飛行機はなぜ飛ぶことができる?ものすごいスピードを出して「風」の力を利用して、何らかの形で「上向き」の力を受けているからです。

飛行機の翼で前から後ろ向の風の流れを上手く変えて上向の力を生み出していて、そこで大きく関係するのがコアンダ効果です。コアンダ効果は空気が翼に引き込まれるように流れる現象で、言葉だけ聞くと難しそうですが絵を描いて考えてみたら意外と単純です。

理系ライターR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.飛行機

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人類が飛行機を飛ばすことに成功したのが1903年。それから1世紀以上、現在では航空機の利用者数は世界で年間40億人以上。延べ人数なので何とも言えませんが世界人口の半分以上が利用している計算。それだけ身近な存在となった飛行機ですが、飛ぶ仕組みについて問われると意外と答えられないもの。

2.飛行機が飛ぶ原理とコアンダ効果

2.飛行機が飛ぶ原理とコアンダ効果

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飛行機が飛ぶときの力学にコアンダ効果が応用されています。離陸時に飛行機は時速300キロ程度で走行するもの。この時翼には前から後ろ(水平)方向に時速300キロという超高速度で空気がぶつかるわけです。この水平方向の力を上向きの力(揚力)に変えることで離陸するもの。翼の周りでどのように空気が流れているのでしょうか?

飛行機の翼は一般的にイラストに示すような形に設計されています。翼の下側は斜めの下を向いてそこに勢いよく空気がぶつかることか気圧が高い状態に。では上側は当然答えとしては圧力が低くなりますね。でなければ上向きの力は作用しません。前からやってきた空気は翼を沿うように移動します。イラストに示したA矢印のように空気は真っ直ぐは行かず翼に引き込まれるように移動。翼の上側では、翼の方に空気が引き込まれるため負圧に。翼の下側は圧力が高く上側は低いわけですがから上向きの力が発生するわけです。上記のように、流体が何かしらの壁沿いに進んでいく現象がコアンダ効果と呼ばれるもの。

3.コアンダ効果の例

水や空気といった流体は本来真っ直ぐ流れるものですが、コアンダ効果が働くときはその限りではありません。壁に伝うように流れていく性質があります。いくつか実例を見てみましょう。

伝い水

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理科の実験でビーカーに薬液を入れる時ガラス棒に沿わせるようアドバイスされると思います。真下に薬液を流しているのに真っ直ぐ流れ落ちずに、わざわざガラス棒を伝っていくのは不思議ですが、これこそがコアンダ効果。ガラス棒の壁面に薬液が引き寄せられていきます。

\次のページで「無意識にコアンダ効果を考慮している例」を解説!/

無意識にコアンダ効果を考慮している例

無意識にコアンダ効果を考慮している例

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参考として、ボールが空中を進む時こんな図をよく描きますよね。矢印はボールに沿うように描かれます。空気は真っ直ぐ進むはずだと言ってボールから避けたきり真っ直ぐ矢印を描くことはないでしょう。無意識にボールの曲面に沿わせますね。

4.なぜ曲面に沿うのか?

噛み砕くと、流量を一定にするためのつじつま合わせ壁面の近くは壁との摩擦に加えてカーブの内側であることから徐々に流速が落ちますが、一方で流量は一定にならなければなりません。流速がゆっくりになっても流量を一定に保とうと思うと他から流体を引っ張ってくる必要が出てきますね。さて、順を追って解説して行きましょう。

 

カーブの内側での流速

川のカーブの内側で水流が遅く、外側が速いのは有名な話。水がカーブを通過する時、内側と外側が仮に同じスピードだと経路が短い内側の方が先に流れていっていまうことになりますが、これは不自然。経路が長い外側も経路が短い内側も同じ時間をかけてカーブを通過します。同じ通過時間で長い経路を移動する外側は流速が速く、経路が短い内側は速度が遅くなりますね。運動会で実施される「台風の目」で折り返しの時、外側を持っている人はたくさん走ることになり、内側を持っている人はほとんど走らないのと同じ。

流量はどこも一定

流量はどこも一定

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まず流体が連続して流れる時のルールとして、「流量が一定である」というルールがあります。例えば、イラストのように流路が細くなったり太くなったり、流速が遅くなったり速くなったりする流れを想定しましょう。イラストA、B、Cのように異なる地点のどこで見ても流量は同じです。

流速と流量

断面A、B、Cで流速が異なったる時どうなるか?速度が遅くても流量を同じにしようとすると、通過密度が増える必要がありますね。ここで通過密度は2パターン想定されます。1つは通過断面積が同じで流体そのものが圧縮されて密度が大きくなりゆっくり通過したとしてもトータルの流量は維持できるというパターン。もう1つは流体の密度は変わらないけれど、通過断面積が広くなりなり結果的にゆっくり通過しても流量は維持できるパターン。太い配管ならゆっくり流しても流量は多くなるのと同じパターン。コアンダ効果の説明では前者の断面積一定で密度が大きくなるパターンで考えましょう。

例えば断面積が同じA、B、Cでの流速Va=3、Vb=2、Vc=1として、Aでの流体密度はρa=1ならBはρb=3/2、Cはρc=3となります。速度が遅いところは密度が高くなることでカバーされるわけです。よって周囲から壁近傍に流体が吸い込まれていくものであり、これがコアンダ効果

\次のページで「連続の式」を解説!/

連続の式

上記のような、連続した流れでは流量が一定というルールを数式で表したのが連続の式です。連続の式を演算子を使って書くと、dρ/dt+∇v=0

第1項のdρ/dtは密度の時間変化。さて、複雑そうに見えるのは∇vの方。読み方はナブラブイで、意味は「速度のx,x,z成分の偏微分の足算」。x方向の速度変化とy方向の速度変化とz方向の速度変化の和。方向云々は置いといて、平たく言えば「速度変化」を意味します。よって上式の意味は速度が上がれば密度が下がる、速度が下がれば密度が上がるということ。ただし速度変化はx, y, zの3方向とも考慮されているというわけでそれをちゃんと表そうと思うと∇(ナブラ)記号を使って偏微分の足し算をする必要が出てくるだけです。

壁面に沿って流れる

流体が流れるとき、壁沿いはどうしても速度が落ちていきやすい。流速が落ちても流量は最初から最後まで同じなので、流速が遅くなった分の埋め合わせとして周囲の流体は壁沿いに引っ張られることになり、これがコアンダ効果です。

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流体力学物理理科

「コアンダ効果」って何?飛行機の仕組みに関係するこの効果を理系ライターがわかりやすく解説

飛行機はなぜ飛ぶことができる?ものすごいスピードを出して「風」の力を利用して、何らかの形で「上向き」の力を受けているからです。

飛行機の翼で前から後ろ向の風の流れを上手く変えて上向の力を生み出していて、そこで大きく関係するのがコアンダ効果です。コアンダ効果は空気が翼に引き込まれるように流れる現象で、言葉だけ聞くと難しそうですが絵を描いて考えてみたら意外と単純です。

理系ライターR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.飛行機

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人類が飛行機を飛ばすことに成功したのが1903年。それから1世紀以上、現在では航空機の利用者数は世界で年間40億人以上。延べ人数なので何とも言えませんが世界人口の半分以上が利用している計算。それだけ身近な存在となった飛行機ですが、飛ぶ仕組みについて問われると意外と答えられないもの。

2.飛行機が飛ぶ原理とコアンダ効果

2.飛行機が飛ぶ原理とコアンダ効果

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飛行機が飛ぶときの力学にコアンダ効果が応用されています。離陸時に飛行機は時速300キロ程度で走行するもの。この時翼には前から後ろ(水平)方向に時速300キロという超高速度で空気がぶつかるわけです。この水平方向の力を上向きの力(揚力)に変えることで離陸するもの。翼の周りでどのように空気が流れているのでしょうか?

飛行機の翼は一般的にイラストに示すような形に設計されています。翼の下側は斜めの下を向いてそこに勢いよく空気がぶつかることか気圧が高い状態に。では上側は当然答えとしては圧力が低くなりますね。でなければ上向きの力は作用しません。前からやってきた空気は翼を沿うように移動します。イラストに示したA矢印のように空気は真っ直ぐは行かず翼に引き込まれるように移動。翼の上側では、翼の方に空気が引き込まれるため負圧に。翼の下側は圧力が高く上側は低いわけですがから上向きの力が発生するわけです。上記のように、流体が何かしらの壁沿いに進んでいく現象がコアンダ効果と呼ばれるもの。

3.コアンダ効果の例

水や空気といった流体は本来真っ直ぐ流れるものですが、コアンダ効果が働くときはその限りではありません。壁に伝うように流れていく性質があります。いくつか実例を見てみましょう。

伝い水

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理科の実験でビーカーに薬液を入れる時ガラス棒に沿わせるようアドバイスされると思います。真下に薬液を流しているのに真っ直ぐ流れ落ちずに、わざわざガラス棒を伝っていくのは不思議ですが、これこそがコアンダ効果。ガラス棒の壁面に薬液が引き寄せられていきます。

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