この記事では「磨穿鉄硯」について解説する。

端的に言えば磨穿鉄硯の意味は「物事が達成するまで強い意志を持ち続けることや学問に励むこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「磨穿鉄硯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「磨穿鉄硯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「磨穿鉄硯」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「ませんてっけん」です。具体的なエピソードが四字熟語になったものでもあるので、意味や語源まで詳しく見ていきますよ。

「磨穿鉄硯」の意味は?

「磨穿鉄硯」には、次のような意味があります。現在では転じた意味で使われることも多いのですが、もとの意味を知っておくとニュアンスがつかみやすくなりますよ。

1.強い意志を持ち続け、物事を達成するまで変えないこと。また、学問にたゆまず励むたとえ。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「磨穿鉄硯」

「磨」は磨滅させたり擦り減らすこと、「穿」はうがつことや穴をあけること、「鉄硯」は鉄でできている硯のことです。これらから、鉄でできた硯をすり減らし、穴があくほど勉強するという意味になっています。

鉄でできた硯は、簡単にすり減ったり穴があいたりすることはないので、そうなるには膨大な勉強による作業があったことがわかりますよ。

「磨穿鉄硯」の語源は?

次に「磨穿鉄硯」の語源を確認しておきましょう。

「磨穿鉄硯」は中国の王朝の正史である「二十四史」の一つ、『新五代史』の桑維翰伝(そういかんでん)の話が故事として伝わっていますよ。

中国五代後晋(ごしん)の桑維翰は、若い頃に鉄でできた硯を穴があくまで墨をすり学問を行った結果、科挙(かきょ)に合格したと言われています。科挙とは、中国の随から清の時代まで続いていた官僚採用試験のことです。非常に難関の試験で、最盛期には競争率が3000倍を超えたこともあると伝わっています。

\次のページで「「磨穿鉄硯」の使い方・例文」を解説!/

「磨穿鉄硯」の使い方・例文

「磨穿鉄硯」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.健太は佐藤家自慢の息子で、毎日の磨穿鉄硯さながらの勉強ぶりからノーベル賞をとるのではとみんなに噂されている。
2.刺身や焼き魚の定食、海鮮丼などは、海産物が豊富な地域ならではのメニューである。しかし、この食堂においては、磨穿鉄硯に及ぶ研究の成果から季節に合わせた健康によい食材や調理法を開発している。

例文1.は勉強するのは当然とはいえ毎日の勉強ぶりが際立っているようすを表現しており、例文2.のほうでは一見目新しいように思えないものでも、人知れず研究した成果を盛り込みつつ満足してもらえるメニューを開発していることを表しています。

使い方としては、「磨穿鉄硯さながら…」「磨穿鉄硯に及ぶ…」など名詞のカタマリとして使うのが一般的です。

「磨穿鉄硯」の類義語は?違いは?

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それでは、「磨穿鉄硯」の類義語についての説明です。「磨穿鉄硯」の類義語はたくさんあり、これまで多くの人が勉学に励んできた歴史が感じられますね。詳しく見ていきましょう。

「蛍窓雪案」

「磨穿鉄硯」の類義語には、「蛍窓雪案(けいそうせつあん)」があります。意味は、苦労しながら勉学に励むことです。「蛍窓」は蛍の光で窓が明るいこと、「雪案」は雪の明かりで机が明るいことを表しています。

お金がなくて、灯油の代わりに蛍の光や雪明かりを利用して勉学に励んでいるようすがもとになっていますよ。勉強することに大きな価値をおいているようすが伝わる表現です。

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「面壁九年」

もう一つの対義語には、「面壁九年(めんぺきくねん)」があります。長い間わき目もふらずに勉強することという意味です。漢字で表現されているもとの意味は、中国の南北朝時代に達磨(だるま)大師が九年間も壁に向かって座禅を組み続けて悟りをひらいたということがもとになっています。

九年間もの間、意思を貫き実行し続けたということですから、「磨穿鉄硯」の類義語ととらえることができますね。

「磨穿鉄硯」の対義語は?

次は、「磨穿鉄硯」の対義語についての説明です。対義語の場合は、どういった意味合いが対になっているのかに注意してみていきましょう。

「意志薄弱」

「磨穿鉄硯」の対義語には、「意志薄弱(いしはくじゃく)」があります。意味は、物事をやり遂げようとする気持ちや決断を下す判断力に欠けることです。「意志」は選択や決断をする能力のこと、「薄弱」はよわよわしいようすのことを表すます。

長きに渡って鉄の硯をすり続けて科挙に合格した桑維翰のことを考えると、「意志薄弱」は一度決めたことをすぐに翻すという意味も含むので、反対の意味ととらえることができますね。

「一暴十寒」

もう一つの対義語には、「一暴十寒(いちばくじっかん)」があります。少しだけの努力や努力が継続しないという意味です。「一暴」は一日天日にさらして暖めること、「十寒」はその後の十日の間、陰に放っておき冷やしてしまうということを表しています。

努力しても怠ることが多ければ無駄になり、努力を継続しなければ効果は上がらないということですね。なお、「一暴十寒」には気が変わりやすというニュアンスも含まれています。

「磨穿鉄硯」の英訳は?

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最後に、「磨穿鉄硯」の英訳についての説明です。「磨穿鉄硯」は具体的なエピソードによる情報が四字熟語になったものですが、ここではエピソードではなく意味が合う表現について見ていきましょう。

「being diligent」

「磨穿鉄硯」の英訳には、「being diligent」があります。直訳すると「勤勉であること」です。ただ、「磨穿鉄硯」は並の勤勉ではありませんので、「in particular(とくに、特別)」など強調する表現を付け加えるといいですね。

「磨穿鉄硯」のエピソードをそのまま英語表現にしようとすると「wearing a hole through one's metal inkstone from constant studying」となります。「wearing」は「擦り減らす」、「inkstone」は「硯」という意味で使っていますよ。

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「磨穿鉄硯」を使いこなそう

今回の記事では「磨穿鉄硯」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「磨穿鉄硯」の意味は、強い意志をもってたゆまず勉学に励むことです。ただ、その度合としては非常に強いものなので、あまり日常的に頻繁に使う表現ではありませんね。ここぞという特別な場面で使うことに為りそうです。

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【四字熟語】「磨穿鉄硯」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「磨穿鉄硯」について解説する。

端的に言えば磨穿鉄硯の意味は「物事が達成するまで強い意志を持ち続けることや学問に励むこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「磨穿鉄硯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「磨穿鉄硯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「磨穿鉄硯」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「ませんてっけん」です。具体的なエピソードが四字熟語になったものでもあるので、意味や語源まで詳しく見ていきますよ。

「磨穿鉄硯」の意味は?

「磨穿鉄硯」には、次のような意味があります。現在では転じた意味で使われることも多いのですが、もとの意味を知っておくとニュアンスがつかみやすくなりますよ。

1.強い意志を持ち続け、物事を達成するまで変えないこと。また、学問にたゆまず励むたとえ。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「磨穿鉄硯」

「磨」は磨滅させたり擦り減らすこと、「穿」はうがつことや穴をあけること、「鉄硯」は鉄でできている硯のことです。これらから、鉄でできた硯をすり減らし、穴があくほど勉強するという意味になっています。

鉄でできた硯は、簡単にすり減ったり穴があいたりすることはないので、そうなるには膨大な勉強による作業があったことがわかりますよ。

「磨穿鉄硯」の語源は?

次に「磨穿鉄硯」の語源を確認しておきましょう。

「磨穿鉄硯」は中国の王朝の正史である「二十四史」の一つ、『新五代史』の桑維翰伝(そういかんでん)の話が故事として伝わっていますよ。

中国五代後晋(ごしん)の桑維翰は、若い頃に鉄でできた硯を穴があくまで墨をすり学問を行った結果、科挙(かきょ)に合格したと言われています。科挙とは、中国の随から清の時代まで続いていた官僚採用試験のことです。非常に難関の試験で、最盛期には競争率が3000倍を超えたこともあると伝わっています。

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