この記事では「火に油を注ぐ」について解説する。

端的に言えば「火に油を注ぐ」の意味は「困ったことをさらに拡大させること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗吉を呼んです。一緒に「火に油を注ぐ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「火に油を注ぐ」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「火に油を注ぐ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「火に油を注ぐ」の意味は?

「火に油を注ぐ」には、次のような意味があります。

勢いの激しいものに、いっそう勢いを加えることのたとえ。

出典:故事ことわざ辞典

燃えている火に油を注げば、火は勢いを増します。これは自然なことです。

ただし、炊事やたき火など、意図して燃やしている有用な火、役に立つ火に対して、油などの燃料を注いで火勢を強める場合、そしてその比喩的な場合には、この「火に油を注ぐ」という慣用句は使いません。

そうではなく、火事などの、本来は消火をしなくてはいけないような火について、消すのではなく、逆に燃料を注いで火を強めてしまうとき、またその比喩的な場合に、この慣用句は使われます。

火を強めるのは、意図的にであっても、または意図せずに間違ってであっても、どちらでもかまいません。故意に火を強めるのは悪質ですが、そうでなく間違って火を強めてしまう場合でも、同じように「火に油を注ぐ」を使うことができます。

最近では有名人などのブログの炎上で、この語句が使われるような場面に出会うことも多くなってきました。

「火に油を注ぐ」の使い方・例文

「火に油を注ぐ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「火に油を注ぐ」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.炎上しているブログサイトで火に油を注ぐように、つたない表現と言葉で記事を連続投稿してしまい、事態はさらに悪化、混乱して、大炎上になってしまったが、ブログのビュー数はかなり増えて、その後人気が出たのは皮肉だった。

2.英語での質問に、ろくろく意味もわからずに無理に回答したら、相手の怒りの火に油を注ぐ結果となってしまった。

3.行政機関の言動が、危険な事態に対して面倒を回避したいだけのように見えたので、一部の人々の不満が大きくなって、問題の火に油を注ぐことになり、不適切な行政の行動があったとして、大学の行政学の先生たちも騒ぎ出す事態となった。

火に油を注ぐのに、わざとではなく、やり方がよくないがためにそうしてしまうことも多いものです。これはこわいですね。

特によくあるのが、火消しをしようと思って水をかけたつもりが油だった、というものです。火が燃え盛っていれば、なにかするのに躊躇しているひまもないのですし、手元に水らしきものがあったので「よしこれで消火ができる」と喜んで放水したら、実は油だった、なんてこと。珍しくはありません。考える暇もないのが火が燃えている現場ですからね。

「火に油を注ぐ」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「火に油を注ぐ」と似た意味を持つ言葉として、「焚きつける」「たきぎに油を添える」などがあります。

「焚きつける」

火をつけることです。なんらかの火種があるところで、それを大きな火にする場合は、「火に油を注ぐ」と近い意味になります。

ある人に対して嘘やでたらめの話を吹き込んで良からぬことを起こさせる場合には、「焚きつける」ということになりますが、「火に油を注ぐ」場合には元からある火をさらに大きくすることになるのに対して、「焚きつける」場合には何もないところから小さな火をおこす場合も含まれるので、少し意味が異なりますね。

「たきぎに油を添える」

こちらは、「火に油を注ぐ」とほぼ同じ意味です。つまり、ここでのたきぎは、燃えているたきぎということになります。

\次のページで「「火に油を注ぐ」の対義語は?」を解説!/

「火に油を注ぐ」の対義語は?

「火に油を注ぐ」と反対の意味を持つ言葉としては、以下のようなものがあります。

「火消し」

文字通り、火を消すことです。火勢を強めるのが「火に油を注ぐ」なら、火勢を弱めるのが「火消し」ですね。また火消しは、火を消す職業、つまり消防士も意味します。特に江戸時代の「町火消し」と呼ばれる江戸の消防団が有名です。

「水を差す」「冷や水を浴びせる」

これらは、勢いをそぐ、という意味をもちます。水と油は対立するもの、対をなすものとしてよく語られますが、勢いを与えるのが油で、勢いをそぐのが水というのもおもしろいですね。

「火に油を注ぐ」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に「火に油を注ぐ」を英語で表現するとどうなるのかを確認しておきましょう。

「add oil to the fire」

「火に油を注ぐ」は英語で「add oil to the fire」と表すことができます。例文も示しておきましょう。

Our office manager added oil to the fire of the client.

事務所長は、顧客の怒りの火に油を注いでしまった。

\次のページで「「火に油を注ぐ」を使いこなそう」を解説!/

「火に油を注ぐ」を使いこなそう

この記事では「火に油を注ぐ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

うまく油を使ってわざと、自分の管理下で炎上させる、なんてこと、できたらいいですね。だれでも生きていれば、「ああしまった、火に油を注いでしまった。失敗だ。泣きっ面に蜂だ。なむさん」という場面に出くわすことでしょう。そういった窮地で人は試される、なんてよく言われますが、実際多くの人はじたばたするものです。

そしてそれでいいのだと思います。

火に油を注ぐ、それもわざと、自分の裁量の範囲でうまくやりおおせる、そんな日を夢見て精進して、成就させる前に人生が終わってしまう、それでも立派なものでしょう。お気楽にやりたいものですね。

" /> 【慣用句】「火に油を注ぐ」の意味や使い方は?例文や類語を教材系ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「火に油を注ぐ」の意味や使い方は?例文や類語を教材系ライターがわかりやすく解説!

この記事では「火に油を注ぐ」について解説する。

端的に言えば「火に油を注ぐ」の意味は「困ったことをさらに拡大させること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗吉を呼んです。一緒に「火に油を注ぐ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「火に油を注ぐ」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「火に油を注ぐ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「火に油を注ぐ」の意味は?

「火に油を注ぐ」には、次のような意味があります。

勢いの激しいものに、いっそう勢いを加えることのたとえ。

出典:故事ことわざ辞典

燃えている火に油を注げば、火は勢いを増します。これは自然なことです。

ただし、炊事やたき火など、意図して燃やしている有用な火、役に立つ火に対して、油などの燃料を注いで火勢を強める場合、そしてその比喩的な場合には、この「火に油を注ぐ」という慣用句は使いません。

そうではなく、火事などの、本来は消火をしなくてはいけないような火について、消すのではなく、逆に燃料を注いで火を強めてしまうとき、またその比喩的な場合に、この慣用句は使われます。

火を強めるのは、意図的にであっても、または意図せずに間違ってであっても、どちらでもかまいません。故意に火を強めるのは悪質ですが、そうでなく間違って火を強めてしまう場合でも、同じように「火に油を注ぐ」を使うことができます。

最近では有名人などのブログの炎上で、この語句が使われるような場面に出会うことも多くなってきました。

「火に油を注ぐ」の使い方・例文

「火に油を注ぐ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「火に油を注ぐ」の類義語は?違いは?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: