
大事故の原因となった金属の塊「デーモン・コア」とは?理系ライターがわかりやすく解説
原子核が安定する理由

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3.不安定核
重い原子核
陽子が過剰
中性子が過剰
中性子はお互い反発しないけれど、過剰になると不安定の原因に。
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見た目はただの金属の塊だけれど、人命を奪ってしまうほど危険なものがある。核分裂反応を起こす物質で通称「デーモンコア(悪魔の核)」と呼ばれるプルトニウムの塊です。核分裂ではとてつもないエネルギーが発生し、燃料などに利用されることもある。ただ、取り扱いを間違うと大変危険です。
なぜこれほどまでに恐ろしいのか理系ライターのR175と解説していく。
ライター/R175
関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。
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1945年、物理学者のハリー・ダリアン氏はプルトニウムの塊の周囲に炭化タングステンのブロックを徐々に積み重ねていき、どこで臨界状態に達するかを調査する実験をしていました。
プルトニウムは中性子という微粒子を放射しています。炭化タングステンはプルトニウムから出てくる中性子を反射し再びプルトニウムにぶつけることが出来る物質。そのため炭化タングステンを多く積み上げれば積み上げるほどとプルトニウムに跳ね返っていく中性子が増加。すると、プルトニウムは核分裂(後述)という反応が継続的に起きる「臨界状態」に達します。
どのくらい炭化タングステンを積み上げると臨界状態に達するか調べるために少しずつ積み上げていたところ、誤って炭化タングステンをプルトニウムにぶつけてしまい一気に核分裂反応が発生し大量の放射線が発生。ハリー・ダリアン氏は大量に被曝し、急性放射線障害のため事故の25日後に亡くなりました。
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1回目の事故から9か月後の1946年、物理学者ルイス・スローティンと同僚らは中性子反射体であるベリリウムとプルトニウムの塊を接近させて核分裂反応が発生する距離を調べる実験をしていました。方法は、半球状に加工したベリリウムの中心にプルトニウムの塊を組み込み、上半分と下半分の距離をマイナスドライバーで調整しながら、検出器にて放射線の量を測るというもの。
しかし、彼は誤ってマイナスドライバーを外してしまい、上下半球が接触し核分裂反応が発生。大量の放射線を浴び、その障害により9日後に死亡しました。
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原子核の構成要素のうち、電荷を持たない方の粒子。
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重い原子核を持つウラン235の原子核はクリプトン92とバリウム141に分裂します。235、92、141はそれぞれ質量数を表しますが、235という重さから92と141が生成(合計233)されるということで、あとの2はエネルギーとして放出されるのです。
原子の質量がどうやって決まるかというと、陽子の数と中性子の数以外にも要因があります。これらがどう配置されているかです。
質量数は炭素を12として基準にしています。酸素の同位体存在比はO16(陽子8個、中性子8個)が99.76%、O17(陽子8個、中性子9個)が0.04%、O18(陽子8個、中性子10個)が0.2%程度で、16より重いやつしかないのに、質量数はまさかの15.9994で16を切っています。不思議ですね。
その理由は酸素の原子核が炭素より安定しているから。不安定な原子核ほどエネルギーを内部にため込んでいて、それが質量数に反映され重くなっているといったイメージです。原子核が持つエネルギーが質量エネルギー(質量x光速の2乗)で考えられ、不安定な核はこの「重い分」をエネルギーとして放出して安定した核に変わります。核分裂の前後で、質量保存の法則は成り立たないのです。
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核分裂は目に見えない反応ですが、反応後に質量が変わってしまうほど原子に「大きな変化」が起きていて、それがエネルギーの発生源。直接目に出来る運動エネルギーや位置エネルギーでは想像できないほどのエネルギーが発生するものであり、金属の塊をぶつけただけで人の命を奪ってしまうほどです。
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