この記事では「天長地久(てんちょうちきゅう)」という四字熟語について解説する。

端的に言えば「天長地久」の意味は「いつまでも続くこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「天長地久」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「天長地久」の意味や使い方のまとめ

image by iStockphoto

それでは早速「天長地久」の意味や使い方を見ていきましょう。

「天長地久」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「天長地久」には、次のような意味があります。

天地が永久に変わらないように、物事が永遠に続くこと。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「天長地久」

「天長地久」は、訓読すると「天は長く地は久(ひさ)し」と読むことができます。この言葉の意味は、文字通り「この世界が永遠に続いていく」という意味です。

この熟語を構成する漢字のうち「天地」は、空と大地をすなわち世界を意味します。一方、「長」も「久」も長い時間という意味です。

これらを組み合わせて出来た「天長地久」は、主におめでたいことに対して用いられます。それは、ときに人間の寿命であったり、ときに組織や国家の繁栄であったりします。

いずれにしても、それらの喜ばしいことが永遠に続けばいいのにという思いに変わりはありません。

「天長地久」の出典は?

次に「天長地久」出典を確認しておきましょう。この四字熟語は、無為自然を説いた「老子」の第七章が、その出典です。

「老子」には、あるがままに生きることを意味する「無為自然」が説かれています。高校や大学で行われる漢文の授業で耳にした人も少なくないでしょう。

この第七章では、天地が長く久しく続いているのは、自らの発生すら意識することなく存在するからであるとしています。

\次のページで「「天長地久」の使い方・例文」を解説!/

「天長地久」の使い方・例文

「天長地久」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

我が国と我が一族の繁栄は、汝ら忠勇なる国民とともに天長地久のごとく永遠に続くものと信じている。

我々のビジネスモデルは天長地久で、今後いかなる事態に見舞われたとしても絶対に変わることなどない。

仕事では責任者に大抜擢され、家庭は円満にいき、この幸せが天長地久に続けばいいのにと何度も思った。

天長地久の意味をきちんと理解するには、ポイントが二つあります。ひとつは、永遠に変わることなく続いていくという熟語の意味を押さえておくこと。

もうひとつは、何が永遠に続いていくのかを押さえておくことです。そして、それは繁栄や寿命、幸福など喜ばしいことで占められてるといっても過言ではありません。

最初の例文では、はっきり「繁栄」と書かれてありますし、最後の例文では「幸せ」と書かれてあります。二つめでは明示こそされてはいませんが、それがビジネスモデルの「寿命」であることは明らかです。

かつては天皇陛下の誕生日を「天長節」、皇后陛下の誕生日を「地久節」と呼んでお祝いしていたそうです。なぜ、このネーミングなのかは、これまでの記事を読めばお分かりですね。

そう、陛下のご治世が未来永劫続きますようにとの願いが込められていたのでしょう。現在では、「天長節」のみが「天皇誕生日」として受け継がれています。

#2 「天長地久」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

ところで、「天長地久」の類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的なものを二つほど紹介していきます。

\次のページで「「天地長久」」を解説!/

「天地長久」

「天地長久(てんちちょうきゅう)」は、「天長地久」の類義語というよりも、ほぼ同一のものといった方が正確かもしれません。熟語を構成する漢字もまったく同じで、違うのは出てくる順番だけだからです。

もちろん、意味もほぼ同じで出典・由来も同様なのでここでは割愛させていただきます。

「天壌無窮」

「天壌無窮(てんじょうむきゅう)」もまた、「天長地久」の類義語だといえるものです。こちらの四字熟語も、永遠に極まりなく続く様子を表しています。

前半部の「天壌」が表すのは、天と地という意味です。一方、後半部の「無窮」には極まりない様子という意味があります。

「天壌」を「天井」や「天上」などと誤記しやすいので、注意しましょう。また、難しい漢字が使用されていますので読み方にも注意してください。

では、これらの類義語を用いた例文をチェックです。

今回の共同企画が成功裏に終わったことを厚く感謝いたしますとともに、貴社が天地長久に発展しますことを祈念しております。

どんなに追い求めて努力したところで、天壌無窮の美しさなどというものは存在しないことになぜ気づいてくれないのか。

#3 「天長地久」の対義語は?

image by iStockphoto

では、「天長地久」の対義語は一体どのようにとらえればよいのでしょうか。永遠に続いていくことの反対は、いつかは尽き果てるという意味ととらえてよいでしょう。

ここでは、そのような意味合いを持った四字熟語を二つみていきます。

「諸行無常」

「諸行無常(しょぎょうむじょう」は、「天長地久」の類義語として十分に通用するものです。この四字熟語には、万物は常に変化するという意味合いがあります。

かの有名な「平家物語」の冒頭文にある「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」でご存じの方も多いのではないでしょうか。この世の中に不変のものなどないという「無常観」が物語全体を覆っていることでも知られていますね。

「万物流転」

「万物流転(ばんぶつるてん)」もまた、「天長地久」の類義語だといえるものです。この熟語は、この世のすべての物事は変化し続けるという意味を持ちます。

「万物」は、この世にあるすべての物事や現象を表す言葉です。一方の「流転」には、常に変化し続けるという意味合いがあります。

では、これらの対義語を用いた例文もチェックしてみましょう。

\次のページで「「天長地久」の英訳は?」を解説!/

かつてここにあったはずの花街の面影がほぼ無くなっているのを見ると、諸行無常の感を抱かざるを得ない。

万物流転の法則は、みんなや先生だけでなく世界中のあらゆる人や物事にも当てはまるものなんだ。

#4 「天長地久」の英訳は?

image by iStockphoto

では、最後に「天長地久」の英語訳についても押さえておきましょう。

「coeval with heaven and earth」

「coeval with heaven and earth」は、「天長地久」の英語訳の中でもっとも代表的なもののひとつです。この英語表現を直訳すると「天地と同じ年代」となります。

これはどういうことかというと、天地と同じように永遠、永久であることを示しているわけです。「天地」に相当する語句も入っているので、かなり元の日本語にニュアンスは近いといえます。

「for ever and a day」

「for ever and a day」もまた、「天長地久」の英語訳だといえるものです。こちらは、意訳すると「未来永劫」となります。

「for ever」または「forever」だけでも、永久にという意味は表すことは可能です。しかしながら、そこに「and a day」が加わることで、意味がさらに強調されています。

「天長地久」を使いこなそう

この記事では「天長地久」の意味・使い方・類語などを説明しました。この四字熟語の意味は、天地のように永遠に続いていくでしたね。

苦労して築き上げてきた富や名声が、子々孫々まで永遠に続いていけばいいのに。そう思うこと自体は、人間としてむしろ当然のことなのかもしれません。

しかしながら、世の中に絶対というものがないのもまた事実でしょう。永遠に続くように努力しながらも、永遠には続かないことを肝に銘じるという矛盾をはらんだまま生きていくしかないのかもしれません。

みなさんも、この四字熟語を使う機会に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

" /> 【四字熟語】「天長地久」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【四字熟語】「天長地久」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「天長地久(てんちょうちきゅう)」という四字熟語について解説する。

端的に言えば「天長地久」の意味は「いつまでも続くこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「天長地久」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「天長地久」の意味や使い方のまとめ

image by iStockphoto

それでは早速「天長地久」の意味や使い方を見ていきましょう。

「天長地久」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「天長地久」には、次のような意味があります。

天地が永久に変わらないように、物事が永遠に続くこと。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「天長地久」

「天長地久」は、訓読すると「天は長く地は久(ひさ)し」と読むことができます。この言葉の意味は、文字通り「この世界が永遠に続いていく」という意味です。

この熟語を構成する漢字のうち「天地」は、空と大地をすなわち世界を意味します。一方、「長」も「久」も長い時間という意味です。

これらを組み合わせて出来た「天長地久」は、主におめでたいことに対して用いられます。それは、ときに人間の寿命であったり、ときに組織や国家の繁栄であったりします。

いずれにしても、それらの喜ばしいことが永遠に続けばいいのにという思いに変わりはありません。

「天長地久」の出典は?

次に「天長地久」出典を確認しておきましょう。この四字熟語は、無為自然を説いた「老子」の第七章が、その出典です。

「老子」には、あるがままに生きることを意味する「無為自然」が説かれています。高校や大学で行われる漢文の授業で耳にした人も少なくないでしょう。

この第七章では、天地が長く久しく続いているのは、自らの発生すら意識することなく存在するからであるとしています。

\次のページで「「天長地久」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: