今回は「青色発光ダイオード」について解説していきます。

青色発光ダイオードは、発光ダイオード(LED)という電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子の一種です。かつて、青色発光ダイオードは、理論上は作ることができるが、技術が未発達で実用化は困難だとされていた。ですが、日本人研究者の努力により、青色発光ダイオードの実用化が成し遂げられた。ぜひ、この機会に青色発光ダイオードについて理解を深めてみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

発光ダイオードについて

発光ダイオードとは?

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青色発光ダイオードについて学ぶ前に、そもそも発光ダイオードとはどのようなものであるかを解説していきます。発光ダイオードは、電気エネルギーを光エネルギーに変換する装置の1つです。この点は、電球ネオン管蛍光灯などと同じですね。ですが、発光ダイオードは、これらにはない特長があります。

1つは、省エネルギー性能が優れていることです。発光ダイオードは、その他の発光装置に比べて、少ない消費電力で多くの光を発することができます。発光ダイオードを用いたLED電球は、従来の電球よりも高効率であると宣伝されていますよね。また、小型軽量化が容易であることも、発光ダイオードの良い部分です。

発光ダイオードの仕組み

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ここでは、発光ダイオードの仕組みについて解説します。発光ダイオードは、ダイオードと呼ばれる素子の1つです。ダイオードは、2種類の物質を接合させた素子であり、電流を一定方向にしか流さない性質を持ちます。そのため、交流を直流に変換する際などの整流素子に用いられていますよ。

ダイオードの中を電子が通過するとき、2種類の物質同士の界面では、一定量のエネルギーを放出します。そして、このエネルギーの大きさは禁制帯幅(バンドギャップ)にほぼ一致しますよ禁制帯幅(バンドギャップ)は、ダイオードを通過する電子が、とることができないエネルギー順位間の領域のことです。禁制帯幅(バンドギャップ)は2種類の物質の組み合わせによって、固有の値となります

したがって、接合する物質の種類を変えることで、放出するエネルギーの量を変えることができるのです。そして、電子が通過するときに赤外線、可視光線、紫外線のような光エネルギーになり得るエネルギー量を放出するような2種類の物質を用いてダイオードを作れば、光を発するダイオードが完成します

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青色発光ダイオードの発明

青色発光ダイオードの発明

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様々な発光ダイオードの色の中で、最初に実用化されたのは、赤色黄緑色でした。これらはガリウムヒ素系の物質を主な材料にしており、結晶化や加工が比較的容易であったことから、早い段階で実用化されたのです。

理論上、青色や緑色の発光ダイオードは窒化ガリウム系の材料を用いることで作ることが可能であるとされていました。ですが、結晶化や加工の技術が確立していなかったのです。これらの技術と量産化の手法を発明したのが、名城大学の赤崎勇教授名古屋大学の天野浩教授米カリフォルニア大学の中村修二教授日本人3名ですよ。この3人はノーベル賞を受賞しています

青色発光ダイオードは世界を変えた?

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青色発光ダイオードの量産が実現した後、さらなる研究開発が行われました。そして、青色に加えて、緑色の発光ダイオードも実用化されたのです。これで、光の三原色である赤、青、緑の発光ダイオードが揃いました。これらの色の発光ダイオードを組み合わせることで、様々な色の光を再現できるようになったのです。以下では、様々な色の表現が可能となった発光ダイオードがどのようなところで活躍しているのかを見ていきましょう。

液晶ディスプレイや大型ビジョン

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光の三原色である赤、青、緑の発光ダイオードが製造可能になったことで、白色の発光ダイオードも簡単に作ることができるようになりました。白色発光ダイオードが使われている製品の1つが、液晶ディスプレイです。液晶ディスプレイには、バックライトと呼ばれる光源装置が必要になるのですが、それに白色発光ダイオードが使われています。液晶ディスプレイは、コンピュータの画面スマートフォンの画面鉄道やバスの車内に設置されたデジタル案内板などに使用されており、私たちの生活に不可欠なものになっていますよね。

また、赤、青、緑の発光ダイオードを組み合わせたフルカラー発光ダイオードは、1つの素子で何千何万通りの色が再現できます。この発光ダイオードは、街中にある大型ビジョン鉄道やバスの行き先表示板店の看板などに使用されているのです。フルカラー発光ダイオードの誕生により、従来ではできなかった色を豊富に使った案内が可能になったのですね。

