今回は「サバンナ」をテーマにみていきたいと思う。

高校生諸君にとって、サバンナはバイオームの一つとして紹介される言葉でしょう。「そもそもバイオームとは何なのか」「サバンナにはどんな生物がいるのか」など、今回は詳しく学んでいこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

サバンナとは

サバンナとは、”サバンナ気候”とよばれる気候の土地に成立する草原地帯のことです。後ほど詳しく述べますが、サバンナにはほかの地域であまり見られない独特の生態系がみられます。今はとりあえず”草原”であるというイメージを強くもってください。

サバンナの成立を左右するサバンナ気候とはどんなものでしょう?基本的にサバンナ気候は「熱帯や亜熱帯域に位置する土地で、1年の中で雨季と乾季が存在し、年間降水量のあまり多くない気候」と説明されます。

もう少し具体的にいうと…

・1年の中で極端な気温の差は少ない
・最も寒い月でも月間平均気温が18℃以上
・1年で一番雨の少ない月の降水量が60㎜未満かつ(100-0.04×年平均降水量)mm未満
・年平均降水量が2500㎜未満

などの条件です。

植物の生育にとって、気温降水量は重大な意味をもちます。とくに、生物にとって必要不可欠な水を供給してくれる雨はとても大切。大きな樹木などはたくさんの水を必要とするため、サバンナ気候のような降水量の少ない土地では樹木が育ちにくくなるのです。

しかしながら、雨季には雨が降るため、まったく植物が生えない、という土地でもありません。乾燥に比較的強い草本植物が主となり、結果的にサバンナという草原が成立します。

サバンナに生息する植物や動物は?

さて、前述の通り、サバンナは草原=「木々が生い茂る森林でもなく、砂や岩だらけの荒野でもなく、草ばかりが生えている」土地です。このような「その土地にどんなタイプの植物が多いか」は、私たちの目に映る風景だけでなく、そこに住むことのできる動物の種類も左右します

例えば、熱帯多雨林のような高温多湿の森には、樹上で生活するサルや、木々の間をすり抜ける小さな鳥、気温が一年中高いおかげで巨大に成長する昆虫などがみられますよね。

\次のページで「バイオームとは」を解説!/

このように、その土地に生える植物の種類は、その土地にすむ動物の種類に大きく関係してくるのです。サバンナにも、サバンナの環境に適応した動物がすんでいます。

バイオームとは

あるエリアにすんでいる「すべての生物」をひっくるめてバイオーム(生物群系)といいます。バイオームは、そのエリアの年間平均気温と年間降水量によって、大きく10のタイプに分けることができるんです。

image by Study-Z編集部

年間平均気温と年間降水量によってなぜバイオームが決まるのか…その理由は、先ほど述べた通り。気温と降水量によって生育できる植物の種類が決まり、それによってそこに住むことのできる動物の種類が決まってくるからですね。

それでは、「地球上で今みられるサバンナの例」や「サバンナでみられるバイオーム=動物や植物」を具体的にご紹介していきましょう。

\次のページで「”サバンナ”に当てはまる地域・特徴的な生物」を解説!/

”サバンナ”に当てはまる地域・特徴的な生物

ここからは、サバンナに当てはまる地域3つと、そこに生息する特徴的な生物について解説していきます。

1.アフリカ大陸各所

サバンナのイメージが強い土地といえば、やはりアフリカ大陸でしょう。アフリカ大陸には各国にまたがって広大なサバンナが広がっています。そもそも”サバンナ”という用語自体がスーダンの先住民の言葉からとられているということなので、「サバンナ=アフリカにある」という印象は、あながち間違いではありません。

サバンナを広く覆うのはイネ科の植物です。

イネ科は世界に約8000種ほどが存在している陸上植物の中でも大きなグループ。科の名前になっているイネ(稲)のほか、コムギやオオムギ、トウモロコシ、サトウキビなど、食用にされている種が多く含まれます。また、エノコログサやススキ、ヒメシバなど、私たちの家の周りでよくみられるものにも、たくさんのイネ科植物があるんです。

