この記事では「襟を正す」について解説する。

端的に言えば「襟を正す」の意味は「姿勢を改めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「襟を正す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「襟を正す」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「襟を正す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「襟を正す」の意味は?

「襟を正す」には、次のような意味があります。

1.自己の乱れた衣服や姿勢を整える。
2.それまでの態度を改めて、気持ちを引き締める。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「襟を正す」

「襟(えり)」とは、衣服の首回り部分のこと。相手と会話をする時、多くの人が顔か首回りに注目するのではないでしょうか。「襟」は、顔や首に近い部分です。衣服の部位の中でも目立つ箇所といってよいでしょう。さらに、襟があるワイシャツや上着は、仕事やかしこまった場所でよく着られていますよね。襟が崩れていると印象が良くありません。だからこそ、整った襟で姿勢をよくするだけで、相手に好印象を与えることができます。

「正(ただ)す」は、間違っているものを改める、もしくは乱れている部分を整えるという意味。「襟を正す」は、服装を整えて気持ちを引き締める様子から、物事に対してしっかりと向き合う姿勢や気持ちを表す慣用句として使われるようになりました。

「襟を正す」の語源は?

次に「襟を正す」の語源を確認しておきましょう。「襟を正す」は、蘇軾(そしょく)が作った「前赤壁賦(ぜんせきへきのふ)」が由来だといわれています。蘇軾は、中国北宋の政治家であり文学者。地方官という肩書きがありながら、宋代を代表する文豪としても有名です。「赤壁賦」は蘇軾の代表作。政治上の争いから黄州に左遷された蘇軾が、「赤壁」にて遊んだおりに作ったもの。前後2編で成り立つことから、「前赤壁賦」と「後赤壁賦」の2つに区別されました。

「前赤壁賦」には、次のような一文があります。「私は顔色を変えて襟を正し、かしこまって座り客人に尋ねました」と。あまりにも客人が悲しい笛の音を響かせることから、蘇軾が心配して理由を尋ねた時のお話です。よほどの理由があるのだろうと、蘇軾自身も真剣に話を聞こうとしたのでしょう。真摯な姿勢が「襟を正す」で上手く表現されているといえますね。

\次のページで「「襟を正す」の使い方・例文」を解説!/

「襟を正す」の使い方・例文

「襟を正す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.校長先生に会うため、部屋に入る前に襟を正した。

2.先輩に注意されたことで、襟を正すいい機会になりました。

3.世間の意見を真摯に受け止めているならば、彼らは襟を正すべきだろう。

「襟を正す」は、身なりを整えることを表す以外にも、物事に対して真面目に対処する時によく使われています。たとえば、素晴らしい功績を残した人物の話を聞く機会があったとしましょう。そのような時は、普段よりも気持ちが引き締まるはずです。相手に対して敬意を払うためにも、自然と「襟を正す」のではないでしょうか。

また、これまでの行いや発言を改めて欲しい時など、非難として「襟を正すべきだ」と使われることがあります。「姿勢」や「取り組み方」を「襟」で表現するのは、慣用句ならではといえますね。「襟を正す」は、自身の気持ちを引き締めたい時、もしくは相手に姿勢を改めて欲しい時などに使うとよいでしょう。

「襟を正す」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

では、「襟を正す」の類義語や違いをみていきましょう。

「威儀を正す」

「正す」を使った慣用句は、「襟を正す」以外にもあります。「威儀(いぎ)を正す」の意味は、身なりや形を整えて、作法に合った立ち振る舞いをすること。「威儀」とは、動作や容姿が礼式にかなっていることという意味になります。「威儀を正す」は、「威儀を繕う」と表現しても問題ありません。

「威儀を正す」は、礼式に合わせた態度をとることから、かしこまった場所に赴く時に使われます。たとえば、授賞式や式典など、緊張しながら身を引き締めて臨むイベントがありますよね。そのような時に「威儀を正して臨む」と表現することができます。

\次のページで「「居住まいを正す」」を解説!/

「居住まいを正す」

「居住まい」は、人が座っている姿勢のこと。すなわち「座り方」だと思ってください。「居住まいを正す」の意味は、きちんとした姿勢に座り直し、態度を改めること。「背筋を正す」と同じ意味として使ってもよいでしょう。

「居住まいを正す」場面は、日常でも多く存在します。たとえば、先生が来るまで雑談をしていたとしましょう。しかし、先生が来たとわかれば、全員が「居住まいを正す」のではないでしょうか。「襟を正す」は、気持ちを表現する時にも使われますが、「居住まいを正す」は、あくまで姿勢を正した時のみに使われます。目上の人に挨拶する時や、話を聞く時に「居住まいを正す」を使ってみてください。

「襟を正す」の対義語は?

