この記事では「念頭に置く」という言葉を説明する。
「念頭に置く」とは簡単にいうと「いつも忘れないでいる」こと。ビジネスシーンでも使われ、馴染みのある言葉でしょうが、誤用や使い方に注意しなければならない。
今回、語学系主婦ライター・小島ヨウを呼んだ、一緒に「念頭に置く」を解説していきます。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「念頭に置く」の意味や使い方

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「念頭(ねんとう)に置く」は慣用句です。「置く」を「入れる」と誤用したり、ビジネスシーンでうっかり目上の方に使うと失礼になったり、と注意が必要な言葉。しっかり意味と使い方をチェックしましょう。

「念頭に置く」の意味

「念頭に置く」を辞書で調べると、次のようになります。

常に心にかける。いつも忘れないでいる。

出典:goo辞典「念頭に置く」

「念頭」とは心の中の思い・胸のうち、という意味です。「念」も辞書で調べてみましょう。

1.思い。気持ち。
2.心くばり。注意。
3.かねての望み。念願。
4.仏語(ア.心の動き。記憶する動き。イ.非常に短い時間。一念。刹那。ウ.対象に向かて心を集中し、瞑想すること。)

出典:goo辞典「念(ねん)」

「頭」の意味は多々ありますが、ここでは脳の動き・考力・考え、という意味で使われています。そして「置く」の意味も様々ありますが、「念頭に置く」の「置く」は下記の用途です。

1.人や物をある位置・場所にとどめる。
ア.そこに位置させる。
イ.ある状態にすえる。
ウ.心をそこにとどめる。

出典:goo辞典「置く(おく)」より一部抜粋

「念頭に置く」は思い(念)や考え(頭)を心に留めておく(置く)の3つが合わさって、一つの言葉になっていることが分かりました。

「念頭に置く」の使い方・例文

それでは、「念頭に置く」を使ってみましょう。

1.リスクを念頭に置いて、株式投資している。
2.お客様のことを念頭に置いて、きめ細かいサービスを続けていきます。
3.少しの気のゆるみが大きな事故につながることを念頭に置いて、作業してほしい。

1.は一般的な使い方で、物事を理解して頭に定着している状態を表現しています。

2.はビジネスなどで自身の意思を表明した例文、「つねに念頭に置いて……」と使いがちです。「念頭に置く」という慣用句じたい、つねに心にとどめておくという意味があるので、「つねに」を使うと二重表現になってしまいます。注意しましょう。

3.もビジネスシーン、上司が部下たちに向かって注意を促しているもの。目上の方、取引先や顧客に向けて「念頭に置いてください」という表現は押しつけがましく、適切でありません。留意してほしい時には「ご承知おきください」などの丁寧語を使う方が無難ですよ。

「念頭に置く」の類義語はなんだろう?

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では次に類義語をみていきましょう。常に意識している、忘れない、という意味を持つ言葉をご紹介します。

\次のページで「頭に入れる:理解して覚えておく」を解説!/

頭に入れる:理解して覚えておく

「頭に入れる」とはしっかり記憶にとどめること。知識や経験を身につけている・考慮できる状態にしておく・いつでも思い出したり実行したりできること、も「頭に入れる」という表現が使われます。

「頭に入れる」と「念頭に置く」、ニュアンスが違えど意味が似ていることから述語が混乱して、「念頭に入れる」と間違った使い方をしてしまうようです。印象が大事なビジネスでは誤用とされる言葉は気を付けた方が良いですね。

肝に銘じる:けっして忘れないようにする

「肝(きも)に銘(めい)じる」とは、心に刻みつけて忘れない、という意味です。「肝」とは内臓の主要部分、主に肝臓を指し、精神力・急所・思慮という意味も。「銘ずる」とは書き付ける・心に深く刻みつけること。言い聞かせる意味の「命じる」は誤りです。

体の大事な臓器に刻み付けるという表現の「肝に銘じる」は「念頭に置く」よりも強いニュアンス。「上司の言葉を肝に銘じて、精進する」と使えば、意識する以上に絶対忘れない、といった意思を表せます。

心に留める:忘れないでおく

「心に留める」とは常に意識して、忘れないでおくことです。「留める」は後に残す、固定するといった意味。とめる、とどめる、二通りの読み方がありますが、「心に留める」は「とめる」が一般的です。「先生の助言を心に留めて、真面目に勉強する」と使われ、過去の出来事に対し、忘れないという気持ちを表現します。

「念頭に置く」の対義語は?

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「念頭に置く」の対義語は簡単にいえば「念頭にない」こと。特定のことに関し、それを想定しない・考えていない、という意味です。気づかない、考慮しない、眼中にない……などいろんな表現があります。

また「忘れる」ことも、心・頭・意識から離れてしまった、記憶にないという「念頭に置く」の反対の意味になるでしょう。では、「忘れる」意味を持つ言葉を2つ紹介します。

失念(しつねん):うっかり忘れること

ビジネスなどで「忘れた」ことを硬い表現で「失念しておりました」といいます。ついうっかり、忘れた、忘れていた、という意味で、謝罪の意も含まれた丁寧な印象になる言葉です。出来事に対して使われ、失くし物には使いません。自分をへりくだる謙譲語ですから、目上の人や取引先がした物忘れに対して使わないのでご注意ください。

忘却(ぼうきゃく):すっかり忘れてしまう

「忘却」は忘れ去ってしまうこと、経験したことを思い出せない状況です。「忘却のかなた」とは、何も覚えていない、すっかり忘れてしまった状態を表現しています。

記憶は時間とともに薄くなり失われていくもの。関心の薄いこと・不都合なことは忘れやすく、感動体験や反復経験は記憶を保持できるといわれます。忘れないよう、学習や勉強は繰り返しすることが大事ですね。

「念頭に置く」の英訳は「keep in mind」

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「念頭に置く」の英訳は「keep in mind」です。直訳すると「心の中にずっと保持している」こと。動詞は「keep」:続ける・保つ、のほか「bear」:産む・持つ、という単語も使われます。詳しい内容は英語の記事でご確認ください。

「忘れない」意味の英単語は「remember」が一般的。「unforgettabel」は忘れられない・記憶に残ると訳される言葉です。

さて、ここでは「mindful」をご紹介しましょう。

\次のページで「「mindful」:心にとめる」を解説!/

「mindful」:心にとめる

心を指す「mind」に満ちるの形容詞接尾辞「ful」を付けた「mindful」は気を付ける・心に留める・気を配る、と訳される単語です。「mindful of」と使われます。

・Be mindful of your health.
(健康に留意してください)
・My mother is always mindful of me.
(母はいつも私を気遣ってくれる)
・He is mindful of safe driving.
 (彼は安全運転に心がけている)

例文で分かるように「mindful」は「keep in mind」と同じような意味で使われていますね。「mind」は名詞では記憶・意見・精神、動詞では心にとめる・注意する、といった訳。なじみ深く簡単と思っても、様々な意味を持ちいろいろな使い方をする言葉です。ぜひチェックしておきましょう。

「念頭に置く」の使い方、忘れないようにしよう

この記事では「念頭に置く」の意味・使い方・類語などを説明しました。「念頭に置く」とは常に意識して忘れないようにすること。「念頭に入れる」は誤用で、「常に」という意味が含まれていること、目上の方・取引先に対しては使わないことが確認できました。

ビジネスシーンで使われる言葉は堅苦しく難しいですね。丁寧でへりくだっているつもりでも、多用すると失礼になることも。間違った使い方をしないよう、念頭に置いておかねばなりません。

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国語言葉の意味

「念頭に置く」が正しく「入れる」はNG!意味や使い方、類語・対義語などを語学系主婦ライターがわかりやすく解説

この記事では「念頭に置く」という言葉を説明する。
「念頭に置く」とは簡単にいうと「いつも忘れないでいる」こと。ビジネスシーンでも使われ、馴染みのある言葉でしょうが、誤用や使い方に注意しなければならない。
今回、語学系主婦ライター・小島ヨウを呼んだ、一緒に「念頭に置く」を解説していきます。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「念頭に置く」の意味や使い方

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「念頭(ねんとう)に置く」は慣用句です。「置く」を「入れる」と誤用したり、ビジネスシーンでうっかり目上の方に使うと失礼になったり、と注意が必要な言葉。しっかり意味と使い方をチェックしましょう。

「念頭に置く」の意味

「念頭に置く」を辞書で調べると、次のようになります。

常に心にかける。いつも忘れないでいる。

出典:goo辞典「念頭に置く」

「念頭」とは心の中の思い・胸のうち、という意味です。「念」も辞書で調べてみましょう。

1.思い。気持ち。
2.心くばり。注意。
3.かねての望み。念願。
4.仏語(ア.心の動き。記憶する動き。イ.非常に短い時間。一念。刹那。ウ.対象に向かて心を集中し、瞑想すること。)

出典:goo辞典「念(ねん)」

「頭」の意味は多々ありますが、ここでは脳の動き・考力・考え、という意味で使われています。そして「置く」の意味も様々ありますが、「念頭に置く」の「置く」は下記の用途です。

1.人や物をある位置・場所にとどめる。
ア.そこに位置させる。
イ.ある状態にすえる。
ウ.心をそこにとどめる。

出典:goo辞典「置く(おく)」より一部抜粋

「念頭に置く」は思い(念)や考え(頭)を心に留めておく(置く)の3つが合わさって、一つの言葉になっていることが分かりました。

「念頭に置く」の使い方・例文

それでは、「念頭に置く」を使ってみましょう。

1.リスクを念頭に置いて、株式投資している。
2.お客様のことを念頭に置いて、きめ細かいサービスを続けていきます。
3.少しの気のゆるみが大きな事故につながることを念頭に置いて、作業してほしい。

1.は一般的な使い方で、物事を理解して頭に定着している状態を表現しています。

2.はビジネスなどで自身の意思を表明した例文、「つねに念頭に置いて……」と使いがちです。「念頭に置く」という慣用句じたい、つねに心にとどめておくという意味があるので、「つねに」を使うと二重表現になってしまいます。注意しましょう。

3.もビジネスシーン、上司が部下たちに向かって注意を促しているもの。目上の方、取引先や顧客に向けて「念頭に置いてください」という表現は押しつけがましく、適切でありません。留意してほしい時には「ご承知おきください」などの丁寧語を使う方が無難ですよ。

「念頭に置く」の類義語はなんだろう?

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では次に類義語をみていきましょう。常に意識している、忘れない、という意味を持つ言葉をご紹介します。

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