突然ですが、エネルギーにどういうイメージを持っているでしょうか?

エネルギーの単位は熱量だからエネルギー=熱とみなせる。次に、熱いか冷たいか熱を測る指標と言ったら?そう、温度です。熱と温度は非常に似た概念であり、熱を温度によって表すこともできる。それに使われるのがボルツマン定数。熱と温度を関係付ける定数です。ネーミング的に難しそうですが、実はかんたん。運動エネルギーと温度の関係式を確認してから、最後にはボルツマンの原理にも言及しよう。

理系ライターのR175が解説。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.エネルギー、熱、温度

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この記事では、温度とエネルギーの関係を表しやすい「気体」に絞って解説していきます(液体と固体は分子が自由に動けないため、事情が異なる)。まずは、エネルギーと熱と温度の関係性に言及しておきましょう。エネルギーと熱は同じ単位(ジュール、J)で、エネルギーのことを「熱量」と呼ぶ場合もありますね。物理学では「熱=エネルギー」と考えて問題ないです。運動エネルギーや位置エネルギーなどの「力学的エネルギー」から「熱」は連想しにくいのでエネルギーの方がピンとくるかもしれませんが、基本どちらも同じ意味。

エネルギ≒熱≒温度

ところで、熱≒温度はほぼ同じニュアンスですよね。ということは、エネルギー≒温度でもあり、エネルギーが熱エネルギーではなく位置エネルギーや運動エネルギーなど「力学的エネルギー」であろうともエネルギー≒温度という解釈が出来ます。

2.気体分子が持つのは(ほぼ)運動エネルギーだけ

2.気体分子が持つのは(ほぼ)運動エネルギーだけ

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気体分子が持つのは何エネルギー?先に結論を言うと「運動エネルギー」となります。「あれ、熱エネルギーや位置エネルギーは?」
気体分子は無数に存在する小さな粒で、じっと止まっていることはあり得ず、お互いぶつかりあったり壁にぶつかって跳ね返ったりしながら常に不規則に動き続けているもの。一つ一つ自由に動き続けているのでこれらは「運動エネルギー」を持っていることになりますね。では「熱エネルギーや位置エネルギー」はどこにいったのか?。まず熱エネルギーに関して、ここが肝になりますが実は「熱エネルギー=気体分子の運動エネルギー」です。どれだけ熱を持っているかという指標は=どれだけ分子の運動が激しいかという指標と同じ。それなら、熱エネルギーではなく運動エネルギーに統一したいところですが分子や原子のような微小なスケール(1nm以下のスケール)の運動をmmやwp_といった人間が目視可能なスケールの運動を一緒に考えるのはややこしいしあまり意味がありません。分子のスケールで見ると確かに「運動エネルギー」なのですが、大きなスケールで見る時は一般的に「熱エネルギー」と定義しているのです。

次に位置エネルギーですが、厳密に言うとゼロではありません。ただし、1nm以下のスケールである分子同士の位置の違いはすごく小さいです。よって、位置エネルギーは運動エネルギーに比べると桁違いで小さく誤差の範囲であり無視できます。よって、気体分子の持つエネルギーは運動エネルギーと考えてOK。

温度とエネルギーの比例定数

上述の通り、言葉の解釈から(何エネルギーかに関わらず)エネルギー≒温度とであり、ボルツマン定数がエネルギーと温度を関係付ける役割を持つもの。ボルツマン定数という用語のネーミングから、かなり学術的で難解なイメージを持たれますが実際は単純で、エネルギーは温度の○倍と表すことが出来、○の部分にボルツマン定数がきます。

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3.気体分子に働く力

3.気体分子に働く力

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ここからは、1つの分子に注目しましょう。もし全体で見たい場合は×気体分子数すればok。さて、運動エネルギーと温度の関係式を作っていきましょう。気体に関する法則や定理で「温度」が登場するものと言えば、そう「状態方程式」。圧力×体積=モル数(n)×気体定数(R)×絶対温度(T)という式。右辺に温度が登場していて、左辺は圧力(力÷面積)×体積なので何となく力学的エネルギーに結びつきそう。

