この記事では「偕老同穴」について解説する。

端的に言えば偕老同穴の意味は「夫婦が愛情深く結ばれていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「偕老同穴」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「偕老同穴」の意味や語源・使い方まとめ

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偕老同穴は「かいろうどうけつ」と読みます。それでは、さっそく「偕老同穴」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「偕老同穴」の意味は?

偕老同穴には、次のような意味があります。

1、夫婦が愛情深く固く結ばれていること。 

2、カイロウドウケツ科の海綿動物の総称。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「偕老同穴」

偕老」は「一緒に老いる」「等しく共に老いる」という意味があり、「同穴」の穴は墓穴を指す言葉です。直訳すれば、等しく一緒に老いて一緒に同じ墓穴に入る、ということになります。1の意味では、夫婦が生涯共に仲良くすごす様子を、このように例えているのです。

また、海洋生物の一種である海綿動物の中にのみ、生涯ひとつがいで暮らすエビの仲間がおり、1の意味を充てて、この海綿動物の名前としたのが2の意味になります。

「偕老同穴」の由来は?

偕老同穴の由来は、中国最古の詩編といわれる「詩経(しきょう)」にあります。黄河流域に伝わる古い民謡が詩経に収められており、そこに「子(し)の手を執りて偕(とも)に老いん」という一節と、「穀(い)きては則ち室を異にするも、死しては則ち穴を同じくせん」という一節が登場するのです。これらはそれぞれ別々の詩の一説ですが、それぞれから「偕老」と「同穴」を抜き取って繋げたのが、「偕老同穴」になります。「子(し)の手を執りて偕(とも)に老いん」は、直訳すると「妻の手をとって共に老いる(まで一緒にいる)」となり、「穀(い)きては則ち室を異にするも、死しては則ち穴を同じくせん」は「生きている間は別々の部屋で暮らしたとしても、死んでからは同じ(墓)穴に入る」という意味です。したがって、「偕老同穴」の意味も、この両方の詩を繋げたものになっています。

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「偕老同穴」の使い方・例文

偕老同穴は、生涯仲睦まじく寄り添いあう夫婦愛を表現した言葉です。それでは、偕老同穴を使った例文をみていきましょう。

・祖父と祖母は学生時代からずっと一緒に過ごしてきた、偕老同穴な夫婦だ。

・子どもが親の手を離れた今だからこそ、もう一度二人で偕老同穴の契りを交わしたい。

偕老同穴が理想の夫婦像だが、現実はそううまくいくとも限らない。

三つの例文はいずれも、深い愛情で結ばれた夫婦の姿を表しています。あまり一般的な表現ではないので、日常会話の中で使用する機会はあまりないかもしれませんね。

「偕老同穴」の類義語は?違いは?

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偕老同穴は、愛情深い夫婦仲を表現した言葉です。同じように、仲のいい夫婦のことを指した言葉はいくつかあります。

「鴛鴦之契」

鴛鴦之契は「えんおうのちぎり」と読みます。鴛鴦とはオシドリのことで、鴛がオス、鴦がメスです。「おしどり夫婦」という言葉もあるくらい、夫婦仲の良さを表すたとえに用いられるオシドリですが、その由来は中国の故事にあります。深く愛し合いながらも悲劇の生涯を送ったある夫婦の墓の上で、ひとつがいのオシドリが一日中泣き続けた、という話がその語源です。もちろん、鴛鴦之契の意味も、夫婦の深い愛情となります。

\次のページで「「関関雎鳩」」を解説!/

「関関雎鳩」

関関雎鳩は「かんかんしょきゅう」と読みます。偕老同穴と同じく「詩経」の詩から生まれた言葉です。雎鳩はミサゴという水鳥のことで、ミサゴのつがいが仲良く鳴き交わしている様子から、夫婦の仲が良いことを表しています。この関関雎鳩は「詩経」に含まれている「関雎」という詩に登場する一節で、関雎は古代中国の王朝である周の文王の夫婦仲を謳った詩です。周の文王の徳でどの家庭の夫婦も円満になる、ということから、関関雎鳩と同じ意味で「関雎之化(かんしょのか)」という言葉もあります。

「比翼連理」

比翼連理は「ひよくれんり」と読み、「比翼」と「連理」の二つの言葉が合わさってできた言葉となっています。

比翼は中国の想像上の動物で、目と翼が一つずつしかない鳥です。そのため一羽では生きていけませんが、つがいが一体となることで普通の鳥のように暮らすことができます連理二本の木がくっついて木目(木理)が連なった様子を指した言葉です。どちらも、深い愛情で結ばれた夫婦仲を例える表現として使われる言葉で、比翼連理も同じ意味になります。

「偕老同穴」の対義語は?

偕老同穴は仲の良い夫婦仲を表現した言葉で、夫婦の間を表現する際にのみ使う言葉です。厳密な対義語として考えるのなら、「仲の悪い夫婦」を表す言葉となりますが、夫婦に限定して仲の悪さを表現した四字熟語はありません。もう少し表現の幅を広げて、夫婦に限らず、関係する両者の仲が悪い様子を表した言葉はあります。

「不倶戴天」

不倶戴天は「ふぐたいてん」と読みます。「同じ天の下で共にはいられない」という意味の言葉で、要するに非常に仲が悪いことを指す言葉です。「不倶戴天の敵」という使い方もします。

弟夫婦は新婚時代こそ幸せそうにしていたが、今や不倶戴天の敵同士のようだ。

\次のページで「「カイロウドウケツ」って、どんな生き物?」を解説!/

「カイロウドウケツ」って、どんな生き物?

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ここまで解説してきたのは、深い愛情で結ばれた夫婦仲を表現する言葉としての「偕老同穴」です。冒頭で紹介したとおり、偕老同穴にはもう一つ、カイロウドウケツという「海綿動物の一種」としての意味があります。それでは、カイロウドウケツを含む海綿動物とは、どんな生き物なのでしょうか。

海綿動物とは?

海綿動物とは、熱帯を中心に広い範囲の海に生息する原始的な生物の一種です。多くの種があり、単体で壷状の形態をとるものから、群体で広範囲に広がるものまで様々なタイプがあります。日本沿岸にも生息しており、ダイダイイソカイメンなどは浅い磯でも見ることができる海綿動物です。磯遊びをした際に、岩にコケのような、オレンジ色をした固着物がついていることがありますよね。それが、ダイダイイソカイメンです。

合成樹脂でできたスポンジが開発されるまで、この海綿動物を収穫してスポンジとして使っていました。そのため、海から採れる綿、として「海綿」という名前がついています。英名もスポンジです。

「カイロウドウケツ」の由来となった「ドウケツエビ」

海綿動物の一種にカイロウドウケツという種がいますが、なぜその名がつけられたかというと、カイロウドウケツと共生関係にあるドウケツエビというエビが関係しているのです。

カイロウドウケツは体の内部にガラス繊維でできた骨格をもつ海綿動物で、この骨格でできた円筒形の空間が胃腔と呼ばれる胃のような役割を果たしており、小さなプランクトンや有機物を食べています。ドウケツエビはプランクトンの状態でカイロウドウケツの中に入り込んで成長するのですが、ひとつのカイロウドウケツに入るのは二匹で、カイロウドウケツの中に入ってからオスとメスに分かれる、という変わった生態をもっているのです。ドウケツエビはカイロウドウケツのガラス繊維に引っ掛かったものを食べながら、雌雄一対で生涯カイロウドウケツの中で暮らします。文字通り、夫婦が同じ穴で死ぬまで暮らすことから、カイロウドウケツの名がつけられました。

この由来ならエビのほうにカイロウドウケツという名前がつきそうですが、エビが入り込む海綿動物のほうにカイロウドウケツという名前が与えられています。日本でも、相模湾などでカイロウドウケツとドウケツエビを見ることができるようです。

「偕老同穴」を使いこなそう

今回の記事では、偕老同穴の意味や由来、使い方について説明しました。偕老同穴はあまり聞き馴染みのない、やや難しい言葉ですが、それだけに使いこなせれば高尚な印象を与えることのできる言葉です。特に作文で使用する機会があれば、積極的に使うといいでしょう。

また、生き物の名前としてのカイロウドウケツについても解説しました。こちらも特殊な生き物で、水族館で展示されていることもありませんが、教養として知っておくと良いでしょう。

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【四字熟語】「偕老同穴」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「偕老同穴」について解説する。

端的に言えば偕老同穴の意味は「夫婦が愛情深く結ばれていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「偕老同穴」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「偕老同穴」の意味や語源・使い方まとめ

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偕老同穴は「かいろうどうけつ」と読みます。それでは、さっそく「偕老同穴」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「偕老同穴」の意味は?

偕老同穴には、次のような意味があります。

1、夫婦が愛情深く固く結ばれていること。 

2、カイロウドウケツ科の海綿動物の総称。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「偕老同穴」

偕老」は「一緒に老いる」「等しく共に老いる」という意味があり、「同穴」の穴は墓穴を指す言葉です。直訳すれば、等しく一緒に老いて一緒に同じ墓穴に入る、ということになります。1の意味では、夫婦が生涯共に仲良くすごす様子を、このように例えているのです。

また、海洋生物の一種である海綿動物の中にのみ、生涯ひとつがいで暮らすエビの仲間がおり、1の意味を充てて、この海綿動物の名前としたのが2の意味になります。

「偕老同穴」の由来は?

偕老同穴の由来は、中国最古の詩編といわれる「詩経(しきょう)」にあります。黄河流域に伝わる古い民謡が詩経に収められており、そこに「子(し)の手を執りて偕(とも)に老いん」という一節と、「穀(い)きては則ち室を異にするも、死しては則ち穴を同じくせん」という一節が登場するのです。これらはそれぞれ別々の詩の一説ですが、それぞれから「偕老」と「同穴」を抜き取って繋げたのが、「偕老同穴」になります。「子(し)の手を執りて偕(とも)に老いん」は、直訳すると「妻の手をとって共に老いる(まで一緒にいる)」となり、「穀(い)きては則ち室を異にするも、死しては則ち穴を同じくせん」は「生きている間は別々の部屋で暮らしたとしても、死んでからは同じ(墓)穴に入る」という意味です。したがって、「偕老同穴」の意味も、この両方の詩を繋げたものになっています。

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