今回は「毛細管現象」について勉強していこう。

漢字そのものの意味でなんとなく想像できるかもしれませんね。毛細管とあるように、毛のように細い管が関係しているんです。これから迎える梅雨に多いトラブル「雨漏り」の原因にもなるから、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.毛細管ってどんなもの?

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毛細管(もうさいかん)という言葉、どこかで聞き覚えがありませんか?毛細といえば生物でおなじみ、毛細血管ですよね。毛細管の代表、人体における毛細管といえば毛細血管です。

血管は血液の通り道であり、全身を巡っています。血液というのは生存維持に必要不可欠なものでしたね。だからこそ、頭のてっぺんから指先、つま先、各臓器の隅々まですべてに酸素を運べるようになっているのです。血管には部位ごとに太さは様々ですが、その中でも毛のように細い(場合によってはそれ以上に細い)血管が存在していて、これが毛細血管とよばれています。

毛細管にもいろいろな種類・物質・素材があり、ガラス管やプラスチック管、血管など様々です。極細で全身を巡っている血管・毛細血管は、人体における代表的な毛細管といえるでしょう。今回解説するのは、そんな毛のように細い管「毛細管」(毛管またはキャピラリーともいう)で起こる不思議な現象についての解説です。

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1-1.毛細管現象の仕組み

1-1.毛細管現象の仕組み

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毛細管現象とは、毛細管の内側にある液体が管の中を上昇または下降する物理現象といいます。その様子を表したのがこの図です。左は水に太さの異なる3本のストローを入れたもの、右は水銀にストローを入れたものを表しています。まず見て気付くことがありますよね。

・ストローの太さによって水位が変わる
・水はストロー内部の水位が上がっているが、水銀では下がっている

これについて詳しく見ていきましょう。

まず1つ目に、ストローの太さによる水位の差は非常に重要なポイントです。水には水の分子同士にはたらく力、分子間力(凝集力)があります。水をコップぎりぎりまで注いだとき、空気と接している部分はこの力によって水の内部にのみ引っ張られるので表面は丸くなるのです。このように表面にはたらく力を表面張力といいます。また、管の素材と水の分子との間にはたらく力(付着力・濡れやすさ)についても考えなければなりません。ストローが細くなるほど前者の力よりも後者の力が大きくなるため、水は管の壁に引き寄せられるように上がっていくでしょう。水の内部に引っ張られる力と壁に引っ張られる力が釣り合うまで、水位は上がっていきます。管が細いほど前者の力は弱く、後者の力が強くなるために高い水位になるのです。

そして2つ目に、毛細管現象は必ずしもストローの例のように見られるとは限りません水銀の場合、分子間力が大きいために形を変えにくいという性質を持っています。今は人体への影響を考慮して少なくなりましたが、昔はどの家庭にも水銀の入った体温計があったものです。ガラス製のそれが割れると中から水銀が出てきます。水銀は水などの液体、水滴上の固まりになってその形を維持しようとするのがわかるでしょう。(子供にとってはそれが面白く見えるものですが非常に危ない物質ですよ。)そのため水のようには上がらないのです。こういった性質の違いが、水との違いを生んでいるということですね。

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2.毛細管現象を利用した製品

それでは実際にこの現象がどんな製品に用いられているかを見ていきましょう。

2-1.万年筆

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大人の文房具で高級なものという印象のある万年筆は、大学入学や成人、就職のお祝いとしても人気のある文房具です。その名前の由来は「万さんの作った筆」や「長く使える筆」など様々ですが、実際にその名に恥じないものであることには違いありません。

最近の万年筆はボールペンのようにインクが差し込み式で交換できるタイプのものが多くありますが、インクボトルを使う万年筆もやはり素敵です。レタリングやカリグラフィーといった文字のアレンジがしやすいのも万年筆の魅力ですね。

万年筆はカートリッジまたはインクボトルから吸入したインクを毛細管現象を使ってペン先へと導きます。そして出たインクと同じ分の空気を内部に取り込むことでスムーズに文字が書ける仕組みです。そのためにペン先にはインクを通すための溝と空気を取り入れる溝があります。ぜひ実物を見てみてくださいね。

2-2.毛細管採血

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採血というと太い注射針を刺す痛いものというイメージがありませんか。針を刺してからピストンをギューッと引くことで採血する方法です。これは見た目にも痛いので、できることならやりたくないですよね。もちろん量を必要とする検査ではその方法が必要になるものの、少量の採血にはプラスチックやガラス製の毛細管、キャピラリーを使った方法があります。

この方法では針が刺さった瞬間に極細の管に血液が流れていくため、あっという間に採血が終わるでしょう。これも毛細管現象の作用によるものです。とくに小さな子供が相手の場合、一秒でも早く採血を終わらせてあげたいというのが医師や親の想いのはず。最初の針の傷も小さくて済むので、痛みが引きやすいというのもメリットですね。

3.雨漏りの原因になることも!?

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毛細管現象は文房具といった身近なものだけでなく医療の現場にも用いられています。しかし毛細管現象が引き起こすものはいいものだけではありません。夏から秋にかけて増えるハウストラブルといえば雨漏りです。梅雨、夕立、ゲリラ豪雨、台風被害など、どの家にも被害が出る可能性がありますよね。

雨漏りの原因はさまざまですが、そのうちの1つが毛細管現象によるものです。万年筆や採血の例でもわかるように、毛細管現象は方向に関係なく起こります。屋根材は損傷を受けたり経年劣化によって小さな隙間やひび割れ部分を生じるでしょう。そこに雨が降って水がたまると、毛細管現象により雨水が家の中に浸入していくのです。大切な家を守るためには定期的な点検とメンテナンスが大切ということですね。

細い管状物体の内側を液体が…といえば「毛細管現象」!

毛細管現象(もうさいかんげんしょう)または毛管現象(もうかんげんしょう)は毛細管や毛管とよばれる細い管内を水が移動していく現象です。コップに水を入れたところに極細のストローを入れてみると、ストロー内の水位が上がっているのがわかるでしょう。ストローが細ければ細いほど液面が上がっていくのがわかるはずです。自宅でもできる簡易的な実験ですね。

内径が小さいほど水位は上がる、反比例の関係にあります。それぞれの関係による差を実験で測定してみるのも面白いでしょう。また、ストローのように上方へ行くものもあれば、万年筆や雨漏りのように下方へ流れる場合もあります。これは液体における表面張力と分子間力、毛細管の素材にどれだけ付着しやすいかによって異なるためです。それぞれの関係をぜひ図形化して考えてみてくださいね。

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化学

簡単でわかりやすい「毛細管現象」!雨漏りの原因にもなる?元塾講師が詳しく解説

今回は「毛細管現象」について勉強していこう。

漢字そのものの意味でなんとなく想像できるかもしれませんね。毛細管とあるように、毛のように細い管が関係しているんです。これから迎える梅雨に多いトラブル「雨漏り」の原因にもなるから、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.毛細管ってどんなもの?

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毛細管(もうさいかん)という言葉、どこかで聞き覚えがありませんか?毛細といえば生物でおなじみ、毛細血管ですよね。毛細管の代表、人体における毛細管といえば毛細血管です。

血管は血液の通り道であり、全身を巡っています。血液というのは生存維持に必要不可欠なものでしたね。だからこそ、頭のてっぺんから指先、つま先、各臓器の隅々まですべてに酸素を運べるようになっているのです。血管には部位ごとに太さは様々ですが、その中でも毛のように細い(場合によってはそれ以上に細い)血管が存在していて、これが毛細血管とよばれています。

毛細管にもいろいろな種類・物質・素材があり、ガラス管やプラスチック管、血管など様々です。極細で全身を巡っている血管・毛細血管は、人体における代表的な毛細管といえるでしょう。今回解説するのは、そんな毛のように細い管「毛細管」(毛管またはキャピラリーともいう)で起こる不思議な現象についての解説です。

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