空に見える惑星。それらにはもちろん名前が付けられている。

惑星の名前はギリシャ神話やローマ神話が由来となっているものが多い。惑星に限らず天体は神話との関係が密接で、興味深い物語がたくさんある。プラネタリウムや星座の本でギリシャ神話を聞いたことがある人も多いでしょう。

そこで今回は惑星の名前の由来を、ギリシャ神話とともに紹介していく。解説は科学館職員たかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

不思議な現象を解明する科学が好きで理系に進んだリケジョ。高校、大学で化学漬けの日々を送っていた科学館職員。

惑星とは

惑星とは恒星の周りを公転している天体のうち、十分な重さがあって球状となり公転軌道に衛星以外の天体がないもののことです。太陽系に惑星は8個。太陽から近い順に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星があります。

惑星の名前に関係が深いギリシャ神話とローマ神話

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ギリシャ神話は古代ギリシャから受け継がれてきた神々の愛憎劇です。たくさんの神が登場しますが、特にオリュンポス12神がよく登場します。ゼウスやアポーロン、アルテミスなど日本でも聞いたことがある神もいますね。

一方のローマ神話は古代ローマから伝わる物語です。ギリシャ神話からの影響でローマ古来の神をギリシャ神話の神々と同一視している場合があります。例えばローマ神話の主神であるユーピテルはギリシャ神話のゼウスと同一視されているのです。

ちなみに日本での名前は五行思想がもとになっています。五行思想とは中国由来のすべてのものは火・水・木・金・土からできていると考えた思想のことです。

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太陽系の惑星と名前の由来

太陽系の惑星と名前の由来

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それでは惑星の名前の由来を解説していきます。由来のもととなった単語と惑星の名前で表記が異なっている場合もあるので注意してください。なお、惑星自体の特徴についてはこちらの記事で確認してくださいね。

1.水星(Mercury)

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水星(Mercury)の名前の由来はギリシャ神話で承認や旅人を守るとされているヘルメス、ローマ神話のメルクリウスです。

地球よりも太陽寄りの場所に位置する水星。そのため水星を見ることができるのは明け方と夕方だけで、それぞれ明けの明星と宵の明星と言います。古代ギリシャではこのふたつは別の惑星と考えられ、それぞれにヘルメスとアポロンと名付けられていました。

その後ふたつが同じ惑星であることが分かりその惑星が最も公転の速い惑星であることから、ローマ神話でヘルメスと同一視されていてゼウス達神々の使いでもあったメルクリウス(Mercuriusu)の名前が付けられました。これが語源となってMercuryとなったのです。

ちなみに水星という名前も流れる水の速さをイメージして付けられたと言われています。ただし、実際の水星は最高で430℃にも達するみずみずしさとは程遠い星です。

2.金星(Venus)

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金星(Venus)の名前の由来はローマ神話の愛と美の女神、ウェヌス(ヴィーナス)です。ヴィーナスはアプロディーテーと同一視され、アプロディーテと名付けられた小惑星もあります。

アプロディーテ―は愛と美、性、生殖、そして豊穣を司る女神です。海の白い泡から生まれたと言われています。夫は鍛冶の神であるヘーパイストスでしたが醜い夫のうんざりしたアプロディーテ―は、他に火星の由来となったマルスなどとも関係を持っていました。

アプロディーテー(ヴィーナス)は最も美しい女神とされ、数多くの絵画が残されています。その美しさを重ね合わせて金星はヴィーナスと名付けられました。

3.地球(Terra)

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地球は英語でEarth、ラテン語でTerraと言います。Earthの語源は居留地と言った意味の古代ゲルマン語が由来でギリシャ神話とは関係ありません。そこでTerraの由来をご紹介します。

ローマ神話の大地の神、Tellus(Terra)テルースが由来です。テルースはギリシャ神話ではガイアに相当します。テルースは自分の子であるウラノスの妻としてたくさんの神を生みました。その系譜にゼウスがいます。

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4.火星(Mars)

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火星(Mars)の名前の由来はローマ神話のマルス、ギリシャ神話のアレースです。火星の表面は赤く、戦火や血のイメージから戦いの神の名前を付ける地域が多くあります。

戦いの神であるアレースはなかなかのイケメンで、美の女神アプロディーテ―との間にフォボスダイモスという息子をもうけました。火星が持つふたつの衛星の名前はこの息子の名前が由来となっています。

5.木星(Jupiter)

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木星(Jupiter)という名前の由来はローマ神話のユーピテルです。ユーピテルはギリシャ神話のゼウスと同一視されています。

強力な雷を武器としたゼウスは、ギリシャ神話の主神として全知全能の全宇宙を支配する神々の王とされている神です。しかし、浮気者で妻のヘーラーの尻にしかれた夫という意外な一面もあります。ゼウスには愛人も多く、たくさんの子供がいるのです。

そんなゼウスの正妻で嫉妬深いヘーラーが結婚の守護神であり、ジューンブライドの由来はヘーラーと同一視されるローマ神話のユーノー(June)であるとは興味深いですね。

