この記事では「疾風勁草(しっぷうけいそう)」について解説する。
端的に言えば、疾風勁草の意味は「苦難にあってはじめてその人の真価がわかる」です。『後漢書(ごかんじょ)』に由来する故事成語です。あまりなじみのない言葉だから、語源からしっかり学んでおこう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「疾風勁草」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「疾風勁草」の意味・語源・使い方

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さっそく「疾風勁草」の意味と語源をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「疾風勁草」の意味

まず、国語辞典で「疾風勁草」の意味をチェックしましょう。

激しい風が吹いてはじめて丈夫な草が見分けられる。苦難にあってはじめて、その人の節操の堅さや意志の強さがわかるということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「疾風勁草」

「疾風」とは「速く強く吹く風」のこと。「勁」は、音読みは「ケイ」、訓読みは「つよい」で、「ピンと張りつめて強い」「力が強い」という意味です。「勁草」「風雪に耐える強い草」であることから「思想や節操が固いこと」のたとえになりました。

「疾風勁草」「強い風が吹いてはじめて強い草が見分けられる」ことから転じて「苦難にあってはじめてその人の意志の固さや節操の強さがわかる」という意味です。

「疾風勁草」の語源は『後漢書』

「疾風勁草」の語源は『後漢書』「王覇伝(おうはでん)」です。『後漢書』は中国の後漢の歴史について書かれた書物。公式に編纂(へんさん)された歴史書である二十四史のひとつです。王覇は、後漢の初代皇帝となる光武帝の家臣でした。

\次のページで「「疾風勁草」の使い方」を解説!/

光武謂覇曰、潁川従我者皆逝、而子独留努力、疾風知勁草

光武の覇(は)に謂ひて曰く、
潁川(えいせん)の我に従ひし者の皆な逝(ゆ)く、
而(しか)して子独り留まる。努力せよ。
疾風に勁草を知る、と。

出典:『後漢書』「王覇伝」

王覇は劉秀(光武帝)の河北攻めに参加していました。しかし戦いは困難を極め、人がどんどんいなくなり、ついに王覇だけになってしまいます。「劉秀は王覇に言った。潁川から私に従っていた者はみな去っていき、お前だけが留まった。強い風が吹いて強い草がわかる」という意味です。

「疾風勁草」の使い方

例文で「疾風勁草」の使い方を見ていきましょう。

1.資金も練習場所も練習時間も思うようにならなかったのに、オリンピックでメダルを取った彼女の座右の銘は、疾風勁草だそうだ。
2.一時期は学生起業家としてもてはやされ、社員が20人いたときもあったが、業績が傾いてからも辞めずに私を支えてくれたのは彼だけだった。疾風勁草の意味が身に染みてわかった。

最初の例文は、逆境にあっても目標を見失わず努力してメダリストになった彼女は、疾風勁草を人生訓にしていたということです。2番目の例文は、業績のよいときは、もてはやされて多くの人が集まってきますが、窮地に立たされたときにはじめて、節操の固い人間が誰かがわかるという意味ですよ。

「疾風勁草」の類義語

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「疾風勁草」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

\次のページで「「歳寒松柏(さいかんしょうはく)」:逆境でも志を変えない」を解説!/

「歳寒松柏(さいかんしょうはく)」:逆境でも志を変えない

語源は『論語』「子罕(しかん)」の「歳寒然後、知松柏後凋也」です。針葉樹の「松」は冬でも葉を落とすことなく青々をしています。また「柏」は中国ではヒノキの仲間のこと。「松柏」は落葉しないことから、変わらないことのたとえに使われます。「歳寒松柏」「寒い季節になったとき、松や柏の木が青々とした葉を保っている」という意味。「逆境に置かれても志を変えない」ことのたとえです。

「雪中松柏(せっちゅうしょうはく)」:主義を堅く守る

「雪中松柏」の語源は、南宋の政治家であり学者でもある謝枋得(しゃほうとく)の七言律詩の一節「雪中松柏愈青青」です。謝枋得は、元との戦いに敗れ、元に召されますが、元に仕えることを拒み、絶食して死んでしまいました。「雪中松柏」「寒さが厳しい雪のころでも、松や柏の葉は色を変えないこと」から転じて「時代の変化があっても志や節操を変えない」「主義を堅く守る」という意味です。

