この記事では「一言一行」について解説する。

端的に言えば一言一行の意味は「ちょっとした言動や振る舞い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「一言一行」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「一言一行」の意味や語源・使い方まとめ

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一言一行は「いちげんいっこう」と読みます。それでは、さっそく「一言一行」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「一言一行」の意味は?

一言一行には、次のような意味があります。

一つの言葉と一つのおこない。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「一言一行」

言葉一つ、行動一つで、「一言一行」と表現しています。直接の意味はそのままで「一つ一つの言葉や振る舞い」ですが、熟語としての意味は「ちょっとした言動や振る舞い」という意味です。「一つ」は「ちょっとしたこと」を表すために用いられている表現となります。

「一言一行」の由来は?

一言一行は、中国の古い文献に由来する言葉です。「顔氏家訓(がんしかくん)」という、一族の家訓をまとめた資料の中に「盗みをしてはならない」という趣旨の家訓があります。この「盗み」には、いわゆる泥棒だけでなく、今でいう盗用も含まれていたのです。そのことを示しているのが、「凡有一言一行、取於人者、皆顯稱之、不可竊人之美,以為己力。」という一節になります。意味は、「もし人から一言一行でも引用することがあれば、すべてその出典を明らかにすべきであり、他人の美を盗んで自分の力としてはならない」です。要するに、少しでも他人から引用するのなら出典を明らかにしなさい、他人の言動や行動を自分のもののように扱ってはならない、という戒めの家訓になります。ここで用いられた「一言一行」が、現在使われている「一言一行」の直接の由来となったのです。

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「一言一行」の使い方・例文

一言一行は、「ちょっとした言動や振る舞い」という意味の言葉で、意味としてはシンプルな表現です。そのため、使える場面も多くあります。それでは、一言一行を使った例文をみていきましょう。

・チームリーダーとしてスタッフの鑑となるよう、一言一行に気を付ける。

・悪いうわさがすぐにSNSで拡散するので、ネット社会では一言一行が命取りだ。

・若くして会長に就任しただけあって、彼の発言や行動には一言一行たりとも隙がない。

ここで挙げた3つの例文では、それぞれ場面や使い方が違います。

一つ目の例文は、「自分のちょっとした行動や言動もスタッフに見られているので、そのお手本となれるように気を付けよう」という意味です。

二つ目の例文は、「不用意な一言や行動がすぐにSNSで拡散され、悪いうわさとなって広がってしまうので気を付けよう」という意味になります。

この二つの例文は、気を付ける相手が違うものの、「些細な行動にも注意する」という意味では同じ使い方です。

三つ目の例文では、先の二つとは少し違う使い方をしています。細かなことに至るまで、まったく油断がない、という意味での使い方です。

つまり、「一言一行」そのものには「注意する」という意味も「油断がない」という意味も含まれていない、という点がポイントになります。

このあたりを意識して使うように注意しましょう。

「一言一行」の類義語は?違いは?

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一言一行と同じような意味の言葉について、いくつかみていきましょう。

「一挙一動」

一挙一動は「いっきょいちどう」と読みます。立ち居振る舞いや動作のことを意味する「挙動」という熟語があるのですが、それぞれの漢字に「」をつけてできた四字熟語です。一言一行と同じく、「一」には「ちょっとした」や「少し」という意味が込められています。そのことからもわかるとおり、一挙一動は「ちょっとした動作や振る舞い」という意味です。一言一行とほとんど同じ意味ですが、一言一行には「言動」「(発する)言葉」という意味も含まれているのに対して、一挙一動はより動作や振る舞いに注目した熟語となっています。

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「一言一句」

一言一句は「いちごんいっく」と読みます。ここで使われている「」と「」は、どちらも言葉という意味です。「一」は一言一行や一挙一動と同じく「少し」や「ちょっとした」という意味をもちます。つまり、「少しの言葉」や「ちょっとした言葉」という意味の熟語です。この言葉自体は「良い」「悪い」といった意味をもたないのも、一言一行や一挙一動と同じですね。ほとんど同じ意味の言葉で、「一言半句」「一字一句」などが挙げられます。

「一言一行」の対義語は?

