今回のテーマは「準惑星」です。

準惑星とは太陽系にある天体の種類のひとつで、太陽の周りを公転している。準惑星という分類ができたのは2006年の国際天文学連合の総会でのことです。現在確認されている準惑星は5つ。冥王星は知っている人も多いでしょう。準惑星という定義ができた過程には冥王星の存在が欠かせない。

今回は5つの準惑星を紹介していく。解説は科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

不思議な現象を解き明かす科学が好きで理系に進んだリケジョ。高校、大学で化学漬けの日々を送っていた科学館職員。得意科目は理科と意外にも国語。

準惑星とは

まずは準惑星についておさらいしましょう。

準惑星の定義

image by PIXTA / 30180432

地球は惑星に分類され、冥王星は準惑星に分類されます。この惑星と準惑星は何が違うのでしょうか?

コトバンクで調べると惑星は

恒星の周囲を公転する、比較的大きな天体。国際天文学連合はこのほか、自己重力のため球形であることと、公転軌道近くに衛星以外の天体がないことを惑星の要件としている」、そして準惑星は「太陽系の中にあって、惑星と同様、太陽のまわりを楕円軌道で公転しているが、惑星よりも質量の小さい天体

とされています。

惑星も準惑星も恒星(太陽)の周りを公転していて、ある程度重さがあり球形をしている天体です。惑星と準惑星の主な違いは「公転の軌道に衛星以外の惑星があるのか?」というポイントにあります。準惑星は軌道周辺にある天体を排除していないとされているのです。天体の分類をしっかりと覚えてくださいね。

天体についてはこちらの記事を参考にしてください。

準惑星の歴史

準惑星の歴史

image by Study-Z編集部

準惑星の歴史を語るのに欠かせないのが冥王星の存在です。

冥王星が発見されたのは1930年のことになります。太陽系で一番外側にある惑星、海王星の発見が1846年です。そのひとつ内側にある天王星の発見が1781年なので、冥王星は認知されてからまだあまり時間のたっていない天体ですね。冥王星は太太陽系の9番目の惑星を探しているときに発見されました。そのため発見された当初、冥王星は惑星に分類されていたのです。しかし公転の軌道が楕円形なことなどから、冥王星を惑星として扱っていいものか議論されることとなります。

そして冥王星発見から約60年後の1992年、冥王星に続くふたつめの太陽系外縁天体平均的に海王星よりも遠くを公転する天体)の小惑星が発見されました。この小惑星はアルビオンと名付けられます。そして2005年、冥王星よりも大きいサイズと思われる天体(エリス)が発見されたのです。

この新たに発見された天体を惑星をするかどうかという議論が起こりました。そして2006年に開かれた国際天文学連合総会で惑星が明確に定義され、準惑星、太陽系小天体という分類ができました。

準惑星を紹介

それでは準惑星をご紹介していきます。

冥王星

image by PIXTA / 34650820

準惑星といえばその定義ができるきっかけとなった冥王星です。

肉眼で見ることのできない冥王星の発見は1930年のこと。冥王星の直径は2,370㎞で、直径3,474㎞の月よりもさらに小さい天体です。約6日で1回の自転する一方、公転には247年以上かかっています。

冥王星は英語でPlutoと言い、その由来はローマ神話の冥界の神プルートです。この名前を決めるとき、候補として他にもミネルヴァやクロノスが候補に挙がっていました。そして冥王星の存在を予測し、冥王星の発見場所となったローウェル天文台を作ったパーシヴァル・ローウェルのイニシャルがPLなのを理由に冥王星にしたと言われています。

エリス

冥王星と同じく2006年に準惑星とされたエリス。冥王星とほとんど同じ大きさで直径約2,326㎞程です。エリスの自転は26時間ほどで地球とあまり変わりありません。その一方で公転には558年もかかっています。気の遠くなるような時間ですね。エリスの公転の軌道は楕円形となっています。表面にはメタンでできた氷があり、冥王星と似た環境ではないかと考えられている準惑星です。

image by PIXTA / 10618790

2005年に発見されたエリスの名前の由来は、トロイア戦争の原因となったギリシャ神話の不和と争いの神、エリスです。エリスは火星の由来となったアレースの妹ともいわれ、その子供は様々な災いのもととなったと言われています。

