この記事では「売り言葉に買い言葉」という慣用句を解説する。
「売り言葉に買い言葉」とは簡単にいうと、暴言に対して暴言で返すことです。相手にあおられ、思ってもみなかった言葉を言ってしまい、後悔している人もいると思う。一度口から出てしまった言葉は取り消せない、発言には注意したいものですが…。そんな「売り言葉に買い言葉」のくわしい意味や使い方を知って、冷静になろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「売り言葉に買い言葉」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「売り言葉に買い言葉」の意味・使い方

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たとえば友人と一緒に映画を見に行った後。「あなたが見たいって言った映画、くだらなかったね、お金と時間の無駄だった」なんて言うから、「あなたが選んだ映画でしょう、付き合わされてうんざり!」と反論。それから、どっちが悪い、そもそも感性が合わない、もう二度と一緒に見ない……と仲たがい。

このように、口げんかになるきっかけの発言が「売り言葉に買い言葉」です。くわしい意味や使い方をみていきましょう。

「売り言葉に買い言葉」の意味

それではまず辞書で意味を調べてみましょう。

挑発的なことばを受けて、負けずに強い調子で言い返す。また、悪口には悪口で言い返す。

【解説】もとは、物の売買に際しての売り手と買い手との丁々発止のことばのやり取りを指したようです。そこから、けんか腰のことばのやり取り、特にけんかの発端を作るようなことばの受け答えを指して用いられるようになりました。

出典:ことわざを知る辞典 「売り言葉に買い言葉」より

辞典の解説にあるように、相手の乱暴な言葉に腹を立て同じように暴言で返すことを、売買にたとえたのが「売り言葉に買い言葉」です。怒らせるために意図的な場合もありますが、何の気なしの言葉が相手の癪に触って逆上するケースもあります。

「売る」は金銭と引き換えに商品や権利を渡す行為のほかにもいろいろな意味が。有名になることを「名を売る」、自分の利益のために裏切ることを「仲間を売る」。そして「恩を売る」「けんかを売る」など相手が行動するように仕掛けることをいいます。ですから仕掛けるのが「売り言葉」、受け返しが「買い言葉」です。

どうして「売り言葉に買い言葉」になってしまうの?

どうして乱暴で心無い言葉を言われたら、同じように言い返してしまうのでしょうか。人には「やられたらやりかえす」気持ち、心理学的にいうと「返報性の原理」があります。以前お土産をもらった人にお土産を買う、譲られたら次は譲る、秘密を打ち明けられたらこちらも極秘事項を話す、などもらったら返したくなる性分です。

「返報性の原理」はマイナス方向、殴られたら殴り返す、奪われたら奪い返すという復讐や報復の「敵意の返報性」にもなります。このような心理から、売られた言葉は買ってやる、となってしまうようです。

\次のページで「「売り言葉に買い言葉」の使い方・例文」を解説!/

「売り言葉に買い言葉」の使い方・例文

意味が分かったところで、使って確認しましょう。

・父親と売り言葉に買い言葉の口げんかをした彼は家出した。
・売り言葉に買い言葉で、思ってもないひどい言葉を口にして友人を泣かせてしまった。
・売り言葉に買い言葉の応酬で、取引交渉は決裂してしまった。

いずれの例文も修羅場ですね。身内だと特に言葉を選びません。対等もしくは下に見ている相手には容赦なく口撃してしまいます。ののしり合い結局お互いが傷ついて。冷静になってから謝っても、以前のような親しい間柄にはなかなか戻れません。この後の対義語の項で紹介しますが、強い口調で押してくる相手をやんわり受け止め流すテクニックが必要になりますね。

「売り言葉に買い言葉」の類義語は?

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悪口に悪口で対抗する「売り言葉に買い言葉」とは少し意味が違いますが、へりくつを返す・言葉のケンカといったニュアンスの表現をご紹介しましょう。

「ああ言えばこう言う」:意見や忠告にへりくつを言う

「ああ言えばこう言う」の意味は、何か言われたら反論したり理屈をこねたりして素直に聞き入れない・従わないことです。たとえば「寒いから上着を着なさい」と言っても「誰も着ていない」と理由にならない理由で拒絶する、親子の会話に多いかもしれませんね。「息子は反抗期なのだろう、ああ言えばこう言う」と使われます。

\次のページで「「右と言えば左」:言うことすべてに反対すること」を解説!/

「右と言えば左」:言うことすべてに反対すること

「右と言えば左」は人が言うことすべて反対すること。「山と言えば川」も同じ意味です。「デートに誘っても、右と言えば左の彼女に振り回される」と使います。わがままで自分勝手なイメージですね。好きなら許されるのかもしれませんが、ビジネスで「右と言えば左のワンマン社長」では部下はついていけないでしょう。

「舌戦(ぜっせん)」:言い争い

「舌戦」は言葉の戦い、激しく議論することです。「舌」は口内にある味覚や発音・物を飲み込むなど重要な器官。読み方で「した」は「話すこと」、「ぜつ」は「言葉」の意味を持ちます。使い方は「課長と主任が仕事のやり方をめぐって舌戦した」「選挙前、候補者が舌戦を繰り広げた」などです。

「売り言葉に買い言葉」の対義語は?

