この記事では「熱帯多雨林」と「亜熱帯多雨林」について学んでいきたいと思う。

これらの言葉は高校で履修する”生物基礎”の最後の方で出てくるんですが、具体的なイメージは持てているでしょうか?普段生き物に興味のないやつにとっては、動物や植物の名前を覚えるのが大変な部分です。今回は具体例もあげながら学習していこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

熱帯多雨林・亜熱帯多雨林とは?

熱帯多雨林(ねったいたうりん)とは、一年中気温が高く、降水量も多い(年間2000mm以上)ような熱帯域で成立する樹林のタイプのことを指します。

高さが50メートル以上にもなるような背の高い樹が多いのに加え、つる植物や樹上着生植物が多いことも特徴です。

熱帯多雨林によく似た言葉で混同しやすいのが亜熱帯多雨林(あねったいたうりん)。亜熱帯多雨林は、熱帯多雨林が成立するような環境よりもやや気温が低く、年間降水量もやや少ない亜熱帯域に成立する樹林です。

これらの言葉は、高校の生物基礎において「バイオーム」を学習するときに出てきます。

\次のページで「バイオームとは」を解説!/

バイオームとは

バイオーム(生物群系)とは、そのエリアに住んでいる「すべての生物」をひっくるめてさす言葉です。「動物だけ」「植物だけ」ではなく、「すべての生物」というところに注意してください。

このバイオームは、そのエリアがどんな気候かによって左右されます。例えば、「一年中気温が低く、雨も降らないような場所には多少の草本植物しか生えない」とか、「ある程度の気温と降水量がある場所では森林ができる」とかいった具合です。

今回学習している、熱帯多雨林と亜熱帯多雨林という言葉は、それぞれ熱帯域や亜熱帯域で成立するバイオームのタイプを指している、ということになります。

image by Study-Z編集部

地球の陸上は、年間平均気温と年間降水量によっておおまかに10のバイオームに区分できるといわれています。熱帯多雨林は10タイプに分けられたバイオームの中でも、特に高い年間平均気温・年間降水量がある地域に成立するものです。

なお、前述のバイオームのイラストのように、熱帯多雨林と亜熱帯多雨林をはっきりと区別せず、”熱帯・亜熱帯多雨林”とまとめて紹介することがよくあります。熱帯多雨林と亜熱帯多雨林の違いはとても微妙で、両方のバイオームに共通する生物がいたりするからです。

\次のページで「”熱帯多雨林”に当てはまる地域・特徴的な生物」を解説!/

”熱帯多雨林”に当てはまる地域・特徴的な生物

ここからは、「熱帯多雨林」に当てはまる地域と特徴的な生物をご紹介します。

ボルネオ島(インドネシア・マレーシア・ブルネイ)

ボルネオ島は赤道直下の東南アジアにある島です。島といっても、日本の2倍弱という広大な面積をもち、インドネシア・マレーシア・ブルネイの3か国が領土を分け合っています。

熱帯多雨林のバイオームの例としてよく出されるのが、このボルネオ島や、近くのスマトラ島に住む霊長類・オランウータン。ボルネオ島のオランウータンはボルネオオランウータンといいます。樹上に住み、樹に実る果実や植物の葉、昆虫などを食べるオランウータンの生態は、熱帯多雨林のように高木が多くバイオームが豊かなところに適応しているといってでしょう。

image by iStockphoto

熱帯多雨林を構成する樹木としては、フタバガキの例も挙げられます。フタバガキは東南アジアに70種以上が分布している高木。ボルネオ島をはじめとする東南アジアの熱帯多雨林では主要な樹種(優占種)です。高さは60メートルほどにもなります。

アマゾン(ブラジル他)

アマゾンは南米のアマゾン川流域に広がる広大な熱帯多雨林。複数の国にまたがっていますが、全面積の6割ほどはブラジルに属しています。生物の種類は多様性に富んでおり、今でも新種の昆虫が発見されることがしばしばあるほどです。

image by iStockphoto

アマゾンを流れる川の河口付近ではマングローブの林を見ることができます。マングローブは特定の種類の植物を指す言葉ではなく、河口のような、淡水と海水が混じる汽水域に群落をつくる樹木をまとめて指したものです。ヒルギという植物のなかまが中心になっていることが多いですね。

サロンガ国立公園(コンゴ民主共和国)

ここまで読んで余裕のある人は、他の人がなかなか出せない例も覚えちゃいましょう!

