この記事では「七転八倒」について解説する。

端的に言えば、七転八倒の意味は「苦しんで転げまわること」です。四字熟語の類義語がいくつかあるので、それらもあわせて覚えておくと、より幅広いシーンで使いこなせるようになるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「七転八倒」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「七転八倒」の意味・語源・使い方

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まずは、「七転八倒」の意味を辞書で調べてみましょう。

「七転八倒」の意味は?

〘名〙 (「しちてんはっとう」とも) 苦痛のあまりころげまわってもだえ苦しむこと。また、混乱のはなはだしいことのたとえにいう。しってんばっとう。

出典:精選版 日本国語大辞典「七転八倒・七顛八倒」

「七転八倒」「七顛八倒」と書くこともあります。読み方は「しちてんばっとう」「しちてんはっとう」または「しってんばっとう」。数字を使った四字熟語はたくさんありますが、この場合の「七」や「八」は、回数が多いことを表しています。

「七転八倒」は、苦しみのあまり、何度も転げまわったり倒れたりする、つまり「苦しんで転げまわる」という意味ですね。また、「非常に混乱している」という意味合いでも使われています。

「七転八倒」の語源は?

次に、「七転八倒」の語源を見てみましょう。「七転八倒」は中国の思想書『朱子語類』の中に出てきます。朱子学は、中国の南宋時代に朱熹(朱子)が儒学を体系化した学問で、『朱子語類』は朱熹が亡くなった後、1270年に黎靖徳という人が、朱熹と門人との問答をテーマ別に編集したものです。

只当商之季、七顛八倒、上下崩頽
商の季(すえ)に當(あた)り、七転八倒して上下崩頽(ほうたい)す。

出典:朱子語類

\次のページで「「七転八倒」の例文」を解説!/

『朱子語類』に出てくる「七転八倒」は、世の中が非常に混乱している様子を表しています。

「七転八倒」の例文

次に、「七転八倒」の使い方を例文で見てみましょう。

1.結石がなかなか体外に排出されず、文字通り七転八倒の苦しさだった。
2.彼がケガの痛みで七転八倒しているのを、つらくてとても見ていられなかったと、後に彼女は語っている。
3.国連の安全保障理事会理事国の話し合いは、アメリカ、イギリス、フランスなどの西欧諸国とロシア、中華人民共和国の意見の食い違いが大きく、七転八倒しても結論が出なかった。

1.と2.は身体的な痛みがひどくて転げまわったという意味です。3.は混乱がはなはだしいという意味を使った例文ですね。

「七転八倒」の類義語は?

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「七転八倒」の類義語を調べてみましょう。よく似た四字熟語がたくさんありますよ。

「七転八倒」と「七転八起」の違い

「七転八倒」と「七転八起」。一字違うだけでそっくりですね。しかし意味は大きく違っています。「七転八倒」「苦痛のあまりもだえ苦しむこと」でした。それに対して「七転八起」は、「何度失敗しても、あきらめずにまた挑戦すること」です。「しちてんはっき」または「ななころびやおき」と読みます。

「七転八倒」では苦痛が続いてもだえている状態ですが、「七転八起」は立ち直ってまた挑戦するという前向きな状態です。見た目は似ていますが意味はまったく違いますので、間違えないように注意しましょう。

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「七難八苦」:さまざまな苦難や災難にあう

「七難八苦」は仏教用語で、「さまざまな苦難や災難にあうこと」です。七難は経典によって内容は異なりますが、例えば『法華経』では、火難、水難、羅刹難、刀杖難、鬼難、枷鎖難、怨賊難の七つ。八苦は生苦、老苦、病苦、死苦、愛別離苦(あいべつりく)、怨憎会苦(おんぞうえく)、求不得苦(ぐふとくく)、五蘊盛苦(ごおんじょうく)の八つの苦しみのことです。人生には本当に多くの困難や苦しさがあるのですね。

「四苦八苦」:あらゆる苦しみ

「四苦八苦」も仏教用語で、意味は「あらゆる苦しみ」。四苦とは人間の根源的な苦しみである生、老、病、死のことです。それに愛別離苦(愛する人と別れる苦しみ)、怨憎会苦(憎む人に出会う苦しみ)、求不得苦(欲しくても手に入らない苦しみ)、五蘊盛苦(心身が思うようにならない苦しみ)を加えて八苦となります。

