この記事では「千里同風」について解説する。

端的に言えば「千里同風」の意味は「天下が平和に治まっていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「千里同風」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「千里同風」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「千里同風(せんりどうふう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「千里同風」の意味は?

「千里同風」には、次のような意味があります。

《遠く隔たった地方にも、同じ風が吹く意から》世の中がよく治まっていること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「千里同風」

この言葉は「世の中が平和で、よく治まっていること」を意味します。「千里」は「それくらい遠く」、「風」は「世の中の状況、情勢、風俗」を意味し、「遠くの地も同じ情勢である」という意味が転じ、そう使われるようになりました。

辞典によっては「世の中全体、どこも乱れている」とするものもあり、「同じように乱れている」ならその意味にも使えますね。

中国の故事を由来とする言葉ですが、風が吹き抜けて千里を渡るイメージもあるでしょうか。その情景に雄大な平和を感じるのか、戦の混乱が風に乗って来るのを感じるのか、みなさんも想像してみてくださいね。

いずれにしても、「遠くの地でも(この近くの地と)同じような状況・情勢である」というニュアンスが大切になります。

「千里同風」の語源は?

この言葉は、中国後漢時代、王充という人物が記した思想書『論衡(ろんこう)』に見ることが出来ます。その中にあるのが「千里不同風、百里不共雷」という記述。「千里に渡って風が吹き荒れることもなく、百里に渡って雷が鳴り響くこともない(=天下は広く平和である)」という意味になります。

もともとは、「風」や「雷」で「世の中が乱れる」ということを示していたのですね。四字熟語となるにあたって縮められ、現在のように使われるようになったのでしょう。

この由来からも、「平和である」「乱れている」の両方の意味に使えるということが納得できるのではないでしょうか。

\次のページで「「千里同風」の使い方・例文」を解説!/

「千里同風」の使い方・例文

「千里同風」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・大きな戦争が終わった後、千里同風であることがずっと続けばいいのにとみんなが強く願っていたはずだ。

・遠くに引っ越してしまった友達と久しぶりに連絡を取って様子を聞いたら、千里同風でこっちもとても平和さと言っていた。

・きっかけはとある田舎町で起きた事件だったが、今や千里同風で、国全体でも同じく大きな混乱が生じている。

世の中が広く平和である」もしくは「遠くと近くが同じ状況である」というニュアンスが伝わりますでしょうか。例文の三番目は、「悪い情勢」という意味でご紹介しています。

この四字熟語は「平和である」だけでなく、ネガティブな使い方もできるのは先に述べた通り。たとえば「戦争」と関連して使った場合、「戦争が終わって世の中が平和になった」のか、「まだ戦争中でどこもひどい状況である」のか、どちらにも使えるはずです。

読解問題などで出題された場合は、そうしたことを文脈から読み取る必要が出てくるでしょう。一つの意味に飛びつかず、どのような意図で使われているかしっかり読み取ってくださいね。

「千里同風」の類義語は?違いは?

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「千里同風」の類義語は、「万里同風」、「五風十雨」、「天下泰平」などがいいでしょう。「万里同風」は漢字が変化しただけで同じ意味とわかると思いますので、ここでは他の二つについて解説します。

「五風十雨」、「天下泰平」

「五風十雨(ごふうじゅうう)」は「天候が順調なこと。天下が平和なこと」を意味する四字熟語です。これも「千里同風」と同じく『論衡』を由来にしています。

天候が「順調」というのがポイントで、「五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降る」ので作物が順調に育つ=だから平和である、という流れ。風や雨があっても平和なのです。平和という言葉に対する当時の人たちのリアルな考えも見てとれる面白い言葉といえるでしょう。

「天下泰平(てんかたいへい)」は「世の中が極めて穏やかに治まっていること」。「泰平」は「世の中がしずかに治まっていること」を指す言葉で、これだけで使用されることもあります。押さえておきましょう。

どちらの四字熟語も、「広く平和である」という意味で「千里同風」と同義語になります。「近くと遠くが同じ状況」という意味は持っていないことにも注意が必要です。

\次のページで「「千里同風」の対義語は?」を解説!/

・都会の生活から一転して田舎暮らしに切り替えたが、そこでは五風十雨で毎日がとても穏やかに暮らしていられる。

・曾祖母はいつも、戦争が終わり天下泰平の世の中になって、あなたたちみんなが安心して暮らせるようになったことに、感謝しなければいけないと言っている。

「千里同風」の対義語は?

