今回は「界面活性剤」について解説していきます。

界面活性剤という言葉だけではよくわからないという人も多いかもしれないが、実は石けんや洗剤は界面活性剤の一種です。石けんや洗剤を使うと、油の汚れを簡単に落とすことができる。それはなぜでしょうか?今回は、化学的な視点から界面活性剤の仕組みを解明してくぞ。ぜひ、この機会に、界面活性剤について学んでみてくれ。

環境工学、エネルギー工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。環境化学工学、資源材料学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

水と油は混ざりにくい

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界面活性剤について詳しく学ぶ前に、水と油の性質について学んでみましょう。水と油の性質について、知ることのできる場面は、身近なところにたくさんあります。例えば、写真のように、餃子のたれの上に油滴が浮かんでいるという現象です。他にも、ドレッシングを放置していると油の層と水の層に分かれるという現象もありますよ。これらの現象から、水と油にはどのような性質があるのかを予想してみてください。

実は、水と油は混ざりにくいと一般的に言われています。水と油はなじみにくいとも言えますね。このため、水と油の相性は非常に悪いのです。服についた油が水では簡単に落ちない理由は、まさにこれですよ。キッチンの油汚れが水ではとれない理由も、同様ですね。ここからは、何もしない状態では水と油は混ざりにくいということを頭に入れて、界面活性剤について詳しく学んでいきましょう。

界面活性剤の役割

界面活性剤の役割

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先ほど、水と油はなじみにくいということを学びました。では、どのようにすれば、水と油をなじみやすくすることができるようになるでしょうか。1つのアイデアとして、水と油のどちらにもなじみやすい物質を、水と油の界面に配置するという方法が挙げられます。このようにすることで、間接的にではありますが、水と油が混ざり合うことができるようになるのですね。そして、水と油のどちらにもなじみやすい物質がまさに、界面活性剤なのです。

界面活性剤には、水になじみやすい親水基と呼ばれる部分と、油になじみやすい疎水基(親油基)と呼ばれる部分が存在します。例として、油滴を含む水に、界面活性剤を加えるとどのようになるかを考えてみましょう。油滴は、疎水基(親油基)を内側にして、界面活性剤の囲われます。そして、親水基は外側に向きますよね。これで、油は水の中を自由自在に動き回ることができるようになります

以上のような理由から、洗剤などの界面活性剤を利用することで、服についた油を落としたり、キッチンの油汚れを除去することが可能になるのです。水と油がなじみやすくなることで、流水が油をさらっていってくれるのですね。さらに、水にさらわれた油は界面活性剤に囲われているので、再度服などに付着する心配もありません。このような作用のことを、界面活性剤の乳化作用といいますよ。

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界面活性剤の種類

私たちが、日常生活の中で使用する界面活性剤は、主に石けん(石鹸)中性洗剤です。どちらも油汚れなどを洗浄する能力を持つといった共通点がありますが、異なる点はあるのでしょうか?今回は、化学の視点から石けんと中性洗剤の性質や特性を考察してみましょう。

石けん

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私たちが手洗いなどに使う石けんは、身近な界面活性剤の1つです。石けんの主成分は、脂肪酸と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)の塩ですよ。有名な製法としては、油脂に水酸化ナトリウムを加えて、けん化と呼ばれる反応を生じさせる方法が挙げられます。原料となる油脂は、天然動植物由来のものが使われる場合と人工的に加工されたものが使われる場合がりますよ。石けんの親水基は脂肪酸に含まれているカルボキシル基疎水基は脂肪酸の炭化水素鎖ですよ。

以上は、写真に示したような固形石けんの作り方です。石けんには、固定タイプのほかに、液体タイプもありますよね。液体石けんを作る場合は、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを使って、けん化反応を生じさせます水酸化カリウムを使ったほうが、石けんが水に溶けやすいのです。市販の石けん製品のほとんどがこの2種類の方法で作られていますよ。

石けんは安全性が高く、安価な洗浄剤であることから、身近なところで広く用いられています。ですが、少なからず欠点もあるのです。石けんは、水に溶かすとアルカリ性を示しますよ。このため、シルクや羊毛といったタンパク質からなる繊維を洗うと、繊維を破壊してしまうのです。また、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを含む硬水の中では、洗浄能力が低下するというのも石けんのデメリットの1つですよ。

中性洗剤

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石けんに加えて、中性洗剤も身近な界面活性剤の1つです。食器用洗剤洗濯用洗剤の多くに、中性洗剤が採用されていますよ。中性洗剤は、合成洗剤と呼ばれることもあります。中性洗剤の主成分は、有機系の強酸と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)の塩です。原料である有機系の強酸には、アルキル硫酸アルキルベンゼンスルホン酸などが用いられます。市販の製品には、これらに加えて、芳香剤なども添加されますよ。