アフリカ大陸のほぼ真ん中、コンゴにあるサロンガ国立公園には、人の手がほとんど入っていない、原始的な熱帯多雨林が保全されています。ユネスコの世界自然遺産にも登録されていますが、周囲の人口増加や、それに伴う森林伐採などが進んでおり、保全活動が維持できるか心配されている国立公園です。

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image by iStockphoto

このサロンガ国立公園で見られる特徴的な動物にボノボがいます。

ボノボはアフリカ大陸の他の場所に生息するチンパンジーと同じ属(チンパンジー属)で、ピグミーチンパンジーという別名で呼ばれることもある霊長類です。この別名からもわかる通り、チンパンジーによく似ており、昔はチンパンジーと混同されていましたが、のちに別種だということが明らかになりました。

熱帯多雨林であるコンゴ中部にしか生息していない動物なので、熱帯多雨林のバイオームを構成する生物の一つといって過言ではないでしょう。

”亜熱帯多雨林”に当てはまる地域・特徴的な生物

続いては、「亜熱帯多雨林」に当てはまる地域と特徴的な生物のご紹介です。

沖縄(日本)

多くの日本人が観光で訪れる沖縄や、その周辺の島々のバイオームは亜熱帯多雨林となっていることが多いです。沖縄で見られるもので覚えておきたい亜熱帯多雨林の植物には、カジュマルやアコウ、ビロウ、ヘゴなどがあるでしょう。

ガジュマルはクワ科の常緑樹。高さ20メートルほどになる種で、台湾やインドなどにも分布しています。アコウも同じくクワ科の樹木。ガジュマルよりはやや寒さに強く、紀伊半島などにも分布しています。ヤシ科のビロウは、いわゆる「ヤシの木」のなかまです。国内では、四国の南部や九州の南部などにも分布しています。

ヘゴはシダ植物のなかまですが、太い茎をもち樹木のように成長する木生シダの一種です。高さ数メートルにまで成長するので、普通の樹木と混同してしまいそうですが、葉を見るとシダ植物らしさがわかります。

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他にも、亜熱帯多雨林に特徴的な生物は色々ありますが、学校のテストや入試などで問われるのはこれくらいでしょう。

熱帯多雨林・亜熱帯多雨林を訪れてみよう!

バイオームの学習では、たくさんの生物の名前が出てきます。「覚えるのが苦手…」という人におすすめなのは、現物をその目で確かめてみること。実際に見たり、触れたりした生物は印象が強くなり、自然と名前を憶えやすくなります。

機会があれば、熱帯多雨林や亜熱帯多雨林を訪れてみてください。大きいものや小さいもの、カラフルなもの、奇妙なもの…多種多様な生物の生息するこの地域は、生物が好きではない人にとっても楽しめるに違いありません。

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理科生態系生物

熱帯多雨林・亜熱帯多雨林の違いとは?特徴・生物・植物などバイオームを理系現役講師が紹介

この記事では「熱帯多雨林」と「亜熱帯多雨林」について学んでいきたいと思う。

これらの言葉は高校で履修する”生物基礎”の最後の方で出てくるんですが、具体的なイメージは持てているでしょうか?普段生き物に興味のないやつにとっては、動物や植物の名前を覚えるのが大変な部分です。今回は具体例もあげながら学習していこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

熱帯多雨林・亜熱帯多雨林とは?

熱帯多雨林(ねったいたうりん)とは、一年中気温が高く、降水量も多い(年間2000mm以上)ような熱帯域で成立する樹林のタイプのことを指します。

高さが50メートル以上にもなるような背の高い樹が多いのに加え、つる植物や樹上着生植物が多いことも特徴です。

熱帯多雨林によく似た言葉で混同しやすいのが亜熱帯多雨林(あねったいたうりん)。亜熱帯多雨林は、熱帯多雨林が成立するような環境よりもやや気温が低く、年間降水量もやや少ない亜熱帯域に成立する樹林です。

これらの言葉は、高校の生物基礎において「バイオーム」を学習するときに出てきます。

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