今回は「赤外線」について解説していきます。

赤外線は光の一種ですが、人間の目には見えない不思議な存在のものです。目には見えないが、多くの人が使ったことがあるであろう家電のリモコンなどに赤外線は活用されている。このような非常に身近な場所で活躍しているとは驚きだろ。ぜひ、この機会に、赤外線についての理解を深めてほしい。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

赤外線とは?

光の正体とは?

image by PIXTA / 50518615

赤外線について学ぶ前に、光の正体について考えてみましょう。光は電磁波と呼ばれる波動現象の一種です。電磁波は、空間中において、電場と磁場が交互に変化することで伝播する波のことですよ。電磁波は波長の違いにより、様々な呼称があります。波長が1[mm]程度よりも大きい場合は電波、波長が10[nm]程度よりも小さい場合は放射線と呼ばれますよ。そして、電波と放射線の間に位置するのが光です。光の波長域は10[μm]から100[nm]程度になります。

そして、光は空間中を非常に速く伝わることが知られていますよ。その速さは、おそよ30万[km/s]とされています。これは、1秒間で地球を7周半することができる速さです。この速さを生かした技術が光ファイバー通信ですよね。光ファイバー通信は、光を使って情報をやり取りする技術です。これにより、世界中の人々がインターネットを通じて、リアルタイムにつながることができるようになりました。

赤外線とは?

赤外線とは?

image by Study-Z編集部

私たち人間が見ることのできる光は可視光線と呼ばれています。そして、人間が見ることのできる最も波長の長い光は赤色で、赤色よりも波長が長い光を赤外線と呼びますよ。つまり、赤外線は目には見えない光なのです。また、赤外線は波長が短い順に近赤外線中赤外線遠赤外線に細分化されることもありますよ。

赤外線は直接目には見えませんが、間接的に観察する方法はいくつかあります。一番簡単な方法はカメラを使う方法です。テレビなどのリモコンのボタンを押しながら、デジタルカメラやスマートフォンのカメラに向けて、画面を見ると目には見えないはずの光が映って見えます。この光が赤外線なのです。誰でも簡単にできる方法なので、興味のある方はぜひ試してみてくださいね。

\次のページで「赤外線の利用されている技術」を解説!/

赤外線の利用されている技術

簡易通信

image by PIXTA / 4741188

赤外線の利用されている技術の1つに、簡易通信があります。赤外線の簡易通信は、テレビ、エアコン、照明器具などの家電製品のリモコンに使われていますよ。リモコンの先端部分には、信号発信用の赤外線LEDがついています。この赤外線LEDから発された命令の信号を、家電製品が受信して指定された動作をするのです。命令の内容は、赤外線LEDの点滅のパターンによって、伝えられますよ

また、携帯電話の一部にも、赤外線の簡易通信機能を搭載したものがあります。電話番号やメールアドレスを赤外線通信を利用して交換することができるのです。簡単に連絡先を交換できるSNSの普及前は、この方式で連絡先交換を行うことも多かったそうですよ。

赤外線による簡易通信は低コストで実現することができます。これは、赤外線通信の最大のメリットと言えますよ。このような理由から、赤外線の簡易通信は、家電製品のワイヤレス制御化に大きな貢献をしたのです。しかしながら、赤外線という光で通信を行うので、赤外線の通り道が何かで遮られると通信できなくなるという面もあります。

赤外分光法(FTIR)

image by PIXTA / 10779009

化学の研究や実験をしていると、物質を構成している分子の構造を知りたいと思う場面が多々あります。例えば、有機化合物中にどのような官能基があるのか二重結合があるのはどの位置かといった疑問ですね。この様なときに役に立つ分析法が、赤外分光法(FTIR)です。

赤外分光法では、それぞれの官能基や化学結合は中赤外線域の特定の波長の光をよく吸収するということを利用して、分子の構造を知ることができますよ。構造を知りたい試料に赤外線を照射させて、照射後の赤外線を分光計を通してスペクトルを検出させます。赤外分光法を行う装置に、試料をセッティングすると、全自動でこれらの作業が完了するのです。

そして、検出されたスペクトルを、バックグラウンド値と比較することで、どの波長の赤外線が吸収されているかを確認します。この波長の値を赤外分光相関表にて探すと、どのような官能基や化学結合が試料を構成する分子に含まれているかがわかりますよ

サーモグラフィーカメラ

image by PIXTA / 27217238

サーモグラフィーカメラは、物体における温度分布を映像によって可視化することができる装置です。皆さんもテレビ番組などで、熱い部分は赤色、冷たい部分は青色を表示する映像をみたことがあるかと思います。それが、まさに、サーモグラフィーカメラによる映像です。

サーモグラフィーカメラは、あらゆる物体は赤外線を発しており、その放射強度は物体の絶対温度の4乗に比例するという性質を利用して温度を測定します。手を触れることができない高温物体などを測定する場合、瞬時に全体の温度分布を知りたい場合などに、サーモグラフィーカメラは非常に便利です。

サーモグラフィーカメラは、医療航空軍事防犯などの様々な分野で活用されています。軍事や防犯の分野では、暗闇の中でも人や物を認識することができるという理由で、サーモグラフィーカメラが使用されているようです。

\次のページで「地球温暖化と赤外線の関係」を解説!/

地球温暖化と赤外線の関係

最後に、環境問題の1つである地球温暖化と赤外線の関係について解説しますよ。地球温暖化とは、言葉通り、地球全体の気温が長期的に上昇する現象のことをさします。地球温暖化のメカニズムには、諸説ありますが、ここでは最も有力とされている説について説明していきますね。

地球温暖化の原因の一つとして、人間の経済活動が盛んになった結果排出された二酸化炭素などの温室効果ガスが挙げられます。温室効果ガスは、分子レベルでの振動により、赤外線の吸収と放出を繰り返すという性質があるのです。地表面で反射した太陽光の一部を温室効果ガスが吸収し、そのあと吸収したエネルギーが放出され、その一部が地上に戻ってきます。これが繰り返されることで、大気の温度が上昇するのです。

今、地球温暖化は国際レベルで議論される環境問題で、各国は温室効果ガス排出量削減を目標を掲げています。また、その目標達成に近づくために、多くのエンジニアが省エネルギー技術などの開発に取り組んでいますよ。

赤外線についての理解を深めよう!

赤外線という存在は、目に見えないので、日常生活の中で気に留めることはありません。ですが、赤外線は簡易通信などの身近な技術に用いられており、私たちの生活をより豊かにしてくれているのです。また、サーモグラフィーカメラをはじめとして、様々な分野への応用も盛んですよ。

赤外線はただの光ですが、ものすごく人類の役に立っているものなのです。ぜひ、この機会に赤外線についての理解を深めてみてください。

" /> 3分で簡単「赤外線」光の1つを理系学生ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単「赤外線」光の1つを理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「赤外線」について解説していきます。

赤外線は光の一種ですが、人間の目には見えない不思議な存在のものです。目には見えないが、多くの人が使ったことがあるであろう家電のリモコンなどに赤外線は活用されている。このような非常に身近な場所で活躍しているとは驚きだろ。ぜひ、この機会に、赤外線についての理解を深めてほしい。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

赤外線とは?

光の正体とは?

image by PIXTA / 50518615

赤外線について学ぶ前に、光の正体について考えてみましょう。光は電磁波と呼ばれる波動現象の一種です。電磁波は、空間中において、電場と磁場が交互に変化することで伝播する波のことですよ。電磁波は波長の違いにより、様々な呼称があります。波長が1[mm]程度よりも大きい場合は電波、波長が10[nm]程度よりも小さい場合は放射線と呼ばれますよ。そして、電波と放射線の間に位置するのが光です。光の波長域は10[μm]から100[nm]程度になります。

そして、光は空間中を非常に速く伝わることが知られていますよ。その速さは、おそよ30万[km/s]とされています。これは、1秒間で地球を7周半することができる速さです。この速さを生かした技術が光ファイバー通信ですよね。光ファイバー通信は、光を使って情報をやり取りする技術です。これにより、世界中の人々がインターネットを通じて、リアルタイムにつながることができるようになりました。

赤外線とは?

赤外線とは?

image by Study-Z編集部

私たち人間が見ることのできる光は可視光線と呼ばれています。そして、人間が見ることのできる最も波長の長い光は赤色で、赤色よりも波長が長い光を赤外線と呼びますよ。つまり、赤外線は目には見えない光なのです。また、赤外線は波長が短い順に近赤外線中赤外線遠赤外線に細分化されることもありますよ。

赤外線は直接目には見えませんが、間接的に観察する方法はいくつかあります。一番簡単な方法はカメラを使う方法です。テレビなどのリモコンのボタンを押しながら、デジタルカメラやスマートフォンのカメラに向けて、画面を見ると目には見えないはずの光が映って見えます。この光が赤外線なのです。誰でも簡単にできる方法なので、興味のある方はぜひ試してみてくださいね。

\次のページで「赤外線の利用されている技術」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: