのR175と解説していく。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.電気回路の基本ルール

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基本ルールは至ってシンプル。電圧が高い方から低い方に電流が流れる、ただそれだけです。電流が流れる=電子が移動する事ですが、実際は電子の移動する向きは電流の向きと逆になります。実際に移動している「電子」は-の電荷なのに対し、電流の向きは便宜上「+の電荷」の移動の向きで定義しているからです。本記事でも、+電荷の移動の向きで考えることとしましょう(その方がイメージしやすいはず)。

2.電気回路=水の流れというイメージ

2.電気回路=水の流れというイメージ

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電気回路を水の流れでイメージすると非常に分かりやすいです。川の水は標高が高い方から低い方に落差があるから流れるもの。電気回路も同じで、電流が流れるのは落差があるから。水の流れで言う「落差」は電気回路では電圧に相当。電圧は別名電位差とも呼ばれますが「落差」のことであるというイメージをしましょう。

電流は流量をイメージ

電流は水の流量をイメージしましょう。電流が大きい=たくさんの水が流れている、電流が小さい=水がほとんど流れずからから状態ということ。水が流れるとき、途中で流入して来たりor途中でどこかに漏れたりしない限り流量は一定ですね。同じく電流も合流や分岐がない限り電流が途中で変わることはありません。

電圧は落差をイメージ

電圧とは電気を流そうとするパワーのこと。電圧に近い概念で電位という言葉がありますが、これはその地点が何Vかを表すもので電圧は二点間で何V差があるかを表すもの。

例えば、A地点の電位が100VでB地点の電位が30Vとしましょう。ここでいう100Vや50Vに対しては電圧ではなく「電位」を使います。水の流れで言う高さそのものに相当。一方、A地点とB地点の電位の差は70Vでありこれが電圧です。水の流れで言う落差をイメージしましょう。

水が高いところから低いところに流れようとするのと同じで電気も電位が高い方から低い方に流れますね。また、落差が大きい方が水は勢いよくたくさん流れようとしますが電気も同じで電位の差(電圧)が大きいほどたくさんの電流が流れます。

電気抵抗はエネルギーロスをイメージ

電気抵抗はせっかく電圧があるのにそこで何らかのロスをしてしまい電圧が降下する(パワーを失ってしまう)こと。水の流れの場合でも途中で流れを妨げるもの(摩擦など)があると、せっかく落差をつけていても水の勢いが弱まってしまいますね。電気抵抗は流れを妨げるものをイメージしましょう。

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電源はポンプをイメージ

電気回路で言う電源は、電圧(電位の差)を与える装置。水の流れで言うと落差を与える「ポンプ」に相当。

直列回路でのルール

直列回路でのルール

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電流は必ず一定です。1本の流路なので途中で流量が変わることはありません。水の流れでも同じです。途中で流量が減ったら残りはどこにいくのか?途中で増えたらどこから現れたの?という矛盾が生じますね。そのような不思議な現象は起きないため、1本の導線は端から端までどこで見ても流量(電流)は同じです。

並列回路でのルール

並列回路でのルール

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分岐点と分岐の間の電圧は必ず同じ。川の流れで考えましょう。流れが分岐する地点ではどちらの流路も高さは同じ(当たり前ですが)。その後どんなルートを通るかはさておき、再び合流する時は高さが同じ。どちらのルートで行っても同じだけの落差が生じることになります。電圧でも同じ考えで、並列回路でどちらの回路に行っても電位の落差たる「電圧同じです。

3.キルヒホッフの法則(電流)

3.キルヒホッフの法則(電流)

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電流に関するキルヒホッフの法則は、普段から無意識に使っていると思います。直列回路では電流がずっと一定で、並列回路では分岐後のそれぞれ電流の合計が元の電流あり、分岐して導線が合流したら再び元と同じ電流になるというあのルール。

電源が1つだけで、電流の向きが分かり易いパターンでは特に意識しなくても問題なし。このキルヒホッフの法則が威力を発揮するのは電源が複数あったりするなどして電流の向きが分かりにくい時です。

水の流れに例えましょう。湖に川が通じていて、水が入ったり出て行ったりします。オームの法則の時に習うのは電源が1つ、つまりどこか1箇所の川から水が入ってきて残りの川から流れていく状態。この場合流れの向きは明確ですね。流量は入ってくる分が出て行く分の合計。in流量=out流量であり、収支が合っていますよというのが電流に関するキルヒホッフの法則です。

このキルヒホッフの法則(電流)が威力を発揮するのは流れる向きが分かりにくいケース。例えばAは3Vの電源から来ていて、Bは2Vから、Cは1VからでDは電源に繋がっていないとしましょう。以上A〜Dが点Pでが合流しているとして、電流はどっち向きに流れるか?電気回路だけだとイメージしづらいので、水の流れに例えて作図すると少しイメージしやすくなります。

電流の収支は0

電流の向きは気にせず一旦仮の向きに矢印を引きます。問題を解くときは分岐点を基準にして「出ていく電流=流入する電流」と考え式を立てましょう。この時、流入する電流と出ていく電流の符号は逆にしておき全部足したら0という風にします。電流の向きの仮定が間違っていても心配ありません。電流の向きを逆向きに仮定していた場合は電流の値の正負が逆になるだけで何も問題ありません。極端な話、一旦全ての電流を正にしておいてもいいわけです。

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4.キルヒホッフの法則(電圧)

もう一つは電圧のルール。二点間で電位差がある場合、電気抵抗を通過するなど何らかの事情でその電位差分だけ電圧が降下しているというもの。例えば、24Vの電源がありそれがある経路を経て0Vであるアースにつながっているとしましょう。この24Vは途中の電気抵抗などで使いきり、最終的に24V分だけ電位が下がっていないとおかしいですね。

水の流れで言うと電源部分はポンプであり、例えば24m持ち上げるポンプとしましょう。持ち上げた水はどこかを流れて、再びポンプの所に帰ってくるときは24m下がっていないとおかしいですね。これと同じ。

当然、このルールは1周していない回路でも成立。例えばA地点とB地点で電位差が10Vならば、間の電気抵抗などで10V分の電圧降下が起きているわけで、その10Vは使い切る必要があります。

キルヒホッフの法則を使った例題

キルヒホッフの法則を使った例題

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以上、電流、電圧に関するキルヒホッフの法則を使って例題を解いてみましょう。分岐点で導線が4か所につながっていますが、それぞれ何Aか求めます。電流をI1~I4と置いて、向きは右側の水流に例えた作図から大凡イラストのような向きに流れることがイメージされるのでその向きで符号を決めました。分岐点で流入と流出の収支は0なのでI1~I4の和は0ですね。

一方電圧は、それぞれの流れで電気抵抗などによる電圧降下(ロス)と電位差の収支が合っている必要があるためイラストのような式となりそれぞれの電流を算出してくることが可能。

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当たり前を大切に

直列回路と並列回路での電流のルール回路を進んでいく時の電圧のルール、どちらもオームの法則と一緒に学び「当たり前」のように使っている知識。それらのルールを改めて整理したのが「キルヒホッフの法則」であり、基本ルールを忠実に抑えていれば複雑な回路でも対応できます

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物理理科電磁気学・光学・天文学

キルヒホッフの法則とは?回路の分岐が多い時に役立つこの法則を理系ライターがわかりやすく解説

電気回路が途中で枝分かれをしていて、電流の向きが直感的に捉えづらい時に役立つのが「キルヒホッフの法則」です。

1つは直列回路、並列回路の電流についてまとめたものでオームの法則を習う時についでに習うもの。もう1つは電圧に関するルールで最初に与えた電圧が回路一周する間に0になるというもの。

これらは割と無意識に使っているがきちんと整理しておくことで複雑な回路の問題を解くときに分かりやすくなる。理系ライターのR175と解説していく。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.電気回路の基本ルール

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基本ルールは至ってシンプル。電圧が高い方から低い方に電流が流れる、ただそれだけです。電流が流れる=電子が移動する事ですが、実際は電子の移動する向きは電流の向きと逆になります。実際に移動している「電子」は-の電荷なのに対し、電流の向きは便宜上「+の電荷」の移動の向きで定義しているからです。本記事でも、+電荷の移動の向きで考えることとしましょう(その方がイメージしやすいはず)。

2.電気回路=水の流れというイメージ

2.電気回路=水の流れというイメージ

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電気回路を水の流れでイメージすると非常に分かりやすいです。川の水は標高が高い方から低い方に落差があるから流れるもの。電気回路も同じで、電流が流れるのは落差があるから。水の流れで言う「落差」は電気回路では電圧に相当。電圧は別名電位差とも呼ばれますが「落差」のことであるというイメージをしましょう。

電流は流量をイメージ

電流は水の流量をイメージしましょう。電流が大きい=たくさんの水が流れている、電流が小さい=水がほとんど流れずからから状態ということ。水が流れるとき、途中で流入して来たりor途中でどこかに漏れたりしない限り流量は一定ですね。同じく電流も合流や分岐がない限り電流が途中で変わることはありません。

電圧は落差をイメージ

電圧とは電気を流そうとするパワーのこと。電圧に近い概念で電位という言葉がありますが、これはその地点が何Vかを表すもので電圧は二点間で何V差があるかを表すもの。

例えば、A地点の電位が100VでB地点の電位が30Vとしましょう。ここでいう100Vや50Vに対しては電圧ではなく「電位」を使います。水の流れで言う高さそのものに相当。一方、A地点とB地点の電位の差は70Vでありこれが電圧です。水の流れで言う落差をイメージしましょう。

水が高いところから低いところに流れようとするのと同じで電気も電位が高い方から低い方に流れますね。また、落差が大きい方が水は勢いよくたくさん流れようとしますが電気も同じで電位の差(電圧)が大きいほどたくさんの電流が流れます。

電気抵抗はエネルギーロスをイメージ

電気抵抗はせっかく電圧があるのにそこで何らかのロスをしてしまい電圧が降下する(パワーを失ってしまう)こと。水の流れの場合でも途中で流れを妨げるもの(摩擦など)があると、せっかく落差をつけていても水の勢いが弱まってしまいますね。電気抵抗は流れを妨げるものをイメージしましょう。

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