そんなイネ科が一面に広がる様子は、まさに草原。木々の乱立する樹林や、多少のコケ植物しかないような荒野とは違う、独特の景観です。

image by iStockphoto

サバンナには、イネ科の草原の中にぽつりぽつりと背の高い樹がみられることがあります。アフリカのサバンナでは、アカシアバオバブなど。サバンナの厳しい環境に耐えられるいくつかの樹種がしているんです。そのような木々の葉をもとめ、キリンなどの動物がやってきます。

image by iStockphoto

キリン以外には、どんな動物がサバンナに暮らしているでしょうか?ライオンチーターシマウマなど、サバンナの風景と合わせてイメージしましょう。これらの生物は、その生態と草原という植生と関連付けるといいです。

image by iStockphoto

テレビなどで、ライオンが狩りをする姿を見たことがありませんか?ライオンは背を低くし、草原に身をひそめるようなしぐさをしながら獲物に近づきます。これって、草原という環境に適応した行動といえますよね。森の中や荒原に暮らす生き物であれば、このような行動はとらないでしょう。

\次のページで「2.オーストラリア北部」を解説!/

2.オーストラリア北部

アフリカ大陸以外にみられるサバンナも知っておきましょう。オーストラリア大陸の北部には、広大な草原が広がっています。やはりイネ科の植物が中心となっているサバンナです。

image by iStockphoto

オーストラリアのサバンナで見られる動物には、おなじみのカンガルーワラビーといった有袋類がいます。カンガルーが草原をはねる姿は、オーストラリアらしい風景といえるでしょう。それ以外にも、多くの鳥類や爬虫類などが生息します。オーストラリアにはその場所にしかいない生物=固有種が多く、多くの生物好きにとって、一度訪れてみたい国です。

3.リャノ(ベネズエラ・コロンビア)

南アメリカ大陸の北部には、ベネズエラとコロンビアにまたがって広大な草原がみられます。年間平均気温と年間降水量をみると、このエリアはサバンナ気候に区分されるため、広大な草原はサバンナといえますが、地元の人たちはサバンナではなく「リャノ(もしくはジャノ)」と呼んできました。

リャノの雨季は6〜10月、乾季は12〜3月です。雨季には大量の雨が降り、草原の低いところが一面水に覆われ、湿地のようになります。その時期を目がけ、さまざまな種類の水鳥がやってくるんです。

自然や動物を扱った旅番組などを観てバイオームを覚えよう

今回はバイオームの一つであるサバンナをご紹介しましたが、高校の生物基礎ではほかのバイオームも覚えなくてはなりません。

バイオームを覚える手段としておすすめなのが、自然や動物を扱った旅行番組などを見ること。その風景がどのバイオームに当てはまるか考え、どんな動植物がいるかを意識することで、自然とイメージを強くすることができますよ。

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理科生態系生物

サバンナってどんなところ?気候や特徴・バイオームを現役講師がわかりやすく解説

今回は「サバンナ」をテーマにみていきたいと思う。

高校生諸君にとって、サバンナはバイオームの一つとして紹介される言葉でしょう。「そもそもバイオームとは何なのか」「サバンナにはどんな生物がいるのか」など、今回は詳しく学んでいこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

サバンナとは

サバンナとは、”サバンナ気候”とよばれる気候の土地に成立する草原地帯のことです。後ほど詳しく述べますが、サバンナにはほかの地域であまり見られない独特の生態系がみられます。今はとりあえず”草原”であるというイメージを強くもってください。

サバンナの成立を左右するサバンナ気候とはどんなものでしょう?基本的にサバンナ気候は「熱帯や亜熱帯域に位置する土地で、1年の中で雨季と乾季が存在し、年間降水量のあまり多くない気候」と説明されます。

もう少し具体的にいうと…

・1年の中で極端な気温の差は少ない
・最も寒い月でも月間平均気温が18℃以上
・1年で一番雨の少ない月の降水量が60㎜未満かつ(100-0.04×年平均降水量)mm未満
・年平均降水量が2500㎜未満

などの条件です。

植物の生育にとって、気温降水量は重大な意味をもちます。とくに、生物にとって必要不可欠な水を供給してくれる雨はとても大切。大きな樹木などはたくさんの水を必要とするため、サバンナ気候のような降水量の少ない土地では樹木が育ちにくくなるのです。

しかしながら、雨季には雨が降るため、まったく植物が生えない、という土地でもありません。乾燥に比較的強い草本植物が主となり、結果的にサバンナという草原が成立します。

サバンナに生息する植物や動物は?

さて、前述の通り、サバンナは草原=「木々が生い茂る森林でもなく、砂や岩だらけの荒野でもなく、草ばかりが生えている」土地です。このような「その土地にどんなタイプの植物が多いか」は、私たちの目に映る風景だけでなく、そこに住むことのできる動物の種類も左右します

例えば、熱帯多雨林のような高温多湿の森には、樹上で生活するサルや、木々の間をすり抜ける小さな鳥、気温が一年中高いおかげで巨大に成長する昆虫などがみられますよね。

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