一言一行の意味は「ちょっとした言葉や行動」です。それでは、一言一行の対義語をみていきましょう。

「千言万語」

千言万語は「せんげんばんご」と読みます。「言葉」と同じ意味の熟語で「言語」という熟語がありますが、それぞれの漢字の前に「」「」という数字をつけた熟語です。

一言一行や一言一句の「一」が「ちょっと」や「少し」といった意味をもつのと反対で、ここで使われている「千」「万」は「たくさんの」や「多くの」という意味になります。

つまり、千言万語は「たくさんの言葉」という意味の言葉です。

「彼との思い出は、千言万語を尽くしても語りきれない」などといった使い方をします。

熟語の「数」の表現

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今回の記事のテーマである「一言一行」をはじめ、漢数字が使われている四字熟語はたくさんあります。漢数字が表している数に意味があるケースもありますが、具体的な数量ではなく大小などを表現するのに使われているケースもあるのです。ここでは、漢数字が使われている四字熟語をいくつかご紹介します。

「一朝一夕」

一朝一夕は「いっちょういっせき」と読みます。ここでの「一」は文字通りの「1」という意味です。一朝一夕の直接的な意味は「ひと朝やひと晩」という意味になります。ここから転じて、「短い日にちや時間」という意味の熟語です。「この大きな町は、一朝一夕にできあがったものではない」「彼の能力は一朝一夕に身についたものではない」といった使い方をします。

「一石二鳥」

一石二鳥は「いっせきにちょう」と読みます。「石を一つ投げて二羽の鳥を落とす」ということから、「一つの行為で二つの利益を生む」という意味をもつ熟語です。この場合も、「一」「二」という漢数字はそのまま数字としての意味で使われています。なお、四字熟語の由来は中国の故事が多いものですが、一石二鳥はイギリスのことわざ「Killing two birds with one stone」の日本語訳からできた、というおもしろい経緯があるので、覚えておくといいでしょう。

\次のページで「「五臓六腑」」を解説!/

「五臓六腑」

五臓六腑は「ごぞうろっぷ」と読みます。「五臓」は心臓、腎臓、肝臓、脾臓、肺臓の五つ、六腑は大腸、小腸、胃、胆、膀胱、三焦の六つです。つまり、全身の内臓を指しています。もともとは漢方の言葉で、内臓の表現も漢方医学に基づいた独特の考え方をもとにした表現です。全身の内臓、という意味では、「五」と「六」はあまり数字としての意味はなしていないかもしれません。

「一言一行」を使いこなそう

今回の記事では、「一言一行」の意味や由来、使い方について説明しました。一言一行の意味は簡単にいえば「ちょっとした言葉や行為」で、そのこと自体を良いとか悪いとかいう意味は含んでいません。そのため、使い勝手がいい反面、使い方を間違えると意味が通らない文章になってしまうので、注意しましょう。

また、漢数字が使われている熟語に注目し、いくつかご紹介しました。一言一行や一言一句、千言万語で使われている漢数字はどれも「多い」「少ない」というニュアンスを表現するために使われていますが、一石二鳥などの場合は数字としての意味が生きています。漢数字が数字としての意味をもっている熟語を、その数字があてはまらない状況で使用するのは間違いなので、漢数字が使われている熟語を使う際に注意するといいでしょう。

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【四字熟語】「一言一行」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「一言一行」について解説する。

端的に言えば一言一行の意味は「ちょっとした言動や振る舞い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「一言一行」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「一言一行」の意味や語源・使い方まとめ

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一言一行は「いちげんいっこう」と読みます。それでは、さっそく「一言一行」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「一言一行」の意味は?

一言一行には、次のような意味があります。

一つの言葉と一つのおこない。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「一言一行」

言葉一つ、行動一つで、「一言一行」と表現しています。直接の意味はそのままで「一つ一つの言葉や振る舞い」ですが、熟語としての意味は「ちょっとした言動や振る舞い」という意味です。「一つ」は「ちょっとしたこと」を表すために用いられている表現となります。

「一言一行」の由来は?

一言一行は、中国の古い文献に由来する言葉です。「顔氏家訓(がんしかくん)」という、一族の家訓をまとめた資料の中に「盗みをしてはならない」という趣旨の家訓があります。この「盗み」には、いわゆる泥棒だけでなく、今でいう盗用も含まれていたのです。そのことを示しているのが、「凡有一言一行、取於人者、皆顯稱之、不可竊人之美,以為己力。」という一節になります。意味は、「もし人から一言一行でも引用することがあれば、すべてその出典を明らかにすべきであり、他人の美を盗んで自分の力としてはならない」です。要するに、少しでも他人から引用するのなら出典を明らかにしなさい、他人の言動や行動を自分のもののように扱ってはならない、という戒めの家訓になります。ここで用いられた「一言一行」が、現在使われている「一言一行」の直接の由来となったのです。

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