エリスは結婚式に招かれなかった仕返しにその宴の場に「最も美しい女神に」と書かれた黄金のリンゴを投げ入れました。そのリンゴをめぐってヘーラー、アテーナ―。アプロディーテ―が争い、トロイア戦争を引き起こしたのです。トロイア戦争と言えばトロイの木馬を聞いたことがある人が多いでしょう。エリスの発見は惑星の定義について論争を巻き起こしました。そのため、どの女神が美しいかという論争を巻き起こしたエリスの名がつけられたそうです。

天体とギリシャ神話についてはこちらをどうぞ。

\次のページで「ケレス」を解説!/

ケレス

ケレスは火星と木星の間にある小惑星帯(メインベルト)にある準惑星です。発見は1801年元旦のことで、準惑星の中で最初に発見されました。

直径は945㎞でメインベルトにある中では最大の天体ですが、準惑星の中では最も小さい天体です。また公転にかかる時間も小惑星の中では圧倒的に短く、4年半程度で太陽の周りを1周します。海王星よりも太陽に近い位置にある準惑星はケレスだけです。

メインベルトについてはこちらの記事で確認してください。

ケレスという名前の由来はローマ神話の女神、ケレースです。ケレースはギリシャ神話のデーメーテールと同一視されています。デーメーテールの娘のペルセポネーは冥王星の由来となった冥界の神、ハーデースの妻です。ということはデーメーテールとハーデースは義理の親子なのですね。

マケマケ

image by PIXTA / 54617580

マケマケは直径は1500㎞程度の小さな準惑星です。マケマケという変わった名前の由来はギリシャ神話ではありません。イースター島のラパ・ヌイ神話の創造、豊穣の神が由来となっています。マケマケは2005年3月31日に発見され、2008年に冥王星型天体と認められました。

準惑星という分類ができたのは2006年のことでしたね。この時すでに発見されていたケレス、冥王星、エリスが準惑星となりました。そしてマケマケは準惑星という分類ができた後、最初に追加された4番目の準惑星です。

ハウメア

image by PIXTA / 49108497

2003年に発見され、2008年に準惑星と認められたハウメア。2020年現在で最も新しい準惑星です。ハウメアは真ん丸な形ではなく、ラグビーボールのような形をしています。直径は一番長いところで1960㎞、短いところで996㎞です。

ハウメアという名前はハワイ諸島の豊穣の女神、ハウメアが由来となっています。音がハワイっぽいですね。ちなみに正式名称が決まる前の愛称は天体の存在に気が付いた時期からサンタだったそうです。ハワイとサンタとは真逆なイメージですね、

準惑星と惑星は何が違う?

「準」惑星とはその名の通り惑星とよく似ています。太陽の周りを公転し、十分な重さがあって丸くなった天体です。そのため、冥王星は発見当時、惑星と分類されていました。

2020年現在では5つの準惑星はあります。一番大きな冥王星でも直径で比べると、惑星でもっとも小さな水星の半分しかありません。その名前はギリシャ神話が由来のものがある一方で、イースター島やハワイの神話をもととしたものもあります。今後どんな名前の準惑星が誕生するか楽しみですね。

" /> 3分で簡単「準惑星」どんな天体?科学館職員がわかりやすく紹介 – Study-Z
地学宇宙理科

3分で簡単「準惑星」どんな天体?科学館職員がわかりやすく紹介

今回のテーマは「準惑星」です。

準惑星とは太陽系にある天体の種類のひとつで、太陽の周りを公転している。準惑星という分類ができたのは2006年の国際天文学連合の総会でのことです。現在確認されている準惑星は5つ。冥王星は知っている人も多いでしょう。準惑星という定義ができた過程には冥王星の存在が欠かせない。

今回は5つの準惑星を紹介していく。解説は科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

不思議な現象を解き明かす科学が好きで理系に進んだリケジョ。高校、大学で化学漬けの日々を送っていた科学館職員。得意科目は理科と意外にも国語。

準惑星とは

まずは準惑星についておさらいしましょう。

準惑星の定義

image by PIXTA / 30180432

地球は惑星に分類され、冥王星は準惑星に分類されます。この惑星と準惑星は何が違うのでしょうか?

