この記事では「太鼓判(たいこばん)を押す」という慣用句について解説する。

端的に言えば「太鼓判を押す」の意味は「確実だと保証する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「太鼓判を押す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「太鼓判を押す」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「太鼓判を押す」の意味や使い方を見ていきましょう。

「太鼓判を押す」の意味は?

まずは国語辞典での定義から。「太鼓判を押す」を構成する「太鼓判」には、次のような意味があります。

1.太鼓のように大きい判。
2.絶対に確実だという保証。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「太鼓判」

「太鼓判」とは、本来は太鼓のように大きな判子(はんこ)を意味することばです。これが転じて、間違いのないものとして保証する意味合いで用いられるようになりました。

ただし、「太鼓判を押す」の由来には諸説あるのも事実です。もう一つの有力な説には、かつて甲斐の国を治めた戦国大名、武田信玄が関係してきます。

かつて甲斐の国は良質の金を算出することでも有名で、その金は「甲州金」と称されていました。この甲州金の外周には太鼓の革止めにも似た装飾が施されることもあったそうです。

これは、貴重な金が削られることを防ぎ、真正な「甲州金」であることを保証するものでした。いつしか、このような装飾を施すことを「太鼓判を押す」と呼ぶようになったそうです。

武田信玄が、この良質な「甲州金」の力を背景に一世を風靡したことはよく知られています。

「太鼓判を押す」の使い方・例文

「太鼓判を押す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「太鼓判を押す」の類義語は?違いは?」を解説!/

この出来ばえならば金賞受賞も間違いなしと、私に絵画を教えている先生も太鼓判を押してくれた。

あなたのような権力者に太鼓判を押してもらえれば、これほど勇気づけられることはありません。

祖父の形見である刀剣や貨幣には相当な価値があるはずだと、専門家に太鼓判を押していただいた。

「太鼓判を押す」という慣用句を正しく理解するには、だれが何を保証しているのかをつかむことが大切です。一つ目の例文では、先生が私の絵画が金賞を取ると保証してくれていますよね。

二つめの例文では、権力者が何かを保証してくれているようですが、その何かの中身までは判然としていません。ひとついえるのは、そのことで私が心強くなるという事実のみです。

最後の例文では、専門家が刀剣や貨幣に価値があることを保証してくれています。このように「保証」の内容を詳しく抑えておくことが正しい理解につながることを覚えておいてください。

#2 「太鼓判を押す」の類義語は?違いは?

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ところで、「太鼓判を押す」類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その中でも代表的な表現を二つほど紹介します。

「折り紙付き」

「折り紙付き」の「折り紙」とは、現代でいう保証書のようなものです。これは平安時代より用いられた横半分に折った文書が由来だとされています。

この「折り紙」は、公文書や贈呈品の一覧などが記されていたそうです。このことから、絶対に間違いのないことを保証するという意味合いで用いられるようになりました。

「お墨付き」

「お墨付き」もまた、「太鼓判を押す」の類義語として十分に通用するものだといえます。こちらは、「墨」の部分を理解するのがポイントです。

ここでいう「墨」とは、花押(かおう)のことだと理解しましょう。花押というのは、将軍や大名が自身の署名を図案化したものです。

つまり、「お墨付き」とはお殿様直筆の保証書ということがいえますね。では、これらの類義語を用いた例文をチェックしておきましょう。

\次のページで「「太鼓判を押す」の対義語は?」を解説!/

メジャー通算500本塁打という折り紙付きの「本物」がいよいよ明後日に来日するそうだ。

ここで屋台営業をしてもよいとのお墨付きもいただいているので、何も問題はないはずだ。

#3 「太鼓判を押す」の対義語は?

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では、「太鼓判を押す」対義語はどのようにとらえればいいのでしょうか。「太鼓判を押す」が確かだと保証するならば、その反対は言葉だけで中身がともなっていないことを表すはずです。

ここでは、そのような意味合いを持った慣用句を二つほど紹介していきます。

「大風呂敷を広げる」

「大風呂敷(おおぶろしき)を広げる」は、十分に「太鼓判を押す」の対義語たりえるものです。この慣用句には、実現不可能な計画を立てるという意味合いがあります。

つまり、大きなことを言うけれども全然中身がともなっていないというわけです。こういうのを大言壮語するともいいます。

風呂敷は何かを包まない状態だとかなりの寸法がありますよね。これが、大きな風呂敷だとなおさらだというわけです。

中身が何もないのに大きさだけはとてつもなく大きいという情景が、きっと思い浮かんでくるのではないでしょうか。

「外連味」

「外連味(けれんみ)」もまた、「太鼓判を押す」の対義語といってもいい存在です。この言葉は主に「外連味のある」または「外連味たっぷりの」などというフレーズで用いられます。

さて、肝心の「外連味」ですが、これは元々歌舞伎界の用語だという点は押さえておきましょう。この言葉が表すのは「はったり」や「ごまかし」です。

たとえば、大掛かりな宙乗りなどの演出がある場合は「外連味がたっぷり」となります。もちろん、現在では歌舞伎界以外でもよく使われているのが実情です。

目標は甲子園で優勝することですと、新チームのキャプテンは大風呂敷を広げてみせた。

その俳優は実に外連味たっぷりの演技をするので、男女を問わず人気があるのもうなずける。

#4 「太鼓判を押す」の英訳は?

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最後に「太鼓判を押す」の英語訳についても触れておきましょう。

\次のページで「「vouch for ~」」を解説!/

「vouch for ~」

「vouch for ~」は、「~について保証する」という意味合いの英語表現です。このことから、ときに「~に太鼓判を押す」と訳されることもあります。

たとえば、「vouch for the taste」ならば、「味には太鼓判を押す」といった具合です。

「太鼓判を押す」を使いこなそう

この記事では「太鼓判を押す」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句の表す意味は、確実であると保証することでしたね。

現代社会では情報であふれかえっていて、何が本当で何がそうでないのか区別がつきにくいこともしばしばです。一つひとつの真贋を自分一人で確かめるのは、事実上不可能ですからね。

そんなときに、信頼の置ける人が太鼓判を押してくれることほど、心強いことはないのではないでしょうか。みなさんも、この慣用句を用いる機会があったら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「太鼓判を押す」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「太鼓判(たいこばん)を押す」という慣用句について解説する。

端的に言えば「太鼓判を押す」の意味は「確実だと保証する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「太鼓判を押す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「太鼓判を押す」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「太鼓判を押す」の意味や使い方を見ていきましょう。

「太鼓判を押す」の意味は?

まずは国語辞典での定義から。「太鼓判を押す」を構成する「太鼓判」には、次のような意味があります。

1.太鼓のように大きい判。
2.絶対に確実だという保証。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「太鼓判」

「太鼓判」とは、本来は太鼓のように大きな判子(はんこ)を意味することばです。これが転じて、間違いのないものとして保証する意味合いで用いられるようになりました。

ただし、「太鼓判を押す」の由来には諸説あるのも事実です。もう一つの有力な説には、かつて甲斐の国を治めた戦国大名、武田信玄が関係してきます。

かつて甲斐の国は良質の金を算出することでも有名で、その金は「甲州金」と称されていました。この甲州金の外周には太鼓の革止めにも似た装飾が施されることもあったそうです。

これは、貴重な金が削られることを防ぎ、真正な「甲州金」であることを保証するものでした。いつしか、このような装飾を施すことを「太鼓判を押す」と呼ぶようになったそうです。

武田信玄が、この良質な「甲州金」の力を背景に一世を風靡したことはよく知られています。

「太鼓判を押す」の使い方・例文

「太鼓判を押す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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