「千辛万苦」「千荊万棘」:非常に多くの困難

「千辛万苦」は「せんしんばんく」と読み、「非常に多くの苦労や困難がある」という意味です。千も万も数が多いことを表しています。「千荊万棘」は「せんけいばんきょく」と読み、「多数の困難が待ち受けている」という意味です。「荊」(いばら)は、とげのある低木や植物のとげのこと。また、「棘」(とげ)は生物の表面の突起のことを指しています。

「艱難辛苦」:困難に苦しみ悩む

「艱」は苦しむ、悩む、「難」は難しい、「辛」は辛い、「苦」は苦しいという意味の文字。「艱難辛苦」は、「非常に困難な状態にあって苦しみ悩む」という意味です。「艱難汝を玉にす」という言葉は、逆境を乗り越えることで人は成長するという意味で、辛い状況に直面している人を励ます言葉でもあります。

「のた打ち回る」「悶える」:苦しくて身体をよじる

難しい四文字熟語が並びましたが、四文字熟語を使わなくても「七転八倒」は表現できます。「のた打ち回る」「苦しくて転がり回る」という意味。「悶える」は「もだえる」と読みます。思いわずらうという意味もありますが、「苦痛のあまり身体をよじる」という意味もありますよ。

「七転八倒」の反対語は「順風満帆」

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次に、「七転八倒」の反対語を見てみましょう。「順風満帆」は「じゅんぷうまんぱん」と読みます。「まんぽ」とは読みません。「順風」は追い風のこと、「満帆」は帆が風を受けていっぱいにはらんでいる様子です。「物事が順調に進んでいる」という意味になります。

\次のページで「「七転八倒」の英訳は?」を解説!/

「七転八倒」の英訳は?

次に「七転八倒」の英訳を見てみましょう。

「writhing in agony」

「writhe」は「のた打ち回る」「悶える」、「agony」は「苦悩」「苦しみ」という意味です。「death agony」は「死の苦しみ」、「writhing in agony」は「苦しみにのた打ち回る」という意味になります。

「tossing oneself about in great pain」

「toss」はよく「toss about」という形で使われ、「苦しめる、かき乱す」という意味になります。また「great pain」は「激痛」。「tossing oneself about in great pain」で七転八倒の意味です。

困難を乗り越えて「七転八倒」を使いこなそう!

この記事では、「七転八倒」についての意味、語源、類義語から英訳などを説明しました。

「七転八倒」「苦しんで転げまわること」、そして「混乱がはなはだしい」という意味でも使われています。同義語の「七難八苦」「艱難辛苦」なども合わせて覚えておきましょう。

「七転八倒」と「七転八起」は一字違いですが、意味は大きく異なります。苦しいことや辛いことがたくさんあって「七転八倒」しても、逆境を乗り越えた人は必ず成長できるはず。あきらめずに「七転八倒」を「七転八起」に変えて乗り越えてくださいね。

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国語言葉の意味

「七転八起」とは違う!「七転八倒」の意味・語源・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「七転八倒」について解説する。

端的に言えば、七転八倒の意味は「苦しんで転げまわること」です。四字熟語の類義語がいくつかあるので、それらもあわせて覚えておくと、より幅広いシーンで使いこなせるようになるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「七転八倒」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「七転八倒」の意味・語源・使い方

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まずは、「七転八倒」の意味を辞書で調べてみましょう。

〘名〙 (「しちてんはっとう」とも) 苦痛のあまりころげまわってもだえ苦しむこと。また、混乱のはなはだしいことのたとえにいう。しってんばっとう。

出典:精選版 日本国語大辞典「七転八倒・七顛八倒」

「七転八倒」「七顛八倒」と書くこともあります。読み方は「しちてんばっとう」「しちてんはっとう」または「しってんばっとう」。数字を使った四字熟語はたくさんありますが、この場合の「七」や「八」は、回数が多いことを表しています。

「七転八倒」は、苦しみのあまり、何度も転げまわったり倒れたりする、つまり「苦しんで転げまわる」という意味ですね。また、「非常に混乱している」という意味合いでも使われています。

「七転八倒」の語源は?

次に、「七転八倒」の語源を見てみましょう。「七転八倒」は中国の思想書『朱子語類』の中に出てきます。朱子学は、中国の南宋時代に朱熹(朱子)が儒学を体系化した学問で、『朱子語類』は朱熹が亡くなった後、1270年に黎靖徳という人が、朱熹と門人との問答をテーマ別に編集したものです。

只当商之季、七顛八倒、上下崩頽
商の季(すえ)に當(あた)り、七転八倒して上下崩頽(ほうたい)す。

出典:朱子語類

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