この記事では「拱手傍観」について解説する。

端的に言えば「拱手傍観」の意味は「眺めているだけで何もしないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「拱手傍観」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で四字熟語を解説していく。

「拱手傍観」の意味・使い方まとめ

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それでは早速「拱手傍観」の意味・使い方を見ていきましょう。

「拱手傍観」の意味は?

「拱手傍観」には、次のような意味があります。

手を出さないで、ただ、ながめていること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「拱手傍観」

「拱手傍観」は「きょうしゅぼうかん」と読みます。「拱手」は、手をこまねいていること。「拱手(きょうしゅしゅ)」は「こうしゅ」とも読むことができ、両手を腕の前で組み合わせる中国の敬礼の1つでもあります。「傍観」は、物事の成り行きを自分の力で変えようとせず、何もしないで見ていること。状況を把握するために、傍観しているだけなら良いでしょう。しかし、「拱手傍観」は自分から行動することなく、ただ物事を眺めているだけの人を差すため、あまり良い意味として使われる四字熟語ではありません。

「拱手傍観」は、「手を拱く」や「腕を拱く」とも言い換えることができます。「拱(こまね)く」とは、腕を組む、もしくは何もしないで傍観すること。そのため「手」や「腕」を組み合わせることによって、「拱手傍観」と同じ意味として使うことができるのです。

「拱手傍観」の使い方・例文

「拱手傍観」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「拱手傍観」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.拱手傍観していないで一刻も早く原因を追究し、基準を設けるべきだ。

2.彼は拱手傍観して、責任をとらないようにする傾向がある。

3.拱手傍観した結果、判断が遅れて混乱を招いたに違いない。

「拱手傍観」がネガティブな表現として使われやすいのは、やはり自ら行動を起こしていない点にあります。本来であれば、誰かが困っている、もしくは現状を変えなければいけない事態に直面した時、何かしらの感情を抱いてアクションを起こすはずです。ところが、模索するわけでもなく、困っている相手に手を差し伸べるわけでもありません。まるで自分には関係がないかのように、腕組みして物事を眺めている状況が「拱手傍観」なわけです。感心できる行動とはいえませんよね。

相手に共感することもなければ、自分の素直な気持ちに従うこともない。これは精神衛生上からしても、あまり良い状況とはいえないでしょう。傍観者に徹していれば、もしかしたら他の誰かが状況を変えてくれるかもしれません。しかし、自ら行動しなければ、最終的に困るのは自分自身です。「拱手傍観」するだけでなく、自らアクションを起こすことが大切だといえるのではないでしょうか。

「拱手傍観」の類義語は?違いは?

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では、「拱手傍観」の類義語や違いをみていきましょう。

「袖手傍観」

「袖手傍観」は「しょうしゅぼうかん」と読みます。「袖手」とは、手を袖に入れていること。転じて、自分から手を下さないという意味として使われるようになりました。「袖手傍観」の意味は、自ら手を下すことなく、成り行きに任せて眺めていること。「袖手傍観」と「拱手傍観」は全く同じ意味の四字熟語になりますので、使いやすいほうを選ぶとよいでしょう。

「冷眼傍観」

「冷眼傍観(れいがんぼうかん)」は、近年ではあまり使われることがない四字熟語ですが、「拱手傍観」の類義語となりますのでご紹介したいと思います。意味は、冷静な態度で物事の推移を見守ること。「冷眼」は文字通り、冷ややかな目つきのことを差しています。「冷眼傍観」は「冷静に見守っている」という意味であることから、「拱手傍観」に比べたら良い意味の四字熟語として使われやすいかもしれません。ただし、手を出していないという点では全く同じ。周りから「彼は冷眼傍観ばかりだ」と言われたら、物事に対する姿勢を改めたほうがよいといえますね。

\次のページで「「無為無策」」を解説!/

「無為無策」

「無為無策(むいむさく)」とは、計画や対策がなく、ただ手をこまぬいているという意味になります。「無為」とは、自然のままに任せて何もしないこと。「無策」とは、前もって何も対策をしていないこと、もしくは見通しや計画がないことを差します。「無為無策」はある物事に対して対策を練るわけでもなく、ただ傍観しているわけですから、「拱手傍観」と同じ意味だといえますね。

「無為無策」が続くようでは、それこそ状況は変わりません。すぐにでも対策を講じて欲しい場合など、現状を非難したい時に「無為無策」を使うとよいでしょう。

「拱手傍観」の対義語は?

「拱手傍観」は「手を出さないで眺めている」という意味なので、反対の意味は「自ら行動を起こす」ということになるはずです。そこで今回は、「現状を変える」もしくは「実際に行動する」という意味合いで対義語をみていきましょう。

「局面打開」

「局面打開」は、端的に言うと現状を打破すること。意味は、行き詰まった状態から何かしらの方法で状況を切り開き、新しい方向を見いだすことです。「局面」は、囲碁や将棋などでよく使われており、勝負の局面のこと。もしくは、物事の情勢や成り行きを差しています。「打開」は、行き詰まった状況を切り開いて、解決方法を見いだすことという意味。

「局面打開」するということは、状態を変えるために行動を起こしているといえます。手を出さずに傍観している「拱手傍観」とは、対極にある四字熟語といえるのではないでしょうか。

「剛毅果断」

「剛毅果断(ごうきかだん)」な人物は、組織には欠かせない人材といえます。「剛毅果断」の意味は、意志が強く決断力があって、物事を思いきって行うこと。「剛毅」とは、意志が固くて強くくじけないという意味。「果断」は、思い切りよく事を行うこと、もしくは決断力があることを差します。

状況を変化させるためには、思い切りと意志の強さが欠かせません。さらに、決断力も必要だといえるでしょう。問題に直面した時、「拱手傍観」しているよりは「剛毅果断」でありたいものです。

「実践躬行」

何事にも「実践躬行(じっせんきゅうこう)」であるべきだと言えるのではないでしょうか。「実践躬行」の意味は、実際に自分自身で行うこと。「実践」は、日常会話でもよく使われますが、理論や計画を自分で行うことという意味ですよね。「躬行」とは、自ら行動するという意味になります。

やはり、想像だけで発言する人と、実際に経験してから発言する人では説得力が全く違うもの。机上の空論ばかりでは人はついてきません。「実践躬行」は、自ら動くことで周囲に変化をもたらします。「拱手傍観」している人よりは、「実践躬行」している人を見習うべきだといえるでしょう。

「拱手傍観」の英訳は?

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では、「拱手傍観」を英語訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

\次のページで「「stand idly by and watch」」を解説!/

「stand idly by and watch」

「拱手傍観」の意味である「手をださずにただ見ていること」を英訳したほうが分かりやすいのではないでしょうか。「stand」は「立つ」という意味で、「idly」は「何もしない」という意味。「by(~によって)」を加えることで、「stand idly by」は「手をこまねく」や「何もしないでいる」という意味になります。さらに、「and watch」で「見ている」となりますので、「stand idly by and watch」で「何もしないで見ている」となり「拱手傍観」として使うことができるでしょう。

「to fold one's arms」

「拱手傍観」は「手をこまねく」と同じ意味になりますので、腕を組んで傍観している様子を英訳しても問題ありません。「fold」は「組む」という意味。「arms」は「腕」という意味ですから、「to fold one's arms」を直訳すると「腕を組む」という意味になります。「to cross one's arms」にしてもよいでしょう。

「腕を組む」状態というのは、考え込んでいる、もしくは傍観している状況が多いはず。そのため、「to fold one's arms」は「傍観している」ということになり、「拱手傍観」として使うことができます。同じ感覚で「sit on one's hands」と英訳してもよいでしょう。

「拱手傍観」を使いこなそう

この記事では「拱手傍観」の意味・使い方・類語などを説明しました。「拱手傍観」は、普段の日常会話ではあまり使われることがありませんが、ニュースや新聞などでは今もよく使われています。「ただ傍観している」と表現するよりは、いかに当事者が見て見ぬ振りをしているのか、状況が伝わりやすい四字熟語といえるのではないでしょうか。

意味からも分かる通り、「拱手傍観」では何も物事は解決しません。そのため、皮肉を込めて使われる場合が多いです。「あの時、拱手傍観していたから問題になった」といった具合に、当時の行動や選択を反省して欲しいという思いを込めて使われているといってよいでしょう。記事で「拱手傍観」を見かけたら、ぜひニュースに注目してみてください。放置されている深刻な問題が隠れているはずですよ。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「拱手傍観」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「拱手傍観」について解説する。

端的に言えば「拱手傍観」の意味は「眺めているだけで何もしないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「拱手傍観」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で四字熟語を解説していく。

「拱手傍観」の意味・使い方まとめ

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それでは早速「拱手傍観」の意味・使い方を見ていきましょう。

「拱手傍観」の意味は?

「拱手傍観」には、次のような意味があります。

手を出さないで、ただ、ながめていること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「拱手傍観」

「拱手傍観」は「きょうしゅぼうかん」と読みます。「拱手」は、手をこまねいていること。「拱手(きょうしゅしゅ)」は「こうしゅ」とも読むことができ、両手を腕の前で組み合わせる中国の敬礼の1つでもあります。「傍観」は、物事の成り行きを自分の力で変えようとせず、何もしないで見ていること。状況を把握するために、傍観しているだけなら良いでしょう。しかし、「拱手傍観」は自分から行動することなく、ただ物事を眺めているだけの人を差すため、あまり良い意味として使われる四字熟語ではありません。

「拱手傍観」は、「手を拱く」や「腕を拱く」とも言い換えることができます。「拱(こまね)く」とは、腕を組む、もしくは何もしないで傍観すること。そのため「手」や「腕」を組み合わせることによって、「拱手傍観」と同じ意味として使うことができるのです。

「拱手傍観」の使い方・例文

「拱手傍観」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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