ブルーレイディスク

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青色発光ダイオードの技術が確立したことにより、青色半導体レーザーの実用化も成されました。青色半導体レーザーの実用化によって誕生したものが、ブルーレイディスクですよ。ブルーレイディスクは、データの読み書きが可能なディスク型の記録メディアです。映画やドラマが収録されたブルーレイディスクが発売されていますし、家庭用ブルーレイディスクレコーダーを使えば、自宅で番組の録画をすることも可能ですよね。

ブルーレイディスクが誕生する前に主流であったディスク型の記録メディアは、DVDでした。DVDとブルーレイディスクの大きな違いは、書き込み可能なデータ容量ですブルーレイディスクに書き込み可能なデータ量は、DVDの10倍から20倍程度ですよ。このような違いが生まれるのはなぜでしょうか?その理由は使っているレーザーの違いにあります。DVDの書き込みに使用しているレーザーは波長の長い赤色ですが、ブルーレイディスクの場合は短波長の青色レーザーなのです

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照明やイルミネーション

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先ほど紹介したフルカラー発光ダイオードの誕生により、発光ダイオードは照明イルミネーションにも活用されるようになりました。従来の赤色発光ダイオードでは再現できなかった電球色昼光色の再現が可能になったのです。

これによって、発光ダイオードを使用したLED電球も実用化されました。発光ダイオードを利用した照明器具は、従来の電球や蛍光灯に比べて省エネルギー、長寿命、軽量といったメリットがあります。このような理由から、LED照明は広く普及しました。また、発光ダイオードを使用することにより、カラフルなイルミネーションもより簡単にできるようになりましたよ

青色発光ダイオードによる技術革命

理論上は作ることが可能だが、技術的な課題が多かった青色発光ダイオードですが、日本人の研究者によって実用化されました。これにより、発光ダイオードだけで様々な色の表現が可能になったのですよね。

そして、PCやスマートフォンの画面に使用されている液晶ディスプレイ、ブルーレイディスク、LED電球、カラフルイルミネーションなどは青色発光ダイオードの技術によって誕生したのです。青色発光ダイオードは、今や、私たちの身の回りにあふれています。

ぜひ、この機会に青色発光ダイオードとはどのようなものであるのかを学んでみてください。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

「青色発光ダイオード」とは?この発明がすごいのはなぜ?エネルギー工学専攻の学生ライターがわかりやすく解説

今回は「青色発光ダイオード」について解説していきます。

青色発光ダイオードは、発光ダイオード(LED)という電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子の一種です。かつて、青色発光ダイオードは、理論上は作ることができるが、技術が未発達で実用化は困難だとされていた。ですが、日本人研究者の努力により、青色発光ダイオードの実用化が成し遂げられた。ぜひ、この機会に青色発光ダイオードについて理解を深めてみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

発光ダイオードについて

発光ダイオードとは?

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青色発光ダイオードについて学ぶ前に、そもそも発光ダイオードとはどのようなものであるかを解説していきます。発光ダイオードは、電気エネルギーを光エネルギーに変換する装置の1つです。この点は、電球ネオン管蛍光灯などと同じですね。ですが、発光ダイオードは、これらにはない特長があります。

1つは、省エネルギー性能が優れていることです。発光ダイオードは、その他の発光装置に比べて、少ない消費電力で多くの光を発することができます。発光ダイオードを用いたLED電球は、従来の電球よりも高効率であると宣伝されていますよね。また、小型軽量化が容易であることも、発光ダイオードの良い部分です。

発光ダイオードの仕組み

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ここでは、発光ダイオードの仕組みについて解説します。発光ダイオードは、ダイオードと呼ばれる素子の1つです。ダイオードは、2種類の物質を接合させた素子であり、電流を一定方向にしか流さない性質を持ちます。そのため、交流を直流に変換する際などの整流素子に用いられていますよ。

ダイオードの中を電子が通過するとき、2種類の物質同士の界面では、一定量のエネルギーを放出します。そして、このエネルギーの大きさは禁制帯幅(バンドギャップ)にほぼ一致しますよ禁制帯幅(バンドギャップ)は、ダイオードを通過する電子が、とることができないエネルギー順位間の領域のことです。禁制帯幅(バンドギャップ)は2種類の物質の組み合わせによって、固有の値となります

したがって、接合する物質の種類を変えることで、放出するエネルギーの量を変えることができるのです。そして、電子が通過するときに赤外線、可視光線、紫外線のような光エネルギーになり得るエネルギー量を放出するような2種類の物質を用いてダイオードを作れば、光を発するダイオードが完成します

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