「千里同風」の対義語には、「天下多事」などが考えられます。

「天下多事」

「天下多事」は「社会で事件が多いこと、社会が騒がしいこと」を表す四字熟語です。「多事」は「仕事が多い、忙しい」という意味でも使えますが、ここでは「事件が多い、世間が穏やかでない」という意味になります。

社会的な事件や事故が多い時には、時事問題などでも使われる可能性がありますから、こうした言葉にも注意しておきましょう。

・警察官である叔父は毎朝ニュースを見ながら、本当に今の時代はどこもかしこも天下多事だ、と嘆いている。

「千里同風」の英訳は?

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「千里同風」の英語訳は、「equally peaceful and calm」などで表現できるでしょう。

「equally peaceful and calm」

直訳すれば「等しく平和で穏やかである」ということ。他にも「tranquil(穏やかな)」「quiet(静かな)」などと入れ替えてもいいでしょう。

先に解説した通り、色々な意味で使うことが出来ますので、文脈に応じて単語を変える必要があります。「混乱した」なら「confused」、「荒廃した」なら「desolate」などが使えるでしう。

「同じ状態である」ことがどんな状態なのかをしっかり表現したほうが、英語表現としてはより良くなります。

\次のページで「「千里同風」を使いこなそう」を解説!/

都市も田舎も、同じように平和で穏やかだ(千里同風である)。
The city and the countryside are equally peaceful and calm.

「千里同風」を使いこなそう

この記事では「千里同風」の意味・使い方・類語などを説明しました。

千里ほど遠くでも同じ状況である、という広い視野を持った言葉です。もしかすると、どこに行っても人間は同じ、という少しシニカルな語り手の視点もあるのかもと思わせます。

「世の中が平和である」という意味が一般的に使われるようになったのは、戦争などを経て人々の意識がそちらに向いてきたから、なのかもしれませんね。

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【四字熟語】「千里同風」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「千里同風」について解説する。

端的に言えば「千里同風」の意味は「天下が平和に治まっていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「千里同風」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「千里同風」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「千里同風(せんりどうふう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「千里同風」の意味は?

「千里同風」には、次のような意味があります。

《遠く隔たった地方にも、同じ風が吹く意から》世の中がよく治まっていること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「千里同風」

この言葉は「世の中が平和で、よく治まっていること」を意味します。「千里」は「それくらい遠く」、「風」は「世の中の状況、情勢、風俗」を意味し、「遠くの地も同じ情勢である」という意味が転じ、そう使われるようになりました。

辞典によっては「世の中全体、どこも乱れている」とするものもあり、「同じように乱れている」ならその意味にも使えますね。

中国の故事を由来とする言葉ですが、風が吹き抜けて千里を渡るイメージもあるでしょうか。その情景に雄大な平和を感じるのか、戦の混乱が風に乗って来るのを感じるのか、みなさんも想像してみてくださいね。

いずれにしても、「遠くの地でも(この近くの地と)同じような状況・情勢である」というニュアンスが大切になります。

「千里同風」の語源は?

この言葉は、中国後漢時代、王充という人物が記した思想書『論衡(ろんこう)』に見ることが出来ます。その中にあるのが「千里不同風、百里不共雷」という記述。「千里に渡って風が吹き荒れることもなく、百里に渡って雷が鳴り響くこともない(=天下は広く平和である)」という意味になります。

もともとは、「風」や「雷」で「世の中が乱れる」ということを示していたのですね。四字熟語となるにあたって縮められ、現在のように使われるようになったのでしょう。

この由来からも、「平和である」「乱れている」の両方の意味に使えるということが納得できるのではないでしょうか。

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