今回は「紫外線」について解説していきます。

紫外線という言葉を聞くと、日焼けを連想する人が多い。それゆえ、紫外線に対するイメージは悪くなる傾向がある。ですが、紫外線は様々な技術に応用されており、大活躍している分野も少なくないぞ。この記事では、紫外線の良い側面と悪い側面の両方を紹介するつもりです。ぜひ、この機会に、紫外線に対する理解を深めてみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

紫外線に対するイメージ

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皆さんは、紫外線という言葉に対してどのようなイメージを持っていますか?多くの人は「紫外線といえば日焼け」という連想をするのではないでしょうか。夏の強い日差しを浴びて、真っ黒に日焼けしたという経験をした人も少なくはないと思います。日焼けというと悪いイメージを抱くことが多く、紫外線に対しても悪いイメージが先行する方も多いはずです

ですが、紫外線にも良い部分はあります。例えば、殺菌効果が良い例です。殺菌といえば、アルコールなどの消毒液を用いる方法が一般的ですが、これらの方法は物を濡らしてしまうというデメリットがあります。ですが、紫外線を用ると、物を濡らさずに殺菌を行うことができるのです

この記事では、物理学的な視点から紫外線の正体を解明し、日焼けや殺菌などの紫外線に関する身近な話題についても解説していきます。ぜひ、最後までご覧になってください。

紫外線とは?

紫外線とは?

image by Study-Z編集部

ここでは、紫外線の正体について物理学の視点から考察してみましょう。一言で表現すると、紫外線は光の一種です。光とは言いましたが、紫外線は人間の目には見えない光ですよ。人間の目に見える光のことを可視光線といいますが、紫外線の波長は可視光線の波長よりも短くなっています。また、波長がさらに短くなると、電磁波の一種であるX線やガンマ線として扱われますよ。電磁波のエネルギーは、波長が短いほど大きくなるとされています

地上に降り注ぐ紫外線のほとんどが太陽の光によるものです。太陽からやってきた紫外線は、最初にオゾン層を通過します。このオゾン層は紫外線を減衰させる効果があるとされていますよ。そのため、フロンの排出などによるオゾン層の破壊は深刻にとらえられている環境問題の1つです。オゾン層を通過したあとに、紫外線は大気中のエアロゾルなどによる散乱および反射を繰り返し、地表面に到達します。また、私たちの体が浴びる紫外線の一部は、地面で反射したものも含まれていますよ。

紫外線に関連する身近な現象

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日焼け

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可視光線に比べて、紫外線は透過力が強く、非常に強いエネルギーを持っていますよ。そのため、紫外線を物質に当てると、化学反応などをおこします。このような理由から、大量の紫外線が皮膚に当たるとやけどのような炎症をおこしてしまうのです。長時間、強い紫外線を浴びると皮膚ガンが発生する可能性もあるので注意が必要ですよね。

しかしながら、普通に生活しているだけでも紫外線を浴びる機会は沢山あります。そのたびに、皮膚が炎症をおこしているようでは大変です。そうならないように、人間の表皮細胞には特殊な仕組みが備わっています。それは、紫外線のエネルギーを吸収してメラニンという色素を生成するというものですよ。このメラニンが、まさに日焼けで肌が茶色になる原因の色素です。

日焼け対策に有効だとされている製品は日焼け止めですよね。日焼け止めには、紫外線散乱材紫外線吸収材が含まれています。日焼け止めを肌に塗ることで、体内に入り込もうとする紫外線を減衰させるのです。紫外線によるダメージは、日焼けをおこすだけでなく、皮膚の炎症や皮膚ガンなどの深刻な影響を与える可能性もあります。レジャーなどに出かける際は、できる限り日焼け止めを塗るようにしましょう。

殺菌作用

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ここでは、紫外線の殺菌作用について確認されています。紫外線の殺菌効果に対する理論は、複数の説があり、現時点では確定的な説はありません。最も有力とされている説は、細菌などの細胞内にあるDNAが紫外線をよく吸収し、破壊につながるというものです。DNAは遺伝情報が記録されている細胞の設計図のようなものですから、これが破壊されると細菌は不活性化するというのですね。

様々な研究の結果から、細菌などを最も効率よく不活性化できる紫外線の波長はおよそ260[nm]とされています。このため、殺菌ランプはこの波長に近い波長の光を発するように設計されていますよ。このような殺菌ランプを空調機器などの中に設置することで、施設内の空気の中に存在する細菌などを不活性化させることができるのですね。