さて、左辺の圧力(力÷面積)×体積の部分を持ってくる必要があるために分子に働く力Fを考えます。分子は運動エネルギーを持っているため速度を使って力Fを表したいところ。それが出来るのが「力積=運動量変化」という式。力積部分に力Fが登場し、運動量変化の部分に速度vが登場するため力を速度で表せそうです。

気体分子の運動量の変化

力積部分は(力F)×(力を掛けた時間t)で、どちらも不明なのでFtと置いて運動量の変化を考えることにしましょう。

1辺の長さがLの空間にx,y,z方向の速度がそれぞれvx, vy, vzで質量がmの気体分子があるとします。気体分子は壁に衝突した後真反対に同じ速度で運動するとしましょう。

右端の壁を対象に運動量変化を出していきます。ぶつかる前の速度はvxでぶつかったあとは-vx。気体分子の質量mより運動量の変化は2vx1回の衝突でこれだけ右端の壁と相互作用があったと言えます。また、右端の壁にぶつかる頻度ですが、気体分子は右端の壁にぶつかった後速度-vxで左端の壁に向かいぶつかった後速度vxで再び右端の壁に向かってきてぶつかるもの。次にぶつかるまでの移動距離は2L平均速度はvxであるため次にぶつかるまでの時間は2L/vxです。逆にいうと1秒間に右端の壁にぶつかる頻度はvx/2L(回)で、t秒間(力積のFtにつなげるために登場しています)にvx/2L・t回ぶつかることになりますね。1回の衝突での運動量差は2mvxですから、t秒間の運動量変化の合計は2mvx・vx/2L・t=m(vx^2)/L・t。これが力積Ftに等しいのでFt=m(vx)^2/L・tから、F=m(vx)^2/L

状態方程式に代入

状態方程式に代入

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F=m(vx)^2/Lから、状態方程式(力÷面積)×体積=nRTに代入。体積はL^3なので、m(vx^2)=nRT。ここですべての分子は全方向に不規則に運動していることからx, y , z全て合成した平均速度v(イラスト参照)とすると、vx^2=v^2/3。また分子1粒当たりのモル数n=1/N。Nはアボガドロ定数(1モルあたりの分子数でどの物質でも同じ定義)。これらを踏まえると、mv^2/3=(R/N)T→運動エネルギー1/2・m・v^2=3/2・(R/N)・T。ここで出てくる、(R/N)=kbがボルツマン定数で、この式から解釈するに気体分子1粒あたりの気体定数ということになります。

4.ボルツマンの原理を簡単に

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ボルツマンの原理によると、エントロピーS=kb・log(W)
エントロピーSはひとまず「相互作用の活発さ」とイメージをお願いします。Wは状態数と呼ばれるパラメータで、ざっくり言うと「分子の配置パターンの数」をイメージください。例えばW=1なら、1通りの配置しか存在しない、数が増えれば増えるほど色んな並び方があり得る。仮にW=1で1通りしか配置が存在しない場合は、エントロピーS=0となります。

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ボルツマン定数の解釈

状態数とエントロピーを言い換えてみましょう。説明の便宜上(短く終わる方を先に述べたいので)、状態数からいきます。

状態数は、前述の通り「パターン数」をイメージしましょう。厳密にはそうも言い切れないですが、パターン数の指標と見ておけば間違いなし。よってWは数で、単位をつけるなら「〜通り」ですが、これは無次元とみなせます。したがってlogWも無次元右辺は単位なしとなります。

次にエントロピーですが、定義としてはdS=dQ/T、日本語で書くとエントロピーの変化=熱の変化÷絶対温度。説明を簡略化するため絶対温度Tは一定とさせてください。すると、エントロピー=熱のやり取り÷絶対温度で左辺は熱÷温度の形に。右辺は定数としたら熱÷温度=定数から熱=定数×温度という解釈が出来ますね。

温度とエネルギーの関係

温度や熱の元になっているのは気体分子の運動エネルギー。実際に、気体分子の速度と状態方程式を持ってくると、運動エネルギーと絶対温度が比例することを確認でき、その比例定数がボルツマン定数です。ボルツマンの原理によると、エントロピー(≒エネルギー÷温度)=ボルツマン定数×状態数の対数という形になっていますがここでの右辺は数を表しているだけなので結局はエネルギーと温度が比例するというところに帰着します。

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物理物理学・力学理科

エネルギーと温度は比例「ボルツマン定数」を理系ライターがわかりやすく解説

突然ですが、エネルギーにどういうイメージを持っているでしょうか?

