この記事では「拈華微笑」について解説する。

端的に言えば拈華微笑の意味は「言葉を使わず心から心へと伝えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「拈華微笑」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「拈華微笑」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「拈華微笑」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。仏語でもある「拈華微笑」の読み方は「ねんげみしょう」であり、「びしょう」と間違いやすいので注意が必要です。

「拈華微笑」の意味は?

「拈華微笑」には、次のような意味があります。語源の前に、現在使われている意味をきっちりチェックしておきましょう。

1.言葉を使わず、心から心へと伝えること。また、伝えることができること。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「拈華微笑」

「拈」は指先でひねったりつまんだりすること、「華」は花のことですが仏教語としては蓮華(れんげ)のことです。こういったことから、蓮華の花を指でつまむようすを見て微笑んでいるということを表しています。

さらに、蓮華の花をつまむのを見るだけで何も言葉を聞いていないのに、意図することをくみ取って理解しているという意味合いになっていますよ。言葉を発せずとも意図や心の内が伝わるということです。

「拈華微笑」の語源は?

次に「拈華微笑」の語源を確認しておきましょう。

「拈華微笑」は、仏教書『無門関(むもんかん)』第六則の世尊拈花(せそんねんか)に由来します。『無門関』は、中国南宋時代に臨済宗の僧である無門慧開(むもんえかい)によって書かれました。そこには、釈迦(しゃか)が霊鷲山(りゅうしゅうざん)で説法したときの逸話が残っています。

世尊が一本の蓮華を手にとって聴衆に示されたときに、皆は黙っているばかりでした。その中で、迦葉尊者(かしょうそんじゃ)だけが表情を緩めてにっこりと微笑んだことから、釈迦は覚りの心を言葉や文字にせず別の伝え方で伝えていこうとおっしゃったということです。

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「拈華微笑」の使い方・例文

「拈華微笑」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な面もあわせてチェックしていきますよ。

1.彼とは幼なじみで拈華微笑の間柄と言えるが、百科事典のような彼の専門的な知識にはついていけない。
2.釈尊の教えや真理についての学びは、拈華微笑に至る境地まで続けたいものだ。

例文1.は、長い付き合いのある友人について、物言わずともわかる間柄であるということを表しています。例文の2.のほうは、容易には身につかない心から心へと伝えることができるように精進を続けたいということですね。

文法的に見てみると、例文では「拈華微笑の…」や「拈華微笑に…」というように名詞として使っています。形容動詞のように「…な」や動詞のように「…する」という使い方はしませんよ。

「拈華微笑」の類義語は?違いは?

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それでは、「拈華微笑」の類義語についての説明です。よく似た意味の四字熟語がいくつかあるので、一緒に詳しく見ていきましょう。

「以心伝心」

「拈華微笑」の類義語には、「以心伝心(いしんでんしん)」があります。意味は、文字や言葉を使わなくともお互い心と心で通じ合うことです。「心を以って心に伝う」と訓読し、心を通じて心に伝えるということを表しています。

もともとは禅宗の言葉であり、言葉や文字で表しきれない仏法の神髄を師から弟子の心へと伝えるという意味でした。そこから転じて、言葉なしで心で通じ合うことを表すようになっています。

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「教外別伝」

もう一つの類義語には、「教外別伝(きょうげべつでん)」があります。読み方は「きょうがい」ではなく「きょうげ」となっているので、注意が必要です。悟りは言葉や文字だけで伝えきれるものではなく、直接心から心へと伝えるものだという意味になっています。

こちらも禅宗の言葉となっており、言葉や文字による教えのほかに別に伝えるべきことがあるということです。

「拈華微笑」の対義語は?

次は、「拈華微笑」の対義語についての説明です。言葉なしでも伝わるという意味の「拈華微笑」でしたので、言葉が必要という意味の対義語について見ていきましょう。

「察言観色」

「拈華微笑」の対義語には、「察言観色(さつげんかんしき)」があります。意味のほうは、人の言うことを慎重に吟味し顔つきをよく見てから、その人の性格や考え方を見極めることです。「言を察して色を観る」と読み下すことができます。

ちょうど「拈華微笑」とは反対の意味になりますが、師と弟子の間柄における「拈華微笑」に対して、「察言観色」は欺かれないように見極めるという場合においてのものです。「察言観色」は信頼関係のない状態でのことなので状況に違いがあります。

「提耳面命」

もう一つの対義語には、「提耳面命(ていじめんめい)」があります。懇切丁寧に言葉によって教え諭すという意味です。「提耳」は耳を引き寄せること、「面命」は面前で言いつけることを表しています。「耳を堤して面(まのあたり)に命ず」と訓読できますよ。

こちらは丁寧に言葉によって教え諭すということなので、「拈華微笑」とはちょうど反対の意味なっています。

「拈華微笑」の英訳は?

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最後に、「拈華微笑」の英訳についての説明です。「拈華微笑」はエピソードを含む特徴のある仏語なので、意味合いとして通じる英訳を見ていきましょう。

「heart-to-heart communication」

「拈華微笑」の英訳には、「heart-to-heart communication」があります。直訳すると「心からの伝達」です。「heart-to-heart」は「率直な、心からの、腹を割った」という意味があります。

簡単に表すなら、「telepathy」とすると「テレパシー」があり言葉なしでの意思疎通をするイメージをすることができますね。

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「拈華微笑」を使いこなそう

今回の記事では「拈華微笑」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「拈華微笑」の意味は、言葉なしで心から心へと伝えることでした。初見では意味を想像しづらい四字熟語なので、語源をチェックしておくといいですね。

類義語の「以心伝心」は同じような意味を表しますが、「以心伝心」のほうが一般的に知られており頻繁に使われる四字熟語です

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国語言葉の意味

【四字熟語】「拈華微笑」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「拈華微笑」について解説する。

端的に言えば拈華微笑の意味は「言葉を使わず心から心へと伝えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「拈華微笑」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「拈華微笑」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「拈華微笑」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。仏語でもある「拈華微笑」の読み方は「ねんげみしょう」であり、「びしょう」と間違いやすいので注意が必要です。

「拈華微笑」の意味は?

「拈華微笑」には、次のような意味があります。語源の前に、現在使われている意味をきっちりチェックしておきましょう。

1.言葉を使わず、心から心へと伝えること。また、伝えることができること。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「拈華微笑」

「拈」は指先でひねったりつまんだりすること、「華」は花のことですが仏教語としては蓮華(れんげ)のことです。こういったことから、蓮華の花を指でつまむようすを見て微笑んでいるということを表しています。

さらに、蓮華の花をつまむのを見るだけで何も言葉を聞いていないのに、意図することをくみ取って理解しているという意味合いになっていますよ。言葉を発せずとも意図や心の内が伝わるということです。

「拈華微笑」の語源は?

次に「拈華微笑」の語源を確認しておきましょう。

「拈華微笑」は、仏教書『無門関(むもんかん)』第六則の世尊拈花(せそんねんか)に由来します。『無門関』は、中国南宋時代に臨済宗の僧である無門慧開(むもんえかい)によって書かれました。そこには、釈迦(しゃか)が霊鷲山(りゅうしゅうざん)で説法したときの逸話が残っています。

世尊が一本の蓮華を手にとって聴衆に示されたときに、皆は黙っているばかりでした。その中で、迦葉尊者(かしょうそんじゃ)だけが表情を緩めてにっこりと微笑んだことから、釈迦は覚りの心を言葉や文字にせず別の伝え方で伝えていこうとおっしゃったということです。

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