その4.晩年
1783年に76歳でその生涯を終えるまで、サンクトペテルブルクで精力的に研究を続けました。1771年には残っていた左目の視力も完全に失い全盲になってしまったのですが、驚くべきことに数学の研究にはほとんど支障がなかったようです。現在、オイラーはサンクトペテルブルグに近いアレクサンドル・ネフスキー大修道院の墓地で静かに眠っています。
剛体に力学について
オイラーは人類史上最大級の数学の業績をもち、物理学の分野でもいくつか業績があるのですが、今回はその代表である剛体の力学について紹介しましょう。
剛体の力学.その1
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固い物体は力を加えても変形しないし、運動するときも形を変えない、完全に固い物体を考えて、これを剛体と名付けます。剛体は無数の質点からなると考えられますが、剛体内の各質点の相互の位置関係が変わらないように互いに内力をおよぼしあっていると考えるのです。質点相互の位置関係が変わらないということが剛体のもつ著しい特徴であり、剛体は質点系の特別な場合として扱うことができます。
剛体の力学.その2
ちなみに質点とは、たとえばボールの落下運動を調べるときはボールの中心の位置を考えるでしょう。この場合のように物体の大きさを問題にしないで、質量をもった点として扱うときこれを質点と呼びます。地球や、木星のような巨大なものでも、太陽の周りの公転だけを扱うときにはこれらを質点とみなすことができるのです。また、たとえ小さな物体でも、斜面を転がる円板などは、質点とみなさずに回転まで考えなければなりません。この質点が集まったものが剛体です。
剛体の力学.その3
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剛体の位置、回転をきめるにはいくつの変数が必要でしょうか。剛体内の一点は空間に固定した座標軸により、三個の座標できまるはずです。この点を通って剛体に固定した一つの直線を考えると、その方向は極座標で二個の変数が必要になります。最後にこの剛体はこの直線のまわりに回転できるので、それを表す角を選ぶ必要があるでしょう。こうして剛体の位置と回転は六個の変数により定められ、このことを剛体の自由度は六であるといいます。
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