「志操堅固(しそうけんご)」:主義主張を変えない

「志操」とは「自分の主義主張を固く守り、変えないこと」。「堅固」は「堅くてこわれないこと」から転じて「意志が固く、しっかりしている」という意味になりました。「志操堅固」「自分の思想や主義主張を固く守って変えないこと」「何があっても自分の信条を曲げないこと」です。

「疾風勁草」の反対語

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「疾風勁草」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「敵前逃亡(てきぜんとうぼう)」:戦わずに逃げる

「敵前逃亡」は、兵士が指揮官の命令や職務を放棄して逃げること。戦争中に上官の命令に従わず勝手に逃げ出したら、部隊全体が混乱して味方を危険な目にあわせる可能性があるので、重罪になります。「敵前逃亡」とは、「敵を前にして、戦わずに逃げる」という意味です。

「窮途末路(きゅうとまつろ)」:窮地で困りはてる

「窮途」は「行きづまりになった道」から転じて「どうにもならない困難な状態」「困窮している立場」などの意味があります。また「末路」は「道の終わり」「一生の最後」「なれのはて」という意味です。「窮途末路」「行きづまりで進めなくなること」から「窮地にあって困りはてる」という意味になりました。「末路窮途(まつろきゅうと)」ともいいます。

\次のページで「「疾風勁草」の英訳」を解説!/

「疾風勁草」の英訳

次は英語で「疾風勁草」をどのように表現するか見ていきましょう。

「In a calm sea every man is a pilot.」

「calm」には「(天候や海が)穏やかな」「静かな」「風のない」という意味があります。「a calm sea」は「穏やかな海」ですね。「pilot」は「(飛行機の)パイロット」という意味もありますが、ここでは「水先案内人」という意味です。

水先案内人は高度な操船技術を持ち、水域の事情に精通して、港や船の安全を守る専門家のこと。In a calm sea every man is a pilot.「穏やかな海では誰もが水先案内人だ」という英語のことわざです。複雑な潮流や悪天候のときこそ、水先案内人の真価がわかるのですよ。

「疾風勁草」を使いこなそう!

この記事では、「疾風勁草」の意味や語源を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

 「疾風勁草」「強い風が吹いてはじめて強い草が見分けられる」ことから転じて「苦難にあってはじめて意志や節操の強さがわかる」という意味です。「疾風勁草」の語源は『後漢書』「王覇伝」ですね。

逆境や時代の流れに翻弄されず意志を貫き通すのは大変なこと。「疾風勁草」は並大抵の努力では実践できませんが、せめて言葉の意味を知って使いこなせるようになってくださいね。

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国語言葉の意味

語源は『後漢書』!「疾風勁草」の意味・語源・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

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端的に言えば、疾風勁草の意味は「苦難にあってはじめてその人の真価がわかる」です。『後漢書(ごかんじょ)』に由来する故事成語です。あまりなじみのない言葉だから、語源からしっかり学んでおこう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「疾風勁草」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

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日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「疾風勁草」の意味・語源・使い方

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さっそく「疾風勁草」の意味と語源をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「疾風勁草」の意味

まず、国語辞典で「疾風勁草」の意味をチェックしましょう。

激しい風が吹いてはじめて丈夫な草が見分けられる。苦難にあってはじめて、その人の節操の堅さや意志の強さがわかるということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「疾風勁草」

「疾風」とは「速く強く吹く風」のこと。「勁」は、音読みは「ケイ」、訓読みは「つよい」で、「ピンと張りつめて強い」「力が強い」という意味です。「勁草」「風雪に耐える強い草」であることから「思想や節操が固いこと」のたとえになりました。

「疾風勁草」「強い風が吹いてはじめて強い草が見分けられる」ことから転じて「苦難にあってはじめてその人の意志の固さや節操の強さがわかる」という意味です。

「疾風勁草」の語源は『後漢書』

「疾風勁草」の語源は『後漢書』「王覇伝(おうはでん)」です。『後漢書』は中国の後漢の歴史について書かれた書物。公式に編纂(へんさん)された歴史書である二十四史のひとつです。王覇は、後漢の初代皇帝となる光武帝の家臣でした。

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