プラスチックの劣化

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皆さんの中には、庭先においていたプラスチック製のバケツやプランターが、いつの間にかもろくなって割れていたという経験をお持ちの方がいるのではないでしょうか。実は、プラスチックを劣化させているのは、太陽光に含まれている紫外線です。プラスチック製品は、有機系のポリマーから成りますが、紫外線はポリマー中の結合を切断する性質を持ちます。

このようなことが起きないようにするために、耐紫外線のプラスチック製品も存在しますよ。耐紫外線プラスチック製品には、表面を紫外線遮蔽材や紫外線吸収剤でコーティングしたもの紫外線に分解されにくいポリマーを使用したものなどがあります。

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偽札・偽造書類を見破る

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紫外線は、偽札や偽造書類が正規のものでないことを識別するためにも、使用されています。本物の紙幣や書類に、紫外線をよく吸収する蛍光塗料で、特殊なマークを印刷しておくのです。このようにすることで、正規のものと偽造されたものが同じ見た目であっても、紫外線を照射すると特殊なマークが見えるかどうかによって本物と偽物を瞬時に見分けることができます

実際、多くの国が発行しているパスポートには、紫外線によく反応する蛍光塗料で細いラインが印刷されていますよ。日本国のパスポートでは、細いラインのほかに、自分の顔写真も印刷されているそうです。紫外線を発するブラックライトで、パスポートに光を当てると、自分の顔写真が浮かび上がって見えます。パスポートを持っている人は、ぜひ一度試してみてくださいね。

意外にも役に立つ紫外線

この記事の冒頭でも述べたように、紫外線は日焼けの原因となってしまいます。そのようなことが原因で、紫外線というと悪いイメージが先行してしまうという人は少なくないかもしれません。ですが、紫外線が知られてには殺菌効果があることおり、医療や公衆衛生の分野では有効活用されています。それだけでなく、パスポートなどの重要書類の偽造防止にも使われていることも学びましたよね。

このように悪いイメージが先行してしまうようなものでも、実は役に立つことも多いという事例は、紫外線以外にも数多くあります。悪いイメージを抱くものこそ、一度立ち止まって、いろいろな角度から考察してみることは大切なことかもしれません。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単「紫外線‎」その効果や影響を理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「紫外線」について解説していきます。

紫外線という言葉を聞くと、日焼けを連想する人が多い。それゆえ、紫外線に対するイメージは悪くなる傾向がある。ですが、紫外線は様々な技術に応用されており、大活躍している分野も少なくないぞ。この記事では、紫外線の良い側面と悪い側面の両方を紹介するつもりです。ぜひ、この機会に、紫外線に対する理解を深めてみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

紫外線に対するイメージ

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皆さんは、紫外線という言葉に対してどのようなイメージを持っていますか?多くの人は「紫外線といえば日焼け」という連想をするのではないでしょうか。夏の強い日差しを浴びて、真っ黒に日焼けしたという経験をした人も少なくはないと思います。日焼けというと悪いイメージを抱くことが多く、紫外線に対しても悪いイメージが先行する方も多いはずです

ですが、紫外線にも良い部分はあります。例えば、殺菌効果が良い例です。殺菌といえば、アルコールなどの消毒液を用いる方法が一般的ですが、これらの方法は物を濡らしてしまうというデメリットがあります。ですが、紫外線を用ると、物を濡らさずに殺菌を行うことができるのです

この記事では、物理学的な視点から紫外線の正体を解明し、日焼けや殺菌などの紫外線に関する身近な話題についても解説していきます。ぜひ、最後までご覧になってください。

紫外線とは?

紫外線とは?

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ここでは、紫外線の正体について物理学の視点から考察してみましょう。一言で表現すると、紫外線は光の一種です。光とは言いましたが、紫外線は人間の目には見えない光ですよ。人間の目に見える光のことを可視光線といいますが、紫外線の波長は可視光線の波長よりも短くなっています。また、波長がさらに短くなると、電磁波の一種であるX線やガンマ線として扱われますよ。電磁波のエネルギーは、波長が短いほど大きくなるとされています

地上に降り注ぐ紫外線のほとんどが太陽の光によるものです。太陽からやってきた紫外線は、最初にオゾン層を通過します。このオゾン層は紫外線を減衰させる効果があるとされていますよ。そのため、フロンの排出などによるオゾン層の破壊は深刻にとらえられている環境問題の1つです。オゾン層を通過したあとに、紫外線は大気中のエアロゾルなどによる散乱および反射を繰り返し、地表面に到達します。また、私たちの体が浴びる紫外線の一部は、地面で反射したものも含まれていますよ。

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