6.土星(Saturn)

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土星(Saturn)の名前の由来はローマ神話の農耕の神、サートゥルヌス(Saturnusです。サートゥルヌスはギリシャ神話のクロノスと同一視されている神であり、巨神族ティーターンを引き連れてオリュンポスの神と戦い敗れたとされています。

クロノスとレア―の間に生まれたのがヘスティア―、デーメーテール、ヘーラー、ハーデース、ポセイドン、ゼウスです。父であるウラヌスを追放したクロノスは自分も子に権力を奪われると予言され、自分の子が生まれるたびに飲み込みました。しかし最後のゼウスはレアーが代わりに石を飲ませたおかげで飲み込まれずに助かりました。そして成長したゼウスはクロノスに兄弟を吐き出させたのです。

この時に生まれた(飲み込まれた)のと逆の順に吐き出されたために飲み込まれなかったゼウスを含めて兄弟の順が変わり、末っ子から最高神へとなったゼウスは兄弟で力を合わせてクロノスを倒したのでした。

7.天王星(Uranus)

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天王星(Uranus)の語源はギリシャ神話の天の神、ウーラノス、ウラヌスです。ローマ神話ではカイルスという神に当たります。ウラヌスは地球の語源となったテルースの息子であり夫でもあるのです。

ウラヌスはガイアとの間にクロノスをもうけました。そしてクロノスの子供がゼウスです。ウラヌスは最初に全宇宙をまとめた神でありましたが、息子のクロノスによって追放されてしまいました。

8.海王星(Neptune)

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海王星(Neptune)はローマ神話の海の神、ネプトゥーヌスが由来です。英語読みのネプチューンの方がなじみ深いですね。ギリシャ神話のポセイドンに当たります。ポセイドンはゼウスに次いで力を持った神です。三叉の鉾を持ち、嵐や津波を起こします。

クロノスの子であり、ゼウスの兄でオリュンポス十二神の1柱です。その息子に人魚のような体をしたトリトンがいます。

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番外編:準惑星・冥王星(Pluto)

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冥王星(Pluto)の由来はローマ神話で冥界の王であるプルート、ギリシャ神話のハーデースに当たります。

ハーデースといえば妻ペルセポネー(ゼウスとデーメーテルの娘)にひとめぼれして冥界へ連れ去ったという物語が有名です。冥界の王と聞くと恐ろしく陰険なイメージがありますが、愛人が多いギリシャ神話の中では一途で愛情深い神と言えるのかもしれません。そしてペルセポネーは1年のうち4か月をハーデースと、残りの8か月を母と過ごすこととなり、ペルセポネーがいない間デーメーテルが豊穣の神としての仕事をしないことから冬が生まれたと言われています。

冥王星の名前の候補にはゼウス、クロノスなども上がっていました。冥王星の名前が決まるまでの流れはこちらの記事をどうぞ。

惑星の名前の由来と神話

惑星の名前はギリシャ神話やローマ神話が由来となっています。名前としてはローマ神話からとっているものが多いようですね。しかし、ローマ神話はギリシャ神話をもととしたものも数多くあり、多くの神はローマ神話とギリシャ神話での名前を持っているのです。

ギリシャ神話には天体と関係の深い物語がたくさんあります。プラネタリウムや本でギリシャ神話由来の星空の話を聞いてみると新たな発見があるかもしれませんね。

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地学宇宙理科

太陽系8惑星の名前の由来が簡単にわかる!準惑星・冥王星も科学館職員が詳しく解説

空に見える惑星。それらにはもちろん名前が付けられている。

惑星の名前はギリシャ神話やローマ神話が由来となっているものが多い。惑星に限らず天体は神話との関係が密接で、興味深い物語がたくさんある。プラネタリウムや星座の本でギリシャ神話を聞いたことがある人も多いでしょう。

そこで今回は惑星の名前の由来を、ギリシャ神話とともに紹介していく。解説は科学館職員たかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

不思議な現象を解明する科学が好きで理系に進んだリケジョ。高校、大学で化学漬けの日々を送っていた科学館職員。

惑星とは

惑星とは恒星の周りを公転している天体のうち、十分な重さがあって球状となり公転軌道に衛星以外の天体がないもののことです。太陽系に惑星は8個。太陽から近い順に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星があります。

惑星の名前に関係が深いギリシャ神話とローマ神話

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ギリシャ神話は古代ギリシャから受け継がれてきた神々の愛憎劇です。たくさんの神が登場しますが、特にオリュンポス12神がよく登場します。ゼウスやアポーロン、アルテミスなど日本でも聞いたことがある神もいますね。

一方のローマ神話は古代ローマから伝わる物語です。ギリシャ神話からの影響でローマ古来の神をギリシャ神話の神々と同一視している場合があります。例えばローマ神話の主神であるユーピテルはギリシャ神話のゼウスと同一視されているのです。

ちなみに日本での名前は五行思想がもとになっています。五行思想とは中国由来のすべてのものは火・水・木・金・土からできていると考えた思想のことです。

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