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それでは対義語、悪口を言われても悪口を返さない意味の言葉をご紹介します。

「茶碗を投げれば綿で抱えよ」:強硬な相手は柔らかく受け止めよう

「茶碗を投げれば綿で抱えよ」は、怒る相手が強く出てきてもやんわりと受け止めることが良いということわざです。投げられた茶碗も綿で受け止めたら割れません、こちらが傷つくことないでしょう。「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」と言いますが「茶碗を投げれば綿で抱えよ」が円満の秘訣かもしれませんね。

「柳に風」:逆らわず受け流すこと

「柳に風」は、風に柳がなびくように逆らわないこと、逆らわずに上手く流すことです。「柳」だけでも逆らわずに素直、受け流すという意味を持ちます。使い方は「飄々とする彼はつねに柳に風だ」「クレームの電話にも彼女は柳に風と受け流した」などです。

\次のページで「「売り言葉に買い言葉」を英語で表現してみよう」を解説!/

「売り言葉に買い言葉」を英語で表現してみよう

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「売り言葉に買い言葉」の英語表現は「tit for tat」:しっぺ返し 、または「blow for blow」:殴られたら殴り返す、がよく使われるようです。「verbal」口頭の、言葉による、と書かれていることもあります。それでは「tit for tat」の表現を詳しくみていきましょう。

「tit for tat」:しっぺ返し

「しっぺ返し」とはやられたらすぐにやり返すこと。「tit」の辞書で調べた意味は乳首ですがもともとは「tip」で「tat」と同じ、軽くたたく意味のようです。軽くたたき合うことを語呂合わせ的に「tit for tat」となり、しっぺ返し・売り言葉に買い言葉の意味になりました。使って確認します。

・He gave me tit for tat.
(彼は私にしっぺ返しした)
・We are playing tit for tat.
(私たちは言い合っている)
・You said tit for tat,so I said too.
(売り言葉に買い言葉を言うから私も言ったの)

「売り言葉に買い言葉」、買い方を工夫して

この記事では「売り言葉に買い言葉」の意味・使い方・類語などを説明しました。意味は悪口に対し悪口で返すこと、類義語は「ああ言えばこう言う」、対義語は「茶碗を投げれば綿で抱えよ」、英訳は「tit for tat」を使うことが分かりましたね。

言い返すには勇気が必要だと思います。遠慮また悪く思われたくないなどの気持ちが働き、暴言を返すのはなかなか出来ないかと。しかしながらナメられても困りますよね、自分の意見をはっきりと伝えることが重要です。売られた言葉の買い方を考える余裕があると、優勢になれるのではないでしょうか。

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国語言葉の意味

やられたらやりかえす!「売り言葉に買い言葉」の意味や使い方・類語などを語学系主婦ライターがわかりやすく解説

この記事では「売り言葉に買い言葉」という慣用句を解説する。
「売り言葉に買い言葉」とは簡単にいうと、暴言に対して暴言で返すことです。相手にあおられ、思ってもみなかった言葉を言ってしまい、後悔している人もいると思う。一度口から出てしまった言葉は取り消せない、発言には注意したいものですが…。そんな「売り言葉に買い言葉」のくわしい意味や使い方を知って、冷静になろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「売り言葉に買い言葉」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「売り言葉に買い言葉」の意味・使い方

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たとえば友人と一緒に映画を見に行った後。「あなたが見たいって言った映画、くだらなかったね、お金と時間の無駄だった」なんて言うから、「あなたが選んだ映画でしょう、付き合わされてうんざり!」と反論。それから、どっちが悪い、そもそも感性が合わない、もう二度と一緒に見ない……と仲たがい。

このように、口げんかになるきっかけの発言が「売り言葉に買い言葉」です。くわしい意味や使い方をみていきましょう。

「売り言葉に買い言葉」の意味

それではまず辞書で意味を調べてみましょう。

挑発的なことばを受けて、負けずに強い調子で言い返す。また、悪口には悪口で言い返す。

【解説】もとは、物の売買に際しての売り手と買い手との丁々発止のことばのやり取りを指したようです。そこから、けんか腰のことばのやり取り、特にけんかの発端を作るようなことばの受け答えを指して用いられるようになりました。

出典:ことわざを知る辞典 「売り言葉に買い言葉」より

辞典の解説にあるように、相手の乱暴な言葉に腹を立て同じように暴言で返すことを、売買にたとえたのが「売り言葉に買い言葉」です。怒らせるために意図的な場合もありますが、何の気なしの言葉が相手の癪に触って逆上するケースもあります。

「売る」は金銭と引き換えに商品や権利を渡す行為のほかにもいろいろな意味が。有名になることを「名を売る」、自分の利益のために裏切ることを「仲間を売る」。そして「恩を売る」「けんかを売る」など相手が行動するように仕掛けることをいいます。ですから仕掛けるのが「売り言葉」、受け返しが「買い言葉」です。

どうして「売り言葉に買い言葉」になってしまうの?

どうして乱暴で心無い言葉を言われたら、同じように言い返してしまうのでしょうか。人には「やられたらやりかえす」気持ち、心理学的にいうと「返報性の原理」があります。以前お土産をもらった人にお土産を買う、譲られたら次は譲る、秘密を打ち明けられたらこちらも極秘事項を話す、などもらったら返したくなる性分です。

「返報性の原理」はマイナス方向、殴られたら殴り返す、奪われたら奪い返すという復讐や報復の「敵意の返報性」にもなります。このような心理から、売られた言葉は買ってやる、となってしまうようです。

\次のページで「「売り言葉に買い言葉」の使い方・例文」を解説!/

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