コトバンクで調べると惑星は

恒星の周囲を公転する、比較的大きな天体。国際天文学連合はこのほか、自己重力のため球形であることと、公転軌道近くに衛星以外の天体がないことを惑星の要件としている」、そして準惑星は「太陽系の中にあって、惑星と同様、太陽のまわりを楕円軌道で公転しているが、惑星よりも質量の小さい天体

とされています。

惑星も準惑星も恒星(太陽)の周りを公転していて、ある程度重さがあり球形をしている天体です。惑星と準惑星の主な違いは「公転の軌道に衛星以外の惑星があるのか?」というポイントにあります。準惑星は軌道周辺にある天体を排除していないとされているのです。天体の分類をしっかりと覚えてくださいね。

天体についてはこちらの記事を参考にしてください。

準惑星の歴史

準惑星の歴史

image by Study-Z編集部

準惑星の歴史を語るのに欠かせないのが冥王星の存在です。

冥王星が発見されたのは1930年のことになります。太陽系で一番外側にある惑星、海王星の発見が1846年です。そのひとつ内側にある天王星の発見が1781年なので、冥王星は認知されてからまだあまり時間のたっていない天体ですね。冥王星は太太陽系の9番目の惑星を探しているときに発見されました。そのため発見された当初、冥王星は惑星に分類されていたのです。しかし公転の軌道が楕円形なことなどから、冥王星を惑星として扱っていいものか議論されることとなります。

そして冥王星発見から約60年後の1992年、冥王星に続くふたつめの太陽系外縁天体平均的に海王星よりも遠くを公転する天体)の小惑星が発見されました。この小惑星はアルビオンと名付けられます。そして2005年、冥王星よりも大きいサイズと思われる天体(エリス)が発見されたのです。

この新たに発見された天体を惑星をするかどうかという議論が起こりました。そして2006年に開かれた国際天文学連合総会で惑星が明確に定義され、準惑星、太陽系小天体という分類ができました。

準惑星を紹介

それでは準惑星をご紹介していきます。

冥王星

image by PIXTA / 34650820

準惑星といえばその定義ができるきっかけとなった冥王星です。

肉眼で見ることのできない冥王星の発見は1930年のこと。冥王星の直径は2,370㎞で、直径3,474㎞の月よりもさらに小さい天体です。約6日で1回の自転する一方、公転には247年以上かかっています。

冥王星は英語でPlutoと言い、その由来はローマ神話の冥界の神プルートです。この名前を決めるとき、候補として他にもミネルヴァやクロノスが候補に挙がっていました。そして冥王星の存在を予測し、冥王星の発見場所となったローウェル天文台を作ったパーシヴァル・ローウェルのイニシャルがPLなのを理由に冥王星にしたと言われています。

エリス

冥王星と同じく2006年に準惑星とされたエリス。冥王星とほとんど同じ大きさで直径約2,326㎞程です。エリスの自転は26時間ほどで地球とあまり変わりありません。その一方で公転には558年もかかっています。気の遠くなるような時間ですね。エリスの公転の軌道は楕円形となっています。表面にはメタンでできた氷があり、冥王星と似た環境ではないかと考えられている準惑星です。

image by PIXTA / 10618790

2005年に発見されたエリスの名前の由来は、トロイア戦争の原因となったギリシャ神話の不和と争いの神、エリスです。エリスは火星の由来となったアレースの妹ともいわれ、その子供は様々な災いのもととなったと言われています。

エリスは結婚式に招かれなかった仕返しにその宴の場に「最も美しい女神に」と書かれた黄金のリンゴを投げ入れました。そのリンゴをめぐってヘーラー、アテーナ―。アプロディーテ―が争い、トロイア戦争を引き起こしたのです。トロイア戦争と言えばトロイの木馬を聞いたことがある人が多いでしょう。エリスの発見は惑星の定義について論争を巻き起こしました。そのため、どの女神が美しいかという論争を巻き起こしたエリスの名がつけられたそうです。

天体とギリシャ神話についてはこちらをどうぞ。

\次のページで「ケレス」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: