生物学

生き物が光る!?「生物発光」の例と仕組みを現役講師が解説!

よぉ、桜木建二だ。今回は生物発光をテーマに学んでいこう。

”光る生物”というのはとても興味深い存在だ。君たちも、生き物が光るなんて不思議だと思わないか?そのメカニズムや理由を知るために、今も多くの科学者が研究を続けているんだ。具体的な生物種とともに、その仕組みの一端を紹介してもらおう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

生物発光とは

生物発光とは、名前の通り生物が光を放つ現象のことをさします。日の光などを反射するのではなく、自らの体内で化学反応を起こして生み出す光です。

発光する生物の存在は、はるか昔、古代ギリシアの時代にはすでに人間に知られていました。その幅広い功績から“万学の祖”とも呼ばれる偉人・アリストテレスも、「魚やキノコが光を放つことがある」ということを、文献に記録していたといいます。

image by iStockphoto

さて、自然界で光を放つ現象で身近なものといえば、でしょう。ヒトは火を焚いて明かりとし、夜間の活動も可能にしてきました。

炎の光と生物発光の光を比べた時の最大の違いは「熱」です。火が燃えるときには光と一緒に熱が出ますが、生物発光の際には生物の体が損傷してしまうような熱は生じません。これって、当たり前のようですが、結構すごいことなんです。生物発光はほとんど熱をともなわないことから、冷たい光=冷光ともよばれます。

生物発光のメカニズムをご紹介する前に、光を放つ生物=発光生物の例をみておきましょう。

発光する生物の例

ホタル

日本人にとってなじみの深い発光生物といえばホタル(蛍)でしょう。初夏の夜に舞うホタルの発する光はとても幻想的なもの。近年はホタルの生息域が少なくなってしまいましたが、昔はあちこちで見られる光景でした。

日本には40種以上、世界には数千種のホタルがいるといわれています。日本人がイメージするホタルの多くはゲンジボタル、もしくはヘイヘボタルという種です。ホタルが発光するのは、パートナーに自分自身をアピールするのに加え、敵を驚かせるなどの理由もあると考えられています。

オワンクラゲ

クラゲの一種であるオワンクラゲは、生物学を学ぶ人にぜひとも覚えておいてほしい発光生物の一つです。オワンクラゲは刺激を受けると体の一部を発光させます。

この発光の際、オワンクラゲの体の中では緑色の光を放つ、特別な物質がはたらいているんです。GFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)といいます。GFPを発見し、取り出すことに成功したのが生物学者の下村脩でした。下村はこの功績を理由として、他の研究者とともにノーベル賞を受賞しています。

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GFPはノーベル賞を受賞するほど画期的な物質だったのか?

現在の生物学や医学の研究では、GFPは欠かすことのできない物質です。GFPは励起光という光を与えると、緑色に光るという性質があります。単純なようですが、こんなに簡単に光ってくれるタンパク質ってなかなかないんです。

GFPはタンパク質の一種なので、生きている細胞内でも存在可能。GFPの遺伝子を導入するなどして、調べたいタンパク質にGFPをくっつければ、簡単にそのタンパク質がはたらく場所を可視化できます。GFPが実用化されたことで、それまでできなかった研究がすごい勢いで進んだのです。

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生物発光を人間が利用している、というわけだな。

ウミホタル

ウミホタルは体長数ミリメートルの小さな甲殻類です。敵に襲われたり、刺激を与えると青白い光を発します。一匹一匹は小さいですが、たくさんのウミホタルがいる海で一斉にウミホタルが発光すると、驚くほどの明るさになるんです。

ヤコウチュウ

image by iStockphoto

海に生息する小さな発光生物では、ヤコウチュウというプランクトンもよく知られています。ヤコウチュウは渦鞭毛虫という生物のなかま。刺激を与えると青く発光します。波打ち際や岸壁の近くで見られることも少なくありません。

発光細菌

発光細菌(発光バクテリア)は、名前の通り発光する細菌です。海に生息しているものが多く、他の生物の表面にくっつきながら暮らしているものもあります。

発光している理由やメカニズムなどにはまだ解明されていない点もありますが、たくさんの種類が知られており、発光生物の中には発光細菌を体内に共生させることで光っているものもいるんです。

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チョウチンアンコウマツカサウオといった魚は、発光細菌を共生させているというな。

ツキヨタケ

発光するのは動物だけではありません。菌類、キノコの中にも発光するものがあります。ツキヨタケはその中でも代表的な存在でしょう。

ツキヨタケは子実体(キノコの本体)のひだの部分が発光します。闇夜にぼんやり光るツキヨタケの姿はとても神秘的ですが、毒があるので食べてはいけません。

発光のメカニズム

多くの生物発光は、ルシフェリンルシフェラーゼという物質の反応で生じます。ルシフェリンは、ルシフェラーゼと呼ばれる酵素が働きかけるとと発光する物質をまとめてさす言葉です。ルシフェリンもルシフェラーゼも様々なものが見つかっていますが、ほとんどの場合、特定のルシフェリンは特定のルシフェラーゼとしか反応できません。

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酵素が特定の基質にのみ反応する、基質特異性というやつだな。

ルシフェリンとルシフェラーゼがどのような反応をして発光に至るかは、2つの物質の種類によって異なるため、一概には言えません。

今回は、最もよく研究されているホタルの発光を例にあげましょう。ホタルのもつルシフェリンはホタルルシフェリン、ルシフェラーゼはホタルルシフェラーゼといいます。

image by iStockphoto

ホタルルシフェリンにホタルルシフェラーゼがはたらきかけると、まずホタルルシフェリンはATP(アデノシン三リン酸)という物質と反応し、オキシルシフェリンという酸化物になります。

このできたばかりのオキシルシフェリンは、大きなエネルギーをもった物質(励起状態)です。安定な状態(基底状態)になるために、オキシルシフェリンはエネルギーを放出するのですが、このとき熱ではなく光を放出します。これが、ホタルが発光する仕組みです。

image by Study-Z編集部

繰り返しになりますが、生物によって発光のメカニズムは異なります。とくに、オワンクラゲの項で述べたGFPが発光する仕組みは、ルシフェリンとルシフェラーゼによる発光とは別物です。

前述の通り、GFPは光を当てることでエネルギーの高い状態になり、発光します。オワンクラゲの体内では、GFPを発光させるのにイクリオンという別の蛍光タンパク質の放つ光を利用しているのです。

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Totti投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

では、イクリオンはどうやって光らせるのでしょう?イクリオンは、細胞内のカルシウムイオンの濃度変化が刺激となり、光を放つことがわかっています。『カルシウムイオン濃度の変化→イクリオンの発光→GFPの発光』という一連の流れのなかに、ルシフェラーゼのような酵素や、ATPのような物質は関係してきません。ホタルや発光バクテリアなどの光る仕組みとは別物なのです。

他にもさまざまな生物で、その発光メカニズムが研究されています。今まで知られている仕組み以外の、思わぬ発光システムが見つかることがあるかもしれません。今後の研究の進展が期待されます。

不思議だらけの生物発光

今回は、発光生物の例や発光のメカニズムを簡単にご紹介しました。

光る生物は見た目に美しいだけでなく、人の生活に利用することも検討されています。GFPのような研究への活用のほか、発光する生物を街灯の代わりに使ったり、発光の仕組みを組み込んでシグナルとして利用したり、新しい色の発光を作り出したり…といったアイデアが出されているんです。

皆さんなら生物発光をどのように利用してみたいですか?

イラスト使用元:いらすとや

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