「襟を正す」は、気を引き締めて真剣に向き合う姿勢を表していることから、反対の意味となると「相手に対して失礼な態度をとる」となるはずです。そこで今回は、「失礼」もしくは「無作法」といった意味合いで、「襟を正す」の対義語をみていきましょう。

「無礼」

「無礼(ぶれい)」の意味は、礼儀にはずれること。よく「無礼者」と言いますが、相手に対して礼儀がなっていない時に使われます。「無礼」な態度をとられたら、相手も気分がいいものではありません。社会人であるならば、礼儀作法はちゃんとしておきたいものです。

「横柄」

「横柄(おうへい)」な態度をとる人は、決して周囲から好かれることはありません。意味は、無遠慮で人を無視したような態度をとること。傲慢であるがゆえに、威張ってしまうのがよくないのでしょう。「横柄な態度」をとっている人ほど、襟を正して欲しいものですね。

「足蹴」

「足蹴(あしげ)」の意味は文字通り、足で蹴ること。転じて、他人にひどい仕打ちをする意味として使われるようになりました。「足蹴」の場合は、失礼な態度をとるどころか、まるで人を足で蹴り飛ばしたかのように傷つけるわけです。人として許される行為ではありません。もしも「足蹴にされた」と嘆いている人がいたら、本人はひどく辛い思いをしたことになります。襟を正して、耳を傾けてあげてください。

「襟を正す」の英訳は?

image by iStockphoto

では、「襟を正す」を英訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

\次のページで「「shape up」」を解説!/

「shape up」

「shape up」と言うとダイエットを連想してしまいがちですが、正しくは「しっかりやる」や「行いを改める」といった意味として使われています。そのため「shape up」は、「行儀よくする」や「きちんと振舞う」といったニュアンスで使っても問題ありません。「Please shape up」といえば、「襟を正してください」と伝えることができるでしょう。

「straighten oneself」

「straighten」は「まっすぐにする」や「戻す」といった意味。「oneself」は「自分自身」や「自分で」という意味になります。「straighten oneself」で「自分の背筋を伸ばす」となり、「襟を正す」として使うことができるでしょう。

「straighten oneself」は、「up」や「out」をプラスするだけで、また違ったニュアンスで英訳することができます。「straighten oneself up」は「背筋を伸ばす」という意味になるため、「襟を正す」として使ってもよいでしょう。「straighten oneself out」は、「まともになる」や「心を入れ替える」という意味になります。

「襟を正す」を使いこなそう

この記事では「襟を正す」の意味・使い方・類語などを説明しました。「襟を正す」機会は、偉大な人物に会う時だけとは限りません。家族や友人が落ち込むほど悩んでいるならば、真剣に話を聞く姿勢もまた「襟を正す」といえるのではないでしょうか。ふざけた様子で話を聞くよりも、態度を改めてしっかりと話を聞くほうが、相手にとっても嬉しいはずです。

「襟を正す」は、見方を変えれば、相手をリスペクトしているからこそ、自然と態度が改まるといってよいでしょう。敬意の表し方は人それぞれです。しかし、背筋を伸ばすだけでも印象は全く違うはず。憧れの人に会える時こそ、「襟を正す」を使って気持ちを表現してみてください。

" /> 【慣用句】「襟を正す」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「襟を正す」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「襟を正す」について解説する。

端的に言えば「襟を正す」の意味は「姿勢を改めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「襟を正す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「襟を正す」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「襟を正す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「襟を正す」の意味は?

「襟を正す」には、次のような意味があります。

1.自己の乱れた衣服や姿勢を整える。
2.それまでの態度を改めて、気持ちを引き締める。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「襟を正す」

「襟(えり)」とは、衣服の首回り部分のこと。相手と会話をする時、多くの人が顔か首回りに注目するのではないでしょうか。「襟」は、顔や首に近い部分です。衣服の部位の中でも目立つ箇所といってよいでしょう。さらに、襟があるワイシャツや上着は、仕事やかしこまった場所でよく着られていますよね。襟が崩れていると印象が良くありません。だからこそ、整った襟で姿勢をよくするだけで、相手に好印象を与えることができます。

「正(ただ)す」は、間違っているものを改める、もしくは乱れている部分を整えるという意味。「襟を正す」は、服装を整えて気持ちを引き締める様子から、物事に対してしっかりと向き合う姿勢や気持ちを表す慣用句として使われるようになりました。

「襟を正す」の語源は?

次に「襟を正す」の語源を確認しておきましょう。「襟を正す」は、蘇軾(そしょく)が作った「前赤壁賦(ぜんせきへきのふ)」が由来だといわれています。蘇軾は、中国北宋の政治家であり文学者。地方官という肩書きがありながら、宋代を代表する文豪としても有名です。「赤壁賦」は蘇軾の代表作。政治上の争いから黄州に左遷された蘇軾が、「赤壁」にて遊んだおりに作ったもの。前後2編で成り立つことから、「前赤壁賦」と「後赤壁賦」の2つに区別されました。

「前赤壁賦」には、次のような一文があります。「私は顔色を変えて襟を正し、かしこまって座り客人に尋ねました」と。あまりにも客人が悲しい笛の音を響かせることから、蘇軾が心配して理由を尋ねた時のお話です。よほどの理由があるのだろうと、蘇軾自身も真剣に話を聞こうとしたのでしょう。真摯な姿勢が「襟を正す」で上手く表現されているといえますね。

\次のページで「「襟を正す」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: