「人工元素」はどんな元素?科学館職員がわかりやすく解説
2004年に日本の研究チームによって113番目の元素が合成され、2016年に正式に周期表に加えられた。この元素はNh、ニホニウムという。このように人工的に作られた元素のことを人工元素と言う。
今回は人工元素について科学館職員のたかはしふみかが紹介していきます。
ライター/たかはし ふみか
不思議な現象を解き明かす科学が好きで理系に進んだリケジョ。高校、大学で化学漬けの日々を送っていた科学館職員。
元素とは?
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そもそも元素とはなんでしょうか?
元素とは物質を構成する基本的な要素のことです。そして元素はアルファベット1文字か2文字の元素記号によって表されています。これはラテン語が由来のものが多く、例えば水素はHydrogenium(水を作る)のH、酸素はOxygebium(酸を作る)のOが元素記号となっているのです。
化学を学ぶときに元素記号は必須。少なくとも原子番号1番から20番までの元素は覚えるようにしましょう。
元素周期表についてはこちらの記事を参考にして下さいね。
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人工元素とは
人工元素(人工放射性元素)は自然界にはほとんどなく、人の手で作り出された元素のことです。これらの元素にはごく微量ですが天然にあるものや、すぐに崩壊してしまい見つけることができなかった元素もあります。人工元素は原子炉や加速器を使って原子核に陽子や中性子を当てて作られているのです。
人工元素にはテクネチウム(Tc、原子番号43)、プロメチウム(Pm、原子番号61)、アスタチン(At、原子本号85)、フランシウム(Fr、原子本号87)、そして超ウラン元素、人工放射性同位体があります。
超ウラン元素は原子番号92番のウランよりも原子量が大きい元素のことです。天然に存在する元素で最も大きいのがウランで、それよりも大きな原子番号の元素という意味で超ウラン元素と呼ばれるようになりました。超ウラン元素にはアメリシウム(Am、原子番号95)、キュリウム(Cm、原子番号96)などがあります。
同位体とは中性子の数が異なり、同じ原子番号の元素なのに質量数が異なる原子のことです。人工放射性同位体として最初に合成されたのが放射性リン(30P)で、キュリー夫妻の娘夫婦(フレデリック・ジョリオ=キュリー、イレーヌ・ジョリオ=キュリー)が1934年に合成に成功しました。
人工元素の種類
それでは重要な人工元素を紹介していきます。
基本の人工元素 テクネチウム
世界初の人工元素は原子番号43番テクネチウム(Tc)です。1936年に合成され当初は天然に存在しないと考えられていたテクネチウムですが、1968年にウラン鉱石に微量に含まれていることが確認されました。20種類以上の同位体があり、すべて放射性があります。
実はこの元素、日本の科学者小川正孝博士が発見したとして1908年に報告されました。この元素はニッポニウム(Np)と名付けられましたが、その実験結果を確認できなかったため新元素として認められるのが見送られてしまったのです。
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