中性洗剤の水溶液は中性を示します。そのため、石けんとは違い、シルクや羊毛といったタンパク質からなる繊維を品質を落とすことなく洗うことができますよ。また、硬水の中でも、不溶性の塩を作らないので、高い洗浄能力を維持することができるのです。このような理由から、中性洗剤は各種洗剤として広く普及しました。

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界面活性剤による環境汚染

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石けんや合成洗剤といった界面活性剤は洗浄剤として広く普及しましたが、その一方で河川などの汚染の原因物質を含んでおり、問題視されていますよ。合成洗剤などに含まれている物質の一部は非常に分解が遅く、分解されにくい物質は長時間水環境中にとどまり続けます。このような物質が、水の中に住む生物などに悪い影響を与える懸念があるのです。また、河川や湾の富栄養化の原因になるリンを含む洗剤も存在しますよ

このような界面活性剤による環境汚染は、下水道の普及により、かなり少なくなっています。ですが、界面活性剤などを含んだ下水を処理するためには、莫大な電気エネルギーを消費しますよね電気エネルギーを大量消費すると、地球温暖化といった別の環境問題につながってしまうのです。このようなことからも、界面活性剤は洗浄に必要である適切な量を使うことが重要だと言えます。実は、界面活性剤を多く使ったからといって、洗浄力が高くなる訳ではないのです。

界面活性剤について理解しよう

界面活性剤の代表例は石けんや中性洗剤であり、今やこれらを使っていない家庭はほとんど存在しないと言っても過言ではありません。このように身近な存在である界面活性剤ですが、界面活性剤の仕組みについてしっかりと理解している人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、界面活性剤の役割、石けんと中性洗剤の違いなどに焦点を当てて、化学の視点から解説を進めてきました。日常生活でも役に立つ豆知識も紹介しましたよ。ぜひ、この記事を読んで、界面活性剤についての理解を深めてみてください。

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化学理科生活と物質

3分で簡単「界面活性剤」汚れが落ちる仕組みを理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「界面活性剤」について解説していきます。

界面活性剤という言葉だけではよくわからないという人も多いかもしれないが、実は石けんや洗剤は界面活性剤の一種です。石けんや洗剤を使うと、油の汚れを簡単に落とすことができる。それはなぜでしょうか?今回は、化学的な視点から界面活性剤の仕組みを解明してくぞ。ぜひ、この機会に、界面活性剤について学んでみてくれ。

環境工学、エネルギー工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。環境化学工学、資源材料学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

水と油は混ざりにくい

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界面活性剤について詳しく学ぶ前に、水と油の性質について学んでみましょう。水と油の性質について、知ることのできる場面は、身近なところにたくさんあります。例えば、写真のように、餃子のたれの上に油滴が浮かんでいるという現象です。他にも、ドレッシングを放置していると油の層と水の層に分かれるという現象もありますよ。これらの現象から、水と油にはどのような性質があるのかを予想してみてください。

実は、水と油は混ざりにくいと一般的に言われています。水と油はなじみにくいとも言えますね。このため、水と油の相性は非常に悪いのです。服についた油が水では簡単に落ちない理由は、まさにこれですよ。キッチンの油汚れが水ではとれない理由も、同様ですね。ここからは、何もしない状態では水と油は混ざりにくいということを頭に入れて、界面活性剤について詳しく学んでいきましょう。

界面活性剤の役割

界面活性剤の役割

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先ほど、水と油はなじみにくいということを学びました。では、どのようにすれば、水と油をなじみやすくすることができるようになるでしょうか。1つのアイデアとして、水と油のどちらにもなじみやすい物質を、水と油の界面に配置するという方法が挙げられます。このようにすることで、間接的にではありますが、水と油が混ざり合うことができるようになるのですね。そして、水と油のどちらにもなじみやすい物質がまさに、界面活性剤なのです。

界面活性剤には、水になじみやすい親水基と呼ばれる部分と、油になじみやすい疎水基(親油基)と呼ばれる部分が存在します。例として、油滴を含む水に、界面活性剤を加えるとどのようになるかを考えてみましょう。油滴は、疎水基(親油基)を内側にして、界面活性剤の囲われます。そして、親水基は外側に向きますよね。これで、油は水の中を自由自在に動き回ることができるようになります

以上のような理由から、洗剤などの界面活性剤を利用することで、服についた油を落としたり、キッチンの油汚れを除去することが可能になるのです。水と油がなじみやすくなることで、流水が油をさらっていってくれるのですね。さらに、水にさらわれた油は界面活性剤に囲われているので、再度服などに付着する心配もありません。このような作用のことを、界面活性剤の乳化作用といいますよ。

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