エネルギーの単位は熱量だからエネルギー=熱とみなせる。次に、熱いか冷たいか熱を測る指標と言ったら?そう、温度です。熱と温度は非常に似た概念であり、熱を温度によって表すこともできる。それに使われるのがボルツマン定数。熱と温度を関係付ける定数です。ネーミング的に難しそうですが、実はかんたん。運動エネルギーと温度の関係式を確認してから、最後にはボルツマンの原理にも言及しよう。

理系ライターのR175が解説。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.エネルギー、熱、温度

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この記事では、温度とエネルギーの関係を表しやすい「気体」に絞って解説していきます(液体と固体は分子が自由に動けないため、事情が異なる)。まずは、エネルギーと熱と温度の関係性に言及しておきましょう。エネルギーと熱は同じ単位(ジュール、J)で、エネルギーのことを「熱量」と呼ぶ場合もありますね。物理学では「熱=エネルギー」と考えて問題ないです。運動エネルギーや位置エネルギーなどの「力学的エネルギー」から「熱」は連想しにくいのでエネルギーの方がピンとくるかもしれませんが、基本どちらも同じ意味。

エネルギ≒熱≒温度

ところで、熱≒温度はほぼ同じニュアンスですよね。ということは、エネルギー≒温度でもあり、エネルギーが熱エネルギーではなく位置エネルギーや運動エネルギーなど「力学的エネルギー」であろうともエネルギー≒温度という解釈が出来ます。

2.気体分子が持つのは(ほぼ)運動エネルギーだけ

2.気体分子が持つのは(ほぼ)運動エネルギーだけ

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気体分子が持つのは何エネルギー?先に結論を言うと「運動エネルギー」となります。「あれ、熱エネルギーや位置エネルギーは?」
気体分子は無数に存在する小さな粒で、じっと止まっていることはあり得ず、お互いぶつかりあったり壁にぶつかって跳ね返ったりしながら常に不規則に動き続けているもの。一つ一つ自由に動き続けているのでこれらは「運動エネルギー」を持っていることになりますね。では「熱エネルギーや位置エネルギー」はどこにいったのか?。まず熱エネルギーに関して、ここが肝になりますが実は「熱エネルギー=気体分子の運動エネルギー」です。どれだけ熱を持っているかという指標は=どれだけ分子の運動が激しいかという指標と同じ。それなら、熱エネルギーではなく運動エネルギーに統一したいところですが分子や原子のような微小なスケール(1nm以下のスケール)の運動をmmやwp_といった人間が目視可能なスケールの運動を一緒に考えるのはややこしいしあまり意味がありません。分子のスケールで見ると確かに「運動エネルギー」なのですが、大きなスケールで見る時は一般的に「熱エネルギー」と定義しているのです。

次に位置エネルギーですが、厳密に言うとゼロではありません。ただし、1nm以下のスケールである分子同士の位置の違いはすごく小さいです。よって、位置エネルギーは運動エネルギーに比べると桁違いで小さく誤差の範囲であり無視できます。よって、気体分子の持つエネルギーは運動エネルギーと考えてOK。

温度とエネルギーの比例定数

上述の通り、言葉の解釈から(何エネルギーかに関わらず)エネルギー≒温度とであり、ボルツマン定数がエネルギーと温度を関係付ける役割を持つもの。ボルツマン定数という用語のネーミングから、かなり学術的で難解なイメージを持たれますが実際は単純で、エネルギーは温度の○倍と表すことが出来、○の部分にボルツマン定数がきます。

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