
どんな物もブラックホールになり得る?「シュバルツシルト半径」を理系ライターが初心者目線でわかりやすく解説
とてつもなく接近できればブラックホールとなる
ブラックホールとは強力な引力のせいでどんな物体でも吸い込んでしまう状態。吸い込んでしまう原因は万有引力で、これは2物体の質量と距離で決まるもの。2物体の距離を限りなく近づければ超大な引力が働き理論上ブラックホールになりますが、地球の質量でも半径9mmまで近づける必要がありあまり現実的ではありません。
ブラックホールについてどんなイメージを持っているでしょうか?宇宙のどこかに存在して、光を発さない真っ暗な天体。強力な引力で光も含め何もかも吸い込んでしまう。
そんな地球上にいる限り想像しにくい「ブラックホール」ですが、実は「シュバルツシルト半径」と呼ばれるサイズより小さく圧縮すればどんな物体でもブラックホールになる。地球もブラックホールになり得るし、道端に落ちている石ころだってそうです。理系ライターのR175と解説していこう。
ライター/R175
関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。
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まずはブラックホールについて簡単におさらいしましょう。ブラックホールからは光が出てくることが出来ず外部から光は観測されずその名の通り「真っ暗」。光が出てこられない=どんな物も出てこられないです。というのは、速度が速い物体程ほど天体から抜け出しやすいですが、
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物体が抜け出せない原因は「万有引力」で天体の中心に引っ張られるから。式を見ての通り、万有引力は2物体の質量に比例し2物体間の距離Rに反比例。ものすごく質量が大きかったり距離が近かったりすると、強力な引力となりますね。
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地球の赤道上での自転速度は時速1670キロ。これだけのスピードで回転運動をしているわけですから、それなりの遠心力が働くはずですね。そう、濡れたボールを回転させたら水滴が吹き飛んでいくようなイメージで、自転によって地球から投げ出されるような向き力が発生しています。
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ところで、地球上での重力はほぼほぼ万有引力ですが、計算してみると若干ズレていますね。例えば、重さ1kgの物体と地球の間に働く万有引力はイラスト内の式を駆使すると、9.84Nと求まります。一方重力加速度g=9.81辺りがよく使われていて、これで計算すると1kgの物体の重力は9.81N。桁を丸め過ぎた誤差でしょうか?いやいやそれだけではありません。
残りの0.03Nは自転による遠心力です。
地球と物体は引き合う方向に9.84N、離れる方向に0.03N力が働きその合力9.81Nが重力となっているわけです。
仮に自転速度が2倍だったら(1日が12時間だったら)?遠心力は4倍になり、1kgの物体はおよそ0.12Nの遠心力を受ける計算。さらに2倍して1日6時間にしてやれば、遠心力は0.48N。という具合に上式の速度vの値を大きくすれば遠心力は速度の2乗に比例して大きくなり、仮に地球が1時間24分で1周するとすれば遠心力はなんと、9.91Nとなり万有引力の9.84Nに勝ってしまいます。このように速度を上げていけば、やがて万有引力を超え無重力状態となるわけです。
遠心力が万有引力を超えれば、天体に引き込まれることはありません。以下、イメージしやすいように地球からの脱出に必要な速度を考えましょう。地球上において、遠心力と万有引力が釣り合う時の速度が第一宇宙速度です。しかし後述の通り、天体の引力の影響を完全に振り切ることは出来ません。
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遠心力=万有引力として、
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では脱出するためにはどれくらい速くないといけないのか?
\次のページで「第二宇宙速度の求め方」を解説!/
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シュバルツシルト半径とは、上記の地球の例でいう8.9mmのこと。ある質量の物体が限りなく圧縮されているとして、ブラックホールと外側との境界面になるところの半径がシュバルツシルト半径です。
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ブラックホールとは強力な引力のせいでどんな物体でも吸い込んでしまう状態。吸い込んでしまう原因は万有引力で、これは2物体の質量と距離で決まるもの。2物体の距離を限りなく近づければ超大な引力が働き理論上ブラックホールになりますが、地球の質量でも半径9mmまで近づける必要がありあまり現実的ではありません。
ブラックホールとは強力な引力のせいでどんな物体でも吸い込んでしまう状態。吸い込んでしまう原因は万有引力で、これは2物体の質量と距離で決まるもの。2物体の距離を限りなく近づければ超大な引力が働き理論上ブラックホールになりますが、地球の質量でも半径9mmまで近づける必